【令和7年9月11日】5階の窓から(ねりま区報9月11日号掲載)
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更新日:2025年9月11日
練馬区長 前川 燿男
日本が敗北したあの8月15日から80年。日本人だけで三百万人、アジア全域では二千万人もの犠牲者を出した大戦争に、一体何故日本が踏み切ったのか。貧乏国日本と世界最強の米国との国力差は絶対的でした。粗鋼生産力は日本五百万トン、米国一億トン、自動車船舶は更に差が大きく、石油は天文学的開きがありました。日本が勝てる訳がありません。
当時、日本には「総力戦研究所」という組織がありました。昭和15年10月に設立された総理大臣直属の機関で、官吏、軍人、民間企業のエリート35名が集められました。彼等は日米戦の机上演習を行って、16年8月に首相官邸で、近衛首相、東條陸軍大臣の前で報告しました。
結論は「日本必敗」でした。仮に開戦したら、緒戦は勝利が見込まれるが長期戦は必至であり、その負担に日本の国力は耐えられない。末期にはソ連も参戦し敗北は不可避となると。これは、原子爆弾の投下以外は、実際の戦局と一致していました。流石です。当時も日本には優れた人材集団が確かに存在したのです。
しかし、この実務感覚に根差した分析は議論の対象にすらならず、机上演習が危惧した破滅へと日本は突き進みました。明治以来の満州、中国の利権、軍需景気の拡大、戦死した多数の兵士への痛惜。「時代の空気」は圧倒的であり、それを醸成し利用したのが軍部と政府でした。
リーダーの役割とは何でしょうか。私は生涯を地方自治に生きて、微力ながら、東京富裕論やふるさと納税論と闘ってきました。今、日本は、膨大な赤字国債で身動きが取れなくなっています。時代の空気は空恐ろしい。これに迎合して目先の人気取りに走ってはならない。合理的な政策を提示して住民の判断を仰ぐ。これこそ区長の職責と改めて自戒しています。




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