(表紙) みどりの風吹くまちビジョン〜新しい成熟都市・練馬をめざして 平成27(2015)年3月練馬区 みどりの風吹くまちビジョンの策定にあたって 我がまち練馬は豊かで美しい都市です。大都市東京の都心近くにあって、東京の魅力を十分に享受しながら、農地や樹林・公園など多彩なみどりに包まれた暮らしを楽しむことが出来ます。練馬で暮らした人が「住んで好かった」と考えるのも頷けます。 私も練馬に暮らして31年、魅力に惹かれて去りがたく、気が付くと終の棲家に選んでいました。区長として、愛する練馬のまちづくりに携われることは、この上ない幸せだと実感しています。だからこそ、頑張らねばとも思います。 このまちには未だ大きな可能性が眠っています。みどりを更に増やし、教育・福祉・医療サービスを充実し、道路や公共交通など都市インフラを整備して、子どもからお年寄りまで心豊かに暮らせるまちにしたい。未来の世代への責務を果たしたい。「みどりの風吹くまちビジョン」は、そういった思いを籠めて作りました。 作成の過程では、私自身が先頭に立って、多くの区民や区議会の皆さまと率直に意見を交換しました。皆さまとともにビジョンの実現をめざし、新しい練馬の自治の地平を拓きたいと念願しています。 平成27年3月 練馬区長 前川燿男 目 次 はじめに 構想編 1新しい成熟社会に向けて 2練馬区の主な特性 3新しい成熟都市をめざす施策の方向性 近未来ストーリー『新しい成熟都市・練馬』 戦略計画編 T子どもの成長と子育ての総合的な支援 計画1家庭での子育てを応援 計画2「練馬こども園」の創設 計画3すべての小学生を対象に放課後の居場所づくり 計画4子どもたち一人ひとりに質の高い教育を U安心して生活できる福祉・医療の充実 計画5高齢者地域包括ケアシステムの確立 計画6障害者の地域生活を支援 計画7病床の確保と在宅療養ネットワークの構築 計画8つながり、見守る地域づくり V安全・快適な都市の実現に向けた基盤整備 計画9鉄道、道路などインフラの整備 計画10災害に強い安全なまちづくり 計画11地域生活を支える駅周辺のまちづくり 計画12住宅都市にふさわしい自立分散型エネルギー社会へ W練馬区の魅力を楽しめるまちづくり 計画13地域特性を活かした企業支援と商店街の魅力づくり 計画14農の活きるまち練馬 計画15みどりあふれるまちづくり 計画16風を感じながら巡るみどりのまち 計画17練馬城址公園をにぎわいの拠点に X新たな区政の創造 計画18新しい成熟都市に向けた区政の創造 【参考】施策の体系と戦略計画・個別計画の関連図 白書編 1練馬を知る 1−1人口特性・土地利用 (1)人口特性 (2)土地利用 1−2子育て・教育 (3)子育て環境 (4)教育 1−3福祉・医療 (5)高齢者の生活と福祉 (6)障害者の生活と福祉 (7)地域医療体制 (8)地域のつながり 1−4まちづくり (9)都市特性・交通環境 (10)地域防災 (11)区内のエネルギー消費 1−5まちの魅力 (12)産業特性 (13)商店街の状況 (14)練馬の農業 (15)豊かなみどり (16)学びや文化活動、スポーツ等 1−6行政運営 (17)行政改革の状況 2区民意識意向調査における施策への要望 はじめに 1策定の目的 今後の区政運営の方向性を明らかにし、現状を踏まえつつ将来を見据えた戦略を提示するため、「みどりの風吹くまちビジョン〜新しい成熟都市・練馬をめざして〜」(以下「ビジョン」という。)を策定します。 2ビジョンの構成 (1)構想 区政を取り巻く社会状況や練馬区の特性を踏まえ、練馬区の将来を見据えた施策の方向性を明らかにします。 10年以上の長期的見通しをもつものとし、まちづくりなど長期的な展望をもって取り組むべき施策については、特に年次を限定しないこととします。 (2)戦略計画 本ビジョンで示す施策を進めるうえで、根幹となるリーディングプロジェクトを戦略計画と位置づけます。区民のリアルな行政需要にこたえ、制度や組織の壁を超えた戦略的な取組を計画化します。計画期間は平成27年度〜31年度の5か年とします。 (3)白書 練馬区の人口動態と将来人口の推計、土地利用、産業構造、生活実態、区民サービスの状況等の各種データを基に、練馬区の特性や課題等を分析し、構想や戦略計画の立案の背景を示します。 3位置づけ (1)区の基本計画である現行の長期計画(平成22年度〜26年度)は、平成27年3月までを計画期間としています。ビジョンは、平成27年度以降の基本計画としての位置づけをもつものとします。 (2)平成26年11月に制定された「まち・ひと・しごと創生法」(以下「創生法」という。)において、区市町村は、地方版総合戦略を策定するよう求められています。ビジョンおよびビジョンに基づくアクションプランを合わせ、練馬区の地方版総合戦略としての位置づけをもつものとして策定します。 (3)戦略計画の中で、今後の行政改革についての基本的考え方を示します。具体的な取組については、平成27年度に明確化します。 4アクションプランの策定 ビジョン実現に向けた工程を示すため、平成27年度から29年度までの3年間の具体的取組を示すアクションプラン(実施計画)を策定します。アクションプランは、戦略計画をはじめ、ビジョンに基づく主要な事業の3か年の取組を明らかにします。平成27年2月に素案を公表しました。区民意見反映制度により、平成27年3月まで区民意見を聴取します。その結果と議会の意見を踏まえ平成27年6月を目途に策定します。 アクションプランの進捗状況は、毎年度、点検・検証して結果を公表し、改善しながら取組を進めます。ビジョンの戦略計画の取組期間(平成27年度〜平成31年度)の中間には、進捗状況等を踏まえてアクションプランの見直しを行い、後半のアクションプランを策定します。 5個別計画との関係 分野ごとの個別計画は、ビジョンとの整合を図って策定します。既存の計画も、ビジョンを踏まえて順次見直します。ビジョンの戦略計画に位置づけられる取組は、分野ごとの個別計画にも織り込みます。 構想編 構想 区政を取り巻く社会状況や練馬区の特性を踏まえ、練馬区の将来を見据えた施策の方向性を明らかにします。 10年以上の長期的見通しをもつものとし、まちづくりなど長期的な展望をもって取り組むべき施策については、特に年次を限定しないこととします。 1新しい成熟社会に向けて 2練馬区の主な特性 3新しい成熟都市をめざす施策の方向性 近未来ストーリー『新しい成熟都市・練馬』 1新しい成熟社会に向けて (1)新しい成熟社会とは このビジョンでは、これからの社会を、これまでとは異なる「新しい成熟社会」と位置づけています。 我が国は、高度経済成長をへて安定成長期を迎え、生活、経済、都市インフラ、行政サービスなどが一定の水準に達し、全体としては豊かな社会になりました。この頃から“量から質へ”の考え方が広がり、成熟社会への兆しが芽生えました。こののち、バブル経済破たん後の長い低成長期が現在にまで至り、成熟社会という認識が共有されるようになってきました。 新しい成熟社会において足元から起こっている事象は、つぎのとおりです。 @人口の減少 平成22(2010)年の約1億2,806万人をピークに、日本の人口は減少に転じ、総人口は平成72(2060)年には8,674万人になると推計されています(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」の中位推計。下図参照)。 日本創成会議の“日本の自治体の半数近くが消滅する”という予測は、国民を震撼させました。我が国は、人口が早いスピードで縮みゆく現実に直面しています。 A「超」超高齢社会へ 日本は平成19(2007)年に高齢者比率が21.5%を超えて超高齢社会に入りました。平成72(2060)年には39.9%となることが予測されており(国立社会保障・人口問題研究所の中位推計)、高齢者が人口の半数近くになる「超」超高齢社会を迎えます。介護、保健、医療などの課題にどのように対応するか、厳しい事態が待ち受けています。 Bグローバル化の進展 従来の国家や地域の垣根を越えて、地球規模で資本や人が移動するグローバル化が拡大しています。地球全体が一つの市場となり、国内だけで経済や雇用、環境など様々な課題へ対応することはできなくなっています。反面、だからこそ、それぞれの国や地域が個性を発揮し、自らの道を歩むことが求められています。 CICT(情報通信技術)の発達 ICTの急速な発達は、「情報」や「コミュニケーション」の概念を大転換しました。今や、特別な設備や技術を持たなくても、情報を瞬時に全世界の人々とやりとりすることが可能となっています。反面、サイバー犯罪、情報漏えいやスマホ依存などの弊害も指摘されています。進化し続けるICTは、大きな影響力をもって、今後の社会を質的に変化させていきます。 D公共活動の主体の多様化と拡大 従来、公共分野における活動の担い手は、「行政」「専門家」が主でした。平成10(1998)年、NPO法ができ、福祉分野に係るNPO法人などが多数誕生しました。介護や保育の分野などでは、株式会社の参入も進んでいます。阪神・淡路大震災を契機にボランティア活動はますます盛んになっています。ユニークな祭りの創出や、地域活性化に向けて即興的に有志が集まる試みも広がっています。 E東日本大震災がもたらした影響 大震災は、未曽有の被害をもたらすと同時に、道路、上下水道、港湾などの基礎インフラ、国・自治体の防災対策、情報伝達の仕組み、住民と行政の関係、地域コミュニティなどについて、根底から問い直しを迫る契機となりました。 (2)未知の時代を拓く 新しい成熟社会は、従来のような成長の延長線上にある“豊かさ”とは、異なる局面をもちます。私たちは、モデルなき未知の時代に直面しているのです。 前例踏襲や横並び意識は意味をもたなくなります。地域特性を最大限に活かす知恵と工夫をこらし、都市基盤も、施設も、サービスも、リアルな現実に基づいて新しく構想し、生み出していく「創造」の時代に立ち向かわなければなりません。これを担う区の職員一人ひとりに、清新な志が求められます。 新しい成熟社会は未知の地平(フロンティア)です。練馬区は、このビジョンを羅針盤として、新時代の自治体をめざして漕ぎ出していきます。 2 練馬区の主な特性 (1)人口の動向 @人口増が続いているが、近いうちに減少局面を迎える可能性も 練馬区は、これまでほぼ一貫して人口が増え続けてきました。 平成27年1月1日現在の総人口は714,656人です。特別区では2番目、全国でも有数の大都市です。 ビジョン策定にあたり、過去5年の推移に基づく将来人口推計を行ったところ、平成33(2021)年をピークに、人口が減少していくと予測されています。この推計は、リーマンショック後の不況や東日本大震災の影響により近年人口の伸びが鈍化していたことが影響していると考えられますが、いずれにしても近い将来、練馬区も人口減少局面を迎える可能性を示しています。 A高齢化が着実に進む 高齢者比率は確実に高まっています。平成27年1月1日現在では21.3%でしたが、平成57(2045)年には28.3%に達すると見込まれます。 単独世帯が著しく増加し、高齢者の単独世帯が増加しています。 生産年齢人口(15歳〜64歳以下)は平成27(2015)年の473,733人から、平成57(2045)年には415,179人と約12%減少すると見込まれています。 B年少人口、子育て世帯の比率が高い 年少人口の比率が12.4%と、都や区部平均より高くなっています。18歳未満の子どものいる世帯の割合も高く、ファミリー層が多くなっています。 保育所の増設など保育サービスの充実を進めていますが、保育所・学童クラブとも待機児童が発生しています。 C長期居住者が増加している 区民意識意向調査では、区内に21年以上在住している住民の割合が、平成15年の49.8%から平成26年には52.7%に増加しました。また、「練馬区に住み続けたい」という定住意向は、平成15年の67.4%から平成26年には73.4%と、6ポイント高くなっています。 D夜間人口が多い 平成22年の国勢調査では、昼夜間人口比率は82.1%と、23区で一番低くなっています。 (2)地勢・土地利用 @都心に近い立地、なだらかな地形 練馬区は、東京23区の西北部、都心に比較的近い位置にあります。面積は48.08平方キロメートルで、23区では5番目の広さです。地形は、海抜約30メートルから50メートル前後の武蔵野台地といわれる洪積台地により形成され、西側が高く東側に行くにつれて低くなっていますが、ほとんど高低差がなく、なだらかです。 地質は、上総層群と呼ばれる比較的固い第三世紀層の上に武蔵野砂礫層が7から8メートルの厚さで重なり、その上を関東ローム層が7から10メートルの厚さで覆っていて、一般的に支持力の強い地盤上にあるといわれています。 A宅地が6割 土地利用では、宅地が6割を超えています。 Bみどり豊かで農地が多いが、減少の懸念 緑被率は25.4パーセントで、23区で最も高くなっています。民間所有等の樹林地を区民に開放している憩いの森・街かどの森も約10.7ヘクタールと、23区で最も多い面積となっています。 緑被地の中では宅地等のみどりや農地など民有地のみどりが約8割を占めており、今後の減少が懸念されます。 農地面積は約230ヘクタールと23区で最大となっていますが、相続時の税負担や後継者不足などにより平成4年の約488ヘクタールから半減しています。 (3)交通基盤 @鉄道の整備は進んでいるが、空白地域も存在 区内には、西武池袋線・豊島線・新宿線、東武東上線、東京メトロ有楽町線・副都心線、西武有楽町線、都営地下鉄大江戸線が運行しており、全体として交通アクセスは良くなっています。しかし、区北西部には、鉄道駅から1キロメートル以上離れている鉄道空白地域が存在しています。 A都市計画道路の整備率は低く、特に西部地域が低い 区内の都市計画道路の整備率は約49.9パーセントで、23区平均の約63.8パーセントを下回っています。特に西部地域の整備率は約29.0パーセントと低く、南北方向の道路整備の遅れが目立っています。 B日常生活の移動の負担になっている踏切 区内には、踏切が33か所(練馬区近接も含む)あります。その中には遮断時間が長い踏切もあり、日常生活の移動の負担になっています。 (4)防災・産業・文化 @約410の区民防災組織が活動 区内には、区民が自主的に設立・運営している避難拠点運営連絡会や防災会など約410組織の区民防災組織があります。日頃から初期消火や救出・救護、避難誘導、避難所運営などの訓練に取り組み、災害に備えています。 A区内事業所のほとんどが中小企業 区内には、約2万の事業所があり、その約9割が、従業員20人未満の小規模事業所です。 平成24年の経済センサスでは、卸売・小売業が最も多く、次いで建設業、飲食サービス業、不動産業の順となっています。従業者数では、卸売・小売業、医療・福祉業が多いのに対し、全国や東京都と比べ製造業の比率は低くなっています。 アニメ関連の事業所が集積しており、全国で最も多くの企業が立地しています。 商店街は、商店会・会員数とも減少傾向にあります。 B病院・病床が少ない 区内の一般・療養病床のある病院は、平成20年の19病院から2病院減少し、17病院となっており、区民が入院する際は区外が約7割近くになっています。 一般・療養病床数は23区で最も少なく、人口10万人あたり281床(平成26年9月現在)で、23区平均の約3分の1となっています。 C江古田駅周辺に3大学が立地 江古田駅周辺には、日本大学藝術学部、武蔵大学、武蔵野音楽大学の3大学が立地し、学生のまちを形成しています。 D区立・民間の文化芸術関連施設 区立の文化施設として、練馬文化センター、大泉学園ホール、生涯学習センター、美術館、石神井公園ふるさと文化館、区立図書館12館等があり、区民に活動や鑑賞の場として利用されています。また、ちひろ美術館・東京や光が丘美術館、唐澤博物館など、民間の文化施設もあります。 (5)住宅都市としてさらに発展していく可能性 人口の動向や土地利用、交通、産業構造など、全体として、みどり豊かな環境と都心に近い利便性が両立する良好な住宅都市としての特徴が表れています。 一方で、今後解決しなければならない課題も抱えています。 区の特性を活かす施策を進めることで、人口減少社会にあっても活力のあるまちとして、さらに発展していく可能性を有しています。 3新しい成熟都市をめざす施策の方向性 新しい成熟社会に向けての大きな潮流を踏まえ、10年程度先を見据えて進める主要な施策の方向性を示します。 (1)子どもの成長と子育ての総合的な支援 地域社会を支える子育て世代が住みやすいまちづくりを進めます。仕事と生活のバランスがとれ、安心して子どもを産み育てられる環境を整え、子どもたちが健やかに成長できるよう教育を充実します。 @多様なライフスタイルや働き方、子育ての希望に対応できるよう、すべての子どもたちを視野に入れた総合的な子育て支援策を充実します。これまで別々の制度になっていた保育や教育にかかる事業を再構築し、個々のニーズにあったきめ細かいサービスを提供できるようにします。 A夢や目標をもち、困難を乗り越える力を備えた子どもを育むため、家庭・学校・地域と行政が力を合わせて練馬の教育を充実します。 (2)安心して生活できる福祉・医療の充実 だれもが住み慣れた地域で安心して生活できるよう、地域社会での見守りと支え合いの体制や、一人ひとりにあった支援を受けられる仕組みを構築します。 @団塊の世代が全て75歳以上となる平成37年に向け、さらにはその後も続く高齢化を見据え、医療、介護、予防、住まい、生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムを確立します。 A障害者の個々の状況に合わせて、就労や住まいなど地域生活を支援するサービスを充実します。 B区内の病床を増やし、急性期から在宅まで切れ目のない医療を受けられる医療環境を整えます。 (3)安全・快適な都市の実現に向けた基盤整備 鉄道や道路の整備、木造住宅密集地域の改善など、練馬区の都市基盤の課題を克服し、さらにみどり豊かで、だれもが安全・快適に暮らせる住宅都市をめざして、ユニバーサルデザインにも配慮したまちづくりを着実に進めます。 @快適な都市環境を創出するものとして、鉄道や道路の交通ネットワークを整備します。 A建築物の耐震化や不燃化、木造住宅密集地域の改善、水害対策の強化を進めます。あわせて、区民防災組織を中心に区民による防災への取組を支援し、安全で災害に強いまちを形成します。 B地域の特性にあわせて、区民生活の拠点となる区内各駅周辺の交通結節機能、生活利便機能、都市景観機能を高めます。 C地域特性にふさわしい自立分散型のエネルギー社会をめざします。 (4)練馬区の魅力を楽しめるまちづくり 練馬区は、公園や農地などまちのみどりの豊かさと都市生活の利便性が両立しているところに特長があります。それをさらに活かして、多彩な魅力を楽しめるまちづくりを進めます。 @地域特性を活かした中小企業の活性化と魅力ある商店街づくりを推進します。 A練馬区の魅力である都市農業の振興と、多面的機能をもつ都市農地の保全に取り組みます。 B樹林地など民有のみどりの保全、魅力ある公園の整備により、さらにみどり豊かな練馬を実現します。 C風を感じながら、自然と文化が織りなす練馬区の多彩な魅力を「まち歩き」「ポタリング」(自転車で散策すること。「ぶらぶらする」という意味の英語から来ています。)を通して体感できる仕組みづくりに取り組みます。 (5)ビジョンの実現のために @区民・区議会とともに区政を拓く 一人ひとりの個性や価値観を認めあい、尊重する地域社会を基本に、区民・区議会とともに練馬の自治を発展させ、新しい成熟都市の実現をめざして未来を切り拓いていきます。区政や地域の情報を積極的にわかりやすく発信して区政への関心を高め、区政の窓を大きく開き、区民参加を進めます。区議会と連携しながら、広範な区民の力を活かし、事業者をはじめ区内の多様な活動主体と協働します。 A新たな区政の創造 ビジョンの実現に向けて、既成概念にとらわれず、制度や組織の壁を超えて不断に改革に取り組み、職員の力を結集して新たな区政を創造します。 近未来ストーリー『新しい成熟都市・練馬』 1 三世代同居・高子一家の休日 ■退職後の夫は“農”に目覚め “あッ”と思って高子は目を覚ました。今日は日曜日、友人富士子と約束があるのだ。区内の農産物や農産物を使ったお菓子などが販売される“ねりマルシェ”が行われる。富士子は、区内のブルーベリーなどを使ったお菓子を「ねりマルシェ」に出すというので、高子も手伝いに行くのだ。 高子が朝食をつくっていると、2階に同居している娘夫婦の小学生の娘、アサヒが下に降りてきた。高子は孫娘用に絹さや入りオムレツの量を二人分に増やした。 絹さやは高子の夫が庭の家庭菜園でつくったもので、農薬を使わず、味も濃い。 練馬区は23区のなかで農地が一番多い。以前は相続などで農地が減少していたが、都市農地の役割が見直されて、農地を保全できる制度が整っている。夫は退職後「これからは“農”の時代だ」と言い出して、「練馬区農の学校」で勉強して区内の農家を手伝っている。勉強した内容を実践するために、せっせと家でも野菜をつくってくれる。 ■若い夫婦はポタリングで地元発見 「ママたちは、今日はどうするの?」 「パパとママは、ポタリングに行くって」 練馬区は平たんな地形を活かして、自転車による散策コースを設定し、シェアサイクル・ステーションも増やしたから、娘夫婦は最近ポタリング(自転車によるまち巡り)にはまって、暇があると区内探索に出かけるようになった。区の西側に南北の道路もできたし、西武新宿線は鉄道が立体化され、上石神井駅付近の踏切もなくなった。駅前も見違えるようだ。そういえば、最近できた道路は電柱がなくて歩道が広く、街路樹も素敵な雰囲気で、とても歩きやすい。歩いてまち巡りをするのも楽しみになってきた。 ■商店街が元気になってきた 「アサヒちゃんは一緒に行かないの?」 「今日はお隣のミナミお姉ちゃんが、従弟の大ちゃんと一緒に、商店街の謎解きゲームに連れて行ってくれるから、別行動」 「謎解きゲームって、前にも行ったんじゃない?」高子は聞いた。商店街の人たちが、商店街の歴史や店で売っている商品を題材にして、謎を解きながら、まちを歩くゲームをつくったことは、以前から知っていた。 「今日のは新作だよ。英語版も用意してあるんだって。中学生のお兄さんやお姉さんたちも、ボランティアで参加しているよ。仮装したキャラクターも街角のあちこちに登場するから、よそからも沢山お客さんが来るんだよ。早く行かないと…」 商店街も楽しくなってきた。先日、近くの商店主が「おいしい紅茶のいれ方」を教える「まちゼミ」に高子も顔を出したことがある。「まちゼミ」の内容も、魚のさばき方とか、フランス語メニューによるフレンチ料理の解説とか、生活系スマホアプリの実演紹介とか、種類がどんどん増えてくるから、しばしば商店街に足が向くようになり、買い物も楽しんでいる。 ■ライフスタイルにあわせた子育て 「大ちゃん、この前まで赤ちゃんだと思ってたけど」 「大ちゃんは、練馬こども園の年長さんだよ」 自分たちが子育てしていたころに比べたら、子育て支援が出産前から就学時期まで切れ目なく充実して、今のパパママ世代は本当に恵まれているなあと、高子は思う。娘を産んだ頃は保育園の待機児童が多く、幼稚園と保育園は別の制度だった。高子と夫は共働きで、娘を保育園に入れられず苦労した。ようやく認証保育所に入れたと思ったら2歳までしか預かってもらえず、3歳になったときの預け先を探さなければならない…「3歳の壁」もあった。小学校入学以降も、学年が上がると学童クラブに入れなくなり、娘の放課後が心配だったものだ。 今は、保育園も幼稚園も「練馬こども園」になり、分かりやすく利用しやすい仕組みになった。待機児童もいなくなった。 家庭で子育てしたい親たちが、一時的に子どもを預ける仕組みも充実していて、仕事を続けたい親も、家庭で子育てしたい親も、希望する子育て支援の選択肢が増えて、喜ばれている。 小学生の放課後の過ごし方も充実し、各学校の「ねりっこクラブ」で、親が働いている子も働いていない子も、一緒に楽しんで放課後を過ごしている。 ■都心にも近いし、みどりも多く、練馬がいい 娘夫婦は結婚当初は隣県のアパートにいたのだが、“練馬は都心に行くのも便利で、地方に行くにも関越の入り口がある。みどりも多いし、やっぱり練馬に住みたい”と戻ってきた。 戻った当初は、実家近くの賃貸マンションに住んでいたが、数年前に一緒に資金を出して家を改築して二世代同居することになった。 改築の際には、できる限りスマートハウスに近づけた。家電など外出先から操作できるし、家事ロボットも使っている。屋根の太陽光パネルで発電した電気は、車庫の電気自動車に蓄電している。 もっとも電気自動車はまもなく、水素を活用した燃料電池自動車に買い替える予定だ。練馬区にも水素ステーションが増えてきたからだ。 2 富士子一家の高齢二世代暮らし ■住宅もまちも環境負荷が少なく、安全がいい 富士子と夫は、子どもたちが独立して退職した後、富士子の父親を引き取って介護するために練馬区のマンションに移り住んだ。住宅もまちも環境負荷が少ない方がいい、広々とした自然が身近にあるといいなぁと考えていたところ、みどり豊かな練馬区にコジェネレーション(熱電併給システム)を取り入れたマンションができると聞いて、このマンションを選んだ。大江戸線が延伸されて駅が近いこと、広い道路が整備され道路沿いの建物は耐震化されているなど、まちの利便性と安全性もポイントになった。転居後、第2の人生を踏み出そうと女性向け創業セミナーに参加し、そこで知りあった仲間が始めた、練馬産の農産物を使うお菓子が人気の店を手伝っている。 ■在宅療養・介護を支えるネットワーク 富士子は今、持病がある90歳の父親を在宅介護している。時に父親を病院に入院させたり、退院後に地域の医師と相談しながら、在宅で療養できるようにしたりと忙しい。今は区内の病床数も増え、病院と地域医院が連携して診てもらえる。介護の事業所、訪問看護事業所など、父のための医療・介護連携チームができていて、安心して在宅介護ができるようになった。 ■障害がある人も安心して暮らせる 富士子は、現役のころ、障害がある人の就労支援事業所で働いていた。夫とは、夫の会社が職場体験を受け入れてくれたときに知り合ったのだ。引っ越して来てから、練馬区での就労支援の状況を聞いてみたら、職場体験を受け入れてもらえる事業所が増え、そのあと雇用につながるケースも徐々に増加しているそうだ。重度の人のグループホームもできて、地域で障害がある人が暮らし続ける環境が少しずつ整ってきている。 ■高齢者の交流と健康づくりの場が身近に 富士子の夫がマンションの管理組合の打ち合わせから帰ってきた。 「お帰りなさい。今日と明日は私、明後日“ねりマルシェ”に出すお菓子作りがあるからお店に出かけるわ。」 「うん、今日俺は友達と“街かどケアカフェ“でWロコモ体操“。明後日の“ねりマルシェ”には俺も、お義父さんと一緒に寄ってみるよ」  富士子も夫も、近所にある高齢者の交流と相談の場“街かどケアカフェ“にときどき立ち寄り、健康相談や体操をしたり、近所の住民とのおしゃべりを楽しんだりしている。ここでできた新しい友人と一緒に、ボランティア活動も始めた。 ■災害時の対策と日常の見守り 富士子の夫は、いざというときに義父と一緒に避難するには、マンションの人たちの助けが必要だと考え、マンションの防災グループに参加することにした。  防災グループではこんな話し合いをしている。 「建物は耐震化していて安全でも、部屋の中でけがをしたり、ショックで動けない高齢者も出るかもしれない。どんな人が住んでいるのかわからなかったら、助けようにも助けられない。」 防災グループのメンバーは、練馬区の防災カレッジの講習を受け、マンション防災に先進的に取り組んでいる管理組合の事例や、地域の町会の防災会の取組の情報も入手した。今、マンション独自の安否確認の仕組みをつくっている。 「災害時のことだけ考えるのではなく、日頃から、声を掛け合える関係づくりをしよう」 この地域では、町会、商店会、PTA、民生児童委員、老人クラブとか、地域のさまざまな団体、それに宅配業者さんみたいにお家を訪ねる事業者も、連携して、高齢者など援護が必要な人の日常を見守るネットワークをつくっている。 マンションの管理組合も、見守りのネットワークに参加することになった。 3 大学生イズミたちの挑戦 ■区内3大学の合同学園祭 イズミは北関東の育ちで、練馬区にある大学の芸術学部に入学した。区内3大学が一緒になって学園祭をやる「江古田カレッジトライアングル」に参加して、驚いた。練馬区が意外に面白いまちだということだ。 きっかけは、練馬育ちの友人ミナミに、学園祭で創作芝居をやらないかと誘われたことだ。「シナリオ書いてよ。作家志望なんでしょ」 仲間に、ミナミと同じく練馬で育ち経済学部で信金就職志望の光、芸術学部で漫画家志望の豊、その友達で音大バイオリン専攻のサクラと、3大学の物好きが集まった。練馬育ちが2人、それ以外が3人という構成だ。 ■練馬って、なかなか、いけてるじゃん 題材は光の提案で、まちおこしにからんだコメディにした。 「20世紀は世界に打って出ることが主流だったけど、21世紀は、『地元愛』だ。大学が練馬にあるんだから、地元を知れば、きっと面白いものができる」。 そこで、みんなでポタリングで区内を巡ってみて、多彩なまちの魅力に驚いた。商店街の個性的なお店、街全体がみどりでつながる住宅地、農地や樹林地のある風景、東京の新たな賑わいスポットとなった公園…。地元愛にアツい農業者や商店主の人たちの話も、面白い。 そうして創った芝居のタイトルは、「練馬って、なかなか、いけてるじゃん」。農業者や商店主たち、また行政職員が、それぞれの専門性を発揮して、まちおこしに取り組む活劇コメディだ。大根や馬や照姫やねり丸が登場して、笑わせて、泣かせて、予想以上に好評だった。 上演後、練馬の活性化に取り組む異業種交流会の会長が訪ねてきた。 「大学生もまちの異業種ってことで、練馬活性化のアイデア出しに参加してくれないか?」ということだった。イズミたちは、待ってましたとOKした。 ■地域デビューが始まる イズミたちは練馬区という舞台を得て、そこに暮らす区民と知り合いになった。もしかして、自分たちが編み出したアイデアが、まちの役に立てるかもしれない。 人々の出会いの場所がいろいろあるまち、大学生にそういう場を提供してくれるまちって、なかなか素敵だ。 「練馬区で地域デビューするなんて、これもご縁かもね」 戦略計画編 戦略計画 本ビジョンで示す施策を進めるうえで、根幹となるリーディングプロジェクトを戦略計画と位置づけます。区民のリアルな行政需要にこたえ、制度や組織の壁を超えた戦略的な取組を計画化します。計画期間は平成27年度〜31年度の5か年とします。 各戦略計画では、平成31年度末に向けてめざす「5年後の目標」と、目標を実現するための「5か年の取組」を明らかにしています。 戦略計画一覧 T子どもの成長と子育ての総合的な支援 計画1家庭での子育てを応援 計画2「練馬こども園」の創設 計画3すべての小学生を対象に放課後の居場所づくり 計画4子どもたち一人ひとりに質の高い教育を U安心して生活できる福祉・医療の充実 計画5高齢者地域包括ケアシステムの確立 計画6障害者の地域生活を支援 計画7病床の確保と在宅療養ネットワークの構築 計画8つながり、見守る地域づくり V安全・快適な都市の実現に向けた基盤整備 計画9鉄道、道路などインフラの整備 計画10災害に強い安全なまちづくり 計画11地域生活を支える駅周辺のまちづくり 計画12住宅都市にふさわしい自立分散型エネルギー社会へ W練馬区の魅力を楽しめるまちづくり 計画13地域特性を活かした企業支援と商店街の魅力づくり 計画14農の活きるまち練馬 計画15みどりあふれるまちづくり 計画16風を感じながら巡るみどりのまち 計画17練馬城址公園をにぎわいの拠点に X新たな区政の創造 計画18 新しい成熟都市に向けた区政の創造 T 子どもの成長と子育ての総合的な支援 計画1 家庭での子育てを応援 5年後の目標 安心して子育てができる環境の整備 1子ども家庭支援センターに「すくすくアドバイザー」を配置 2保護者のニーズに対応した妊娠期からの切れ目のない子育て支援サービスを充実 5か年の取組 1相談支援体制の整備 「育児に関してもっと情報がほしい」「子育てサービスの窓口や手続きがわからない」といったときに、何でも相談できる総合窓口を身近なところに設置するなど、妊娠期からの切れ目のない相談や情報提供を充実し、一人ひとりに合った子育てを応援します。 (1)子ども家庭支援センター(練馬駅北分室、光が丘、大泉、関)と区役所内に「すくすくアドバイザー」を配置し、子育てに関する「なんでも相談」を受け付け、必要に応じて関係機関へ橋渡しを行います。 (2)子育て情報をとりまとめた情報誌や子育て応援サイト(「ねりまエンゼルナビ」など)、子育てサポートメールなどを活用して、幅広く情報を提供します。 (3)保健相談所と連携して、働く母親・父親が利用しやすいよう土曜日や夜間の時間帯に、母子保健と子育てに関する講演・講座を子ども家庭センターで実施します。 2多様な子育て支援サービスの充実 保護者の多様なニーズに対応したサービスを提供するため、身近なところで、親子が気軽に交流できる場や、一時的に子どもを預けられるサービスを拡充します。 (1)親子で交流できる場の拡充 @光が丘子ども家庭支援センターに分室を新たに開設し、0〜3歳の乳幼児と保護者のための遊びと交流の場「子育てのひろば」を通年で実施します。 A子ども家庭支援センターの「子育てのひろば」の開始時間を早め、午前9時(従前は10時)からとします。 B民設子育てのひろばなど、地域に根ざした子育て支援の充実を図ります。 C公園などで、0歳〜3歳の子どもと親同士が楽しく過ごす外遊び事業「おひさまぴよぴよ」を区内4か所で開始します。 (2)多様な一時預かりの充実 @子ども家庭支援センターでの「乳幼児一時預かり事業」では、実施日の拡大や定員増を図ることにより、受入人数を年間延約2万5千人から3万5千人へと1万人増員します。 A区民ボランティアである「援助会員」が子どもの一時預かりを行う「ファミリーサポート事業」では、これまで預かる場所は援助会員、保護者どちらかの自宅でしたが、新たに、独立した預かり場所として「ファミサポホーム」を区内4か所に開設し、より利用しやすくします。 @育児不安や養育困難、保護者の孤立から起因する子育て相談へのニーズは高まる一方です。特に、母親が抱える様々な問題に対しては、妊娠期間中や出産直後の早い段階から情報提供の機会を増やすなど、支援体制をより充実させていくことが重要です。地域ごとに様々な機関の関係者が連携し、情報を共有し合いながら、保護者一人ひとりに合わせた子育て支援をコーディネートすることが求められています。 A「練馬区子ども・子育て支援事業計画等の策定に係るニーズ調査報告書」によると、短時間の乳幼児一時預かりを希望する家庭は5割を超えており、利用したい理由としては、買い物や習い事、リフレッシュなどの目的が8割近くと、最も高くなっています。また、「子育てのひろば」に関する利用者アンケートによると、週1回以上利用している家庭は5割近い割合となっており、「子育てのひろばがあって、精神的に救われている。」といった感想のほか、開設時間の延長や開設日の増設を望む声も数多く寄せられています。こうしたニーズに応えるため、子ども相互または保護者相互が身近な所で交流したり親子で遊び学べる場といった、安心して子育てできる環境を充実していく必要があります。 計画2 「練馬こども園」の創設 5年後の目標 「練馬こども園」の創設により、多様なニーズに応じて教育・保育サービスを選択できる社会の実現 5か年の取組 「練馬こども園」の創設 区では、これまで以上に教育と保育を充実させ、子どもの教育や保育について保護者の選択の幅が広がるよう、新たな幼保一元化施設「練馬こども園」を創設します。 まず、3歳からは預かり保育のある幼稚園に通わせたいという保護者のニーズが高いことから、私立幼稚園と協力しながら、この5か年で、つぎの3点の取組を行う幼稚園を「練馬こども園」として認定し、その数を増やすことで保護者の多様なニーズに応えていきます。 将来的には保育所についても「練馬こども園」として認定し、練馬区ならではの幼保一元化をめざします。 待機児童の解消に向けて、認可保育所や地域型保育事業などの拡充に引き続き取り組みます。 (1)私立幼稚園における長時間預かり保育の拡大 現在、長時間(11時間)の預かり保育を実施している私立幼稚園は、全40園のうち、認定こども園を含め9園にとどまっています。 そこで、預かり保育の仕組みを、通年で11時間保育を実施する「強化型」、利用者の実態に合わせて保育実施日を減らせる「標準型」の二種類設定し、幼稚園の負担を軽減することで、預かり保育に取り組む私立幼稚園を大きく増やします。 (2)私立幼稚園と認証保育所等との提携 主に2歳児までを対象とする認証保育所や小規模保育事業者などの利用者からは、3歳からの預け先確保が問題となる、いわゆる「3歳の壁」に対する不安の声があがっています。 そこで、認証保育所などと私立幼稚園の間で、卒園児受け入れに関する提携を行い、小学校入学まで切れ目なく教育・保育が受けられる仕組みを整備します。 (3)幼稚園と保育所における教育・保育の質のさらなる向上 幼稚園と保育所の間で、職員交流や合同研修などを積極的に実施し、それぞれの施設が有する幼児教育や乳幼児保育・障害児保育などのノウハウを共有し、お互いが高め合うことで、教育と保育の一層の充実を図ります。 @未就学児の人口は概ね横ばいですが、女性の社会進出などにより、保育サービスの需要は増加・多様化する傾向にあります。区は、平成22年度から25年度までの間、認可保育所の整備や認証保育所などの整備を進めて定員を2,578人増やしましたが、平成26年4月現在の待機児童数は487人となっています。 A「練馬区子ども・子育て支援事業計画等の策定に係るニーズ調査報告書」の「学齢別 定期的な教育・保育事業の利用希望」によると、3歳の預け先希望は「預かり保育のある幼稚園」が「延長保育のある認可保育所」と同率で最も高く、4歳以上では「預かり保育のある幼稚園」が最も高い割合となっています。 B将来的には未就園児数が減少に転じることが見込まれており、施設運営者は多様化する保護者ニーズへの対応が一層求められています。   計画3 すべての小学生を対象に放課後の居場所づくり 5年後の目標 学童クラブと学校応援団ひろば事業を一体的に運営し、すべての小学生が安全かつ充実した放課後を過ごすことができる環境を整備 5か年の取組 1練馬型放課後児童対策事業「ねりっこクラブ」の実施 「学童クラブ」と「学校応援団ひろば事業」それぞれの機能や特色を維持しながら、事業運営を一体的に行う「ねりっこクラブ」を開始します。すべての小学生に放課後や長期休業中の居場所を提供します。平成31年度までに20校で開設し、将来的には全小学校での実施をめざします。 (1)学童クラブの待機児童を解消し、より安全で安心な居場所を確保します。 @希望する児童をすべて受け入れられるようにするため、学校施設を弾力的に活用し、活動スペースを確保します。 A学童クラブの児童とひろば事業の児童がともに過ごせる時間を作ります。 (2)ひろば事業のサービスを充実し、年間を通じた居場所を確保します。 @平日は5日間、長期休業(夏・冬・春休み)中も実施します。 A子どもたちが多様な体験・活動ができるよう、学校応援団による地域住民の見守りに、民間の持つ企画力を組み合わせ、より充実したプログラムを提供します。 (3)区職員のコーディネーターを配置し、学校や地域住民、事業者との調整を行い、事業全体の管理や運営の支援を行います。 2学童クラブの充実 「ねりっこクラブ」事業の実施を進めるとともに、学童クラブの待機児童解消に向けた取組を行います。 (1)児童館内学童クラブでの高学年対応 児童館等の中にある学童クラブにおいて高学年の受入を実施し、併せて、児童館の魅力を伝えていきます。 (2)夏休み居場所づくり事業の拡充 「ねりっこクラブ」実施の進捗や待機児童の状況に応じて、夏休み居場所づくり事業を引き続き実施します。実施に当たっては、実施校の拡大も視野に入れて進めます。 (3)学校外学童クラブへの移動の安全強化 低学年児童について、学校外学童クラブへ安心して通所できるよう、移動する間の安全強化に取り組みます。 3民間学童保育の支援と育成 現在区内に5施設ある民間学童保育への支援に加え、駅前開設や長時間預かりなど多様な区民ニーズに応えるとともに、「ねりっこクラブ」の担い手を育成するため、新たに参入する民間事業者を支援します。 @学童クラブ事業 学童クラブは、保護者が共働きなどのため放課後保育が必要な子どもを預かる施設で、指導員の指導のもとに遊びや生活を通じて、楽しく生き生きと放課後を過ごすところです。増加する利用需要に対し、定員を超えて受け入れているクラブもあります。平成25年度からは待機児童数が多い地域において、待機児童を対象とした夏休みの緊急受入を行っています。また、平成27年度からは児童福祉法の改正により学童クラブの対象が小学6年生まで拡大され、平成29年度には、6,259名(うち高学年1,048名)の需要が見込まれ、およそ2,000人の受入れ枠の拡大が必要となります。 A学校応援団ひろば事業 放課後の子どもたちの居場所づくりを目的として、地域住民を主体として組織する学校応援団が区内全小学校で実施している事業です。学校により実施日数に差があるほか、長期休業(夏・冬・春休み)中の実施がありません。今後、実施日数の拡大や長期休業中の実施など、放課後のみならず、年間を通じた子どもたちの居場所づくりを進めていく必要があります。 計画4 子どもたち一人ひとりに質の高い教育を 5年後の目標 児童生徒一人ひとりに応じた、きめ細かい指導や支援により、夢や目標をもち、困難を乗り越える力を備えた子どもを育成 5か年の取組 少子化が進行する中、次代を担う子どもたちが、夢や目標をもち、困難を乗り越え、自らの未来を力強く切り開きながら健やかに成長できるよう、下記の取組を進めます。 1学力の定着・向上 豊かな人間性や社会性、健康の増進と体力の向上との調和を図りながら、生きていく上で基盤となる学力が児童生徒にしっかり身に付くよう取り組みます。 育ちと学びの連続性を保てるよう、幼稚園・保育所・小学校の連携強化や小中一貫教育を推進します。 2子どもたちの伸びようとする力を引き出す教員の育成 授業力や指導力だけでなく子どもの良さを引き出す力など、あらゆる面での教員の資質・能力の向上をめざし、より実践的な研修の充実や外部講師の導入などによる教員の意識改革を進めます。 3学校の教育環境の整備 ICT(情報通信技術)環境の整備や学校図書館の機能強化を図るとともに、施設の改修や改築、学校の適正配置を計画的に進めます。 4家庭・地域の力を活かした学校運営や教育活動の推進 家庭、地域と連携した子どもたちの安全・安心を守る活動を拡充します。地域の人材を授業や部活動に活用していきます。 子どもたちが、地域行事やボランティア活動へ参加する機会を増やし、「役に立てた」という実感・達成感を持つことで自分に自信をもって成長できるようにします。 5支援が必要な子どもたちへの取組の充実 特別に支援が必要な子どもたちへの教育を充実します。不登校の児童生徒や家庭環境等によって学習が遅れがちな児童生徒に対しても、福祉と連携し、適切な支援を行います。障害のある子どもと家庭に対し、保育・教育・福祉・保健等の関係機関が連携して支援します。 6総合教育会議による教育行政のさらなる活性化 教育に関する様々な課題について、区長と教育委員会が話し合い、方針を示し、協力しながら教育行政の充実と質の高い教育の実現を図ります。 @練馬区は、小学校65校、中学校34校を擁し、児童生徒数は合わせて46,775名(平成26年5月1日現在)です。今後5年間の推計では、ほぼ横ばいで推移する見込みです。2050年までの人口推計では、年少人口は約1万5千人減少するため、小中学校の児童生徒数も長期的には減少していくことが見込まれます。 A学校教育を取り巻く環境が複雑化、多様化する中で、児童生徒の学力や体力の低下、いじめや不登校、いわゆる小1プロブレム、中1ギャップの問題、学校や教員に対する信頼のゆらぎなどへの対応とともに、新たな時代のニーズに対応できる学校教育の在り方が課題となっています。 B平成27年4月から教育委員会制度が変わります。区長が主宰する「総合教育会議」が新たに設置され、これまで以上に区長と教育委員会が協力して教育行政を充実させることが求められています。 U 安心して生活できる福祉・医療の充実 計画5 高齢者地域包括ケアシステムの確立 5年後の目標 高齢者が地域で安心して暮らし続けられるよう、医療、介護、予防、住まい、生活支援がその人に合わせて一体的に提供される地域包括ケアシステムを確立 5か年の取組 1一人ひとりに合った医療・介護等の連携を支援 (1)練馬・光が丘・石神井・大泉の各高齢者相談センター(法令上の名称は「地域包括支援センター」ですが、練馬区では「高齢者相談センター」と呼びます。)に、「医療と介護の相談窓口」を開設し、医療・介護連携推進員を配置します。推進員は、医療・介護の施設や事業所を把握し、高齢者相談センターと支所を拠点に、その人に合った「医療・介護連携チーム」の編成を支援します。 (2)急性期から在宅まで切れ目のない医療・介護を提供するため、病院や診療所、介護施設などの地域資源をいかし、医師会等との連携による在宅療養のネットワークを構築します。 2介護予防の推進 (1)介護予防と日常生活の支援を一体的に行う「介護予防・日常生活支援総合事業」を新たに実施します。 @高齢者が長く健康で自立した生活を営めるよう、ロコモ体操(筋力低下や転倒による要支援・要介護状態にならないよう、身体機能向上を目的として行う、主にバランスや筋力アップを図る運動)の実施会場を増やし、介護予防に取り組むサークルへリハビリ専門職のアドバイザーを派遣することにより、地域における介護予防活動を支援します。 A区独自の多様な訪問型や通所型の介護予防・生活支援サービスを提供します。 (2)医療・介護・健康の相談と高齢者等地域住民の交流の場となる「街かどケアカフェ」を、区内でも特に高齢化率の高い地域に、当面4か所程度設置していきます。「街かどケアカフェ」は、区立施設や訪問看護事業所等に併設し、高齢者相談センターや保健相談所などと連携して下記のサービスや事業を実施します。 @介護予防や栄養、口腔ケア、認知症などの相談に応じます。 A閉じこもりがちな高齢者のご自宅を訪問し、介護予防や健康づくりを支援します。 Bロコモ体操などの事業を行い、健康づくりを応援します。 3地域での生活を支援するサービス等を拡充 (1)要介護状態になっても、住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができるよう、複合型サービスやグループホームといった地域密着型のサービス基盤の整備を促進します。また、特別養護老人ホームなど介護保険施設等の整備を進めます。 (2)要介護度2以下で特別養護老人ホームの入所対象とならない方や、経済的に「サービス付き高齢者向け住宅」への入居が困難な方等で、住み慣れた在宅生活の継続を希望する方に、@緊急通報A生活相談B配食を組み合わせて利用できるサービスを新設します。あわせて、自宅のバリアフリー化を支援するため、自立支援住宅改修給付の対象種目拡大と改修費用限度額の引上げを行います。    (3)NPOや高齢者のボランティアなど多様な担い手が、きめ細かな生活支援サービスを提供できる支え合いの体制を整え、介護予防や自立した生活を支援します。そのため生活支援コーディネーターを配置し、生活支援サービス充実のための協議体を設置します。 @区の高齢者人口は現在15万人に達し、高齢化率は21%を超え超高齢社会を迎えました。このうち75歳以上人口は約8万人で、10%を超えています。団塊の世代が全て75歳以上となる平成37年以降、さらに高齢化が進んでいきます。また、一人暮らし高齢者世帯は約4万4千世帯で、その6割は後期高齢者です。今後、一人暮らし高齢者の増加と高齢化も進んでいきます。 A平成26年3月現在、区内の要介護者は約2万3千人、要支援者は約5千8百人で、合わせて高齢者人口の約2割となっています。今後10年間で、要介護認定者は1万人増加し、高齢者人口の25%近くになる見込みです。 B区内の高齢者の約8割は自宅を所有しており、多くの高齢者が、医療や介護が必要になっても住み慣れた自宅での生活を希望しています。一方、将来の不安や経済的な理由等により、特別養護老人ホームやサービス付き高齢者住宅等への入居を希望する方もいます。できる限り長く、住み慣れた自宅生活を続けられるための支援が求められています。 C平成25年度の高齢者基礎調査では、高齢者が求める施策の第1位は、介護予防です。全国の健康寿命は男性71.19歳、女性74.21歳で、平均寿命との差は男性9.02年、女性12.40年です。介護が必要となる理由の多くは、女性の場合、加齢による筋力の低下、男性の場合、生活習慣病によるものです。健康寿命の延伸のためには、高齢になる前から食事や運動等の生活習慣に留意し、高齢になっても自主的な介護予防の取組を行うことが望まれます。 D高齢化のさらなる進行に伴い、介護とともに医療や生活支援サービス等の需要の増大が見込まれ、様々なサービスが連携して在宅生活を支援する体制づくりが求められます。区は、平成24年度から医療、介護、予防、住まい、生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築に取り組んでいます。平成26年10月に高齢者相談センター本所4か所・支所25か所の体制が整いました。この基盤を活用し、高齢者地域包括ケアシステムの確立を一層進めます。 計画6 障害者の地域生活を支援 5年後の目標 障害者が住み慣れた地域で暮らし続けることができるよう、相談・就労・住まいなど地域生活支援を充実 5か年の取組 障害者団体や障害福祉サービス事業所等との連携により、障害者の状況にあわせて地域生活を支援するサービスの充実を進めます。 1障害者の生活状況に応じたケアマネジメント体制を強化 障害福祉サービスを利用する障害者全員に、生活状況に応じた適切なサービス等利用計画を作成できるよう、現在18か所ある民間の「計画相談支援」事業所(サービス等利用計画を作成できる事業所)を9か所増やして27か所にし、区立5か所と合わせて計32か所で相談支援を行えるようにします。 障害者地域生活支援センターは、相談支援のスキルアップに向けて民間「計画相談支援」事業所への指導・助言を行うとともに、専門性を必要とする困難事例の相談に対応します。 医療や障害福祉サービスを受けていない精神障害者に対して、訪問支援(アウトリーチ)事業を充実します。 2重症心身障害児(者)の家族支援事業(在宅レスパイト事業)を新設 訪問看護ステーション等の看護師が、医療的ケアを要する重症心身障害児(者)の自宅に出向き、家族等が行っている医療的ケア等を一定時間代替し、家族の介護負担を軽減する事業を新たに開始します。 3地域で暮らし続けられる住まいの確保 公有地等を活用し、重度障害者に対応したグループホームを5か年で10室程度整備します。民間事業者への整備費補助や空室(マンション等)の活用により、中軽度の障害者に対応したグループホームを5か年で150室程度整備します。 4障害者の就労を推進 (1)福祉施設等からの就労者数を、5年後には年間約200人が新たに就労できるよう取り組みます。このため、民間の「就労移行支援」事業所等と連携し、職場体験から雇用へつなぎ、就労後の職場定着を支援します。 (2)区内の作業所等が請負業務などを共同で受注する体制づくりを行うことで、発注を増やし、作業所等の工賃を向上させます。 @区内では、障害者やその家族、支援者などが設立した障害者団体や事業所の活動が活発に行われています。区は、障害者団体の活動や事業所の運営の支援を行うとともに、民設福祉園の誘致、高次脳機能障害等の中途障害者支援事業の開始、23区で最大規模のこども発達支援センターの開設など、障害者や家族のニーズを踏まえた取組を進めています。 A障害者が、必要なサービスを組み合わせて利用しながら地域で生活できるようにするため、平成24年4月の障害者自立支援法(当時)の改正により、障害福祉サービスの利用にあたっては「サービス等利用計画」を作成することが義務付けられました。区内で障害福祉サービスを利用している障害者は約4,000人ですが、平成26年11月現在、サービス等利用計画を作成できる「計画相談支援」事業所は区立5か所、民間18か所の計23か所で、「計画相談支援」事業所が作成した計画は区に提出される計画の半数程度にとどまっています。 B区内の障害福祉サービスは、区による施設整備や民間事業所の増加により、全体としては基盤整備が進みつつありますが、地域生活支援のためにさらなる充実が必要です。 ・自宅での日常生活を支える「居宅系サービス」については、重症心身障害児(者)のための医療的ケアに対応できる「短期入所」事業所が未整備となっており、家族からレスパイト事業の要望が高まっています。 ・就労支援や活動場所の提供を行う「日中活動系サービス」については、「就労移行支援」事業所等の利用者の中で一般就労を希望する方が1,000人程度いますが、一般就労する方は毎年100人程度にとどまっています。 ・住まいを支援する「居住系サービス」については、中軽度の障害者に対応するグループホームは、ほぼ空きがない状態にあり(57施設、全室324室に対し323名の利用)、重度障害者対応のグループホームは未整備です。 計画7 病床の確保と在宅療養ネットワークの構築 5年後の目標 1一般・療養病床(一般病床とは病気やケガなどで緊急入院するなど、急性期の患者を対象とする病床をいいます。療養病床とは急性期後の回復期や慢性期の患者を対象とする病床をいいます。一般病床の患者も症状が安定し、リハビリなどが必要となった段階で、療養病床に移ることもあります。)の190床程度増床(人口10万人あたり307床に) 2順天堂練馬病院の増床と医療機能の拡充 3練馬光が丘病院の改築による医療機能と療養環境の充実 4大泉学園町に新病院を整備し、在宅療養ネットワークを構築 5か年の取組 1順天堂練馬病院の増床と医療機能の拡充 病床稼働率の高い順天堂練馬病院は、さらに患者を受け入れるため90床増床し、区民の要望が高い救急医療や周産期センター(NICU)を新設するなど、医療機能の拡充を図ります。 2練馬光が丘病院の改築 狭隘で老朽化している練馬光が丘病院の改築を進め、今後の医療需要を見据えた医療機能の拡充と療養環境の向上を図ります。 3新病院(大泉学園町)の整備と在宅療養のネットワークの構築 大泉学園町7丁目に療養病床100床程度の病院(介護老人保健施設80床程度を併設)を整備し、地域における在宅療養患者の支援を行います。 また、急性期から在宅まで切れ目のない医療・介護を提供するため、病院や診療所、介護施設などの地域資源をいかし、医師会等との連携による在宅療養のネットワークを構築します。(「計画5 高齢者地域包括ケアシステムの確立」再掲) 4支援制度の創設による病院整備の促進 新規に病床を整備する医療法人等に対する支援制度を創設し、同一医療圏からの病床移転を含め、病院整備を促進します。 5新たな急性期病院整備の検討等 新たな急性期病院の整備についても、国や都の動向を踏まえて検討を継続します。さらなる病床増等について、国や都に働きかけを行います。 @練馬区における人口10万人あたりの一般・療養病床数は281床で23区中最も少なく、23区平均の3分の1となっています。入院を必要とする区民の約7割は区外の病院に入院している状況や、急性期病院を退院した患者を受け入れる回復期・慢性期病院が少ない状況からすると、既存病院の増床や新たな病院の誘致を図る必要があります。 A救急患者の約6割が区外へ搬送されている状況からすると、区内の救急医療体制を整える必要があります。さらに、地域周産期母子医療センターの整備も含めて周産期医療の充実を図る必要があります。小児救急医療においては、小児救急入院患者を受け入れる病床の確保を始めとした体制の充実が必要です。 B地域包括ケアシステムの一翼を担う在宅療養を支援する病院を地域に整備し、医療・介護関係者のネットワークを構築、充実させる必要があります。 計画8 つながり、見守る地域づくり 5年後の目標 だれもが住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう、地域における平常時の見守りと災害時の要援護者支援の体制を強化 5か年の取組 1平常時にゆるやかに見守りあえる地域づくり 高齢者、障害者、子どもなどを地域でゆるやかに見守る輪を広げ、見守り活動のすそ野を広げます。そのために、出張所等17か所を段階的に地域の見守りの拠点とし、社会福祉協議会と連携して、地域の実情にあわせて地域団体や事業者等のネットワークづくりを進めるモデル事業を行います。その取組を通じて災害時の要援護者支援の担い手も増やしていきます。 (1)地域特性に応じ、住民や団体同士が気軽に交流できる場を設けるなどして、顔の見える関係づくりを進めます。 (2)見守り活動への参加のきっかけとなる情報交換会や学習会などを開催します。 (3)何らかの支援の必要な人について、専門機関(高齢者相談センター(法令上の名称は「地域包括支援センター」ですが、練馬区では「高齢者相談センター」と呼びます。)、障害者地域生活支援センター、子ども家庭支援センター等)へ情報等をつなぎます。 2災害時の要援護者支援の充実 (1)要援護者の安否確認体制の強化 高齢者や障害者等で災害時に自力での避難が困難な方に対して、災害時要援護者名簿への登録を勧奨します。登録者に対しては、避難拠点(区立小中学校99校)に集結した民生・児童委員や区民防災組織、ボランティア等の協力による安否確認を実施します。 災害時要援護者名簿未登録者で避難に支援が必要な方については、被害甚大地域を優先して、区職員が中心となり安否確認を行う仕組みを構築します。あわせて、ケアマネジャーや介護・障害福祉サービス事業者等との連携により、要援護者に対する災害時の生活支援体制を強化します (2)福祉避難所(区内の特別養護老人ホームや福祉園、特別支援学校など37か所を指定し、災害時に必要に応じて開設することとしています。)の拡充 災害時に一般の避難拠点での避難生活が困難な要援護者を受け入れる福祉避難所を、5か年で3か所新規に指定し、計40か所にします。また、福祉避難所に指定している施設には無線を配備し、通信訓練等の実施により、災害時の円滑な開設・運営体制を確保します。さらに、区外の福祉避難所との相互利用に向けて、近隣自治体との協定締結等を検討します。 @高齢者の孤立死や児童虐待等が社会問題化している中、公的な福祉サービスだけでは多様化・複雑化する地域課題を解決することが困難となっています。 A平成25年度区民意識意向調査では、「近隣とのかかわりを持てていない」と答えた方のうち、56.9%が「近隣とのかかわりが必要だが、わずらわしいため、あまり深くかかわりたくない」と回答しており、特に高齢者においてその傾向が強くなっています(60歳代が60%、70歳代の72%)。「地域福祉を推進するために必要な区の取組」の第一位が、「災害時要援護者への支援体制の強化」となっています(40%)。 B区は、地域における区民のつながりづくりを側面から支援するため、モデル事業を区内の1地域で平成24年度から実施しています。また、練馬区社会福祉協議会は、区内の2地域に地域福祉コーディネーター(住民や団体等と情報交換や連携をしながら住民による支え合いが広がるよう、支援する「地域のつなぎ役」です。)を配置し、地域の住民の自主的な地域課題への取組を支援しています。 C平常時に地域全体でゆるやかに高齢者等を見守りあえる体制を強化するため、区内新聞販売店等16団体(約4,400事業者)と高齢者等見守りネットワーク協定を平成26年度に締結しました。 D災害時に民生・児童委員、区民防災組織等の協力により災害時要援護者の安否確認を行うため、各避難拠点(区立小中学校99校)に災害時要援護者名簿(約26,000名)を配置しました。 V 安全・快適な都市の実現に向けた基盤整備 計画9 鉄道、道路などインフラの整備 5年後の目標 1都営地下鉄大江戸線の延伸 ・交通政策審議会から整備に向けた答申を得て、事業化の諸手続を促進 2都市計画道路の整備 ・外環の2の整備を契機に、快適な都市環境を創出するものとして積極的に捉え、道路 整備に対する発想の転換を推進 ・整備率を23区平均である概ね6割に 3西武新宿線の立体化 ・沿線のまちづくりを進め、都、鉄道事業者とともに、都市計画などの手続が進展 5か年の取組 1都営地下鉄大江戸線の延伸 (1)事業予定者の都と事業化に向けての実務的な協議を進めていきます。 (2)大江戸線が延伸した場合の区民生活や地域経済への整備効果を積極的にPRするとともに、区内の各種団体へ延伸促進への協働を働きかけるなど、区民の機運をより一層盛り上げていきます。 (3)大江戸線延伸推進基金を積み増すとともに、延伸実現のため有効に活用します。 (4)新駅予定地を中心に、都市生活を支えるサービス施設等の立地を促進し、良質な都市環境に資するまちづくりを具体化します。 2 都市計画道路の整備 (1)道路整備に際しては、街路樹等による緑化や無電柱化、自転車レーンの整備など快適な都市環境を創出します。 (2)国、都などと連携し、外環道(関越道〜東名高速)の完成に向けて整備を促進します。外環の2(前原交差点以南)の早期の事業着手を都に働きかけ、街路樹を充実し、広幅員の歩道と自転車道を設けるとともに、沿道のまちづくりを進めることで、都市生活を支える良質な空間の形成に繋げます。 (3)都などと連携し、放射7号線(補助135号線(大泉学園通り)以西)や放射35・36号線(環状7号線〜放射8号線(川越街道))、補助230号線(土支田通り〜補助135号線(大泉学園通り))などの早期の完成や補助133号線(補助229号線(千川通り以南))などの早期の事業着手など、整備を促進します。 (4)区が施行する都市計画道路の整備を着実に進め、石神井公園駅周辺の補助132号線(西武池袋線〜都立石神井公園付近)などを完成させるとともに、補助135号線(区街6号線〜富士街道)などに事業着手します。 (5)平成27年度に、都と区市町で、平成28年度から37年度までの10か年を計画期間とした新たな事業化計画を策定します。この計画では、完成後の整備率が概ね8割になることをめざします。 3西武新宿線の立体化 西武新宿線と交差する外環の2は、鉄道の立体化を前提に都市計画変更が決定されました。外環の2の整備促進とともに、早期の鉄道立体化に向けて、区民、区議会、区が一体となった要請活動に取り組みます。沿線のまちづくりを進め、早期の事業化を都に働きかけます。 @区北西部には、最寄りの駅まで1キロメートル以上離れ、都心などへアクセスするには交通の不便な鉄道空白地域があります。区北西部の交通環境を改善するためには、光が丘まで開通している都営地下鉄大江戸線を大泉学園町まで延伸することが必要です。 A区内の都市計画道路の整備率は約49.9%であり、23区平均の約63.8%を下回っています。特に西部地域の整備率は約29.0%と低く、南北方向の道路整備の遅れが目立っています。このため、主要道路での渋滞や生活道路への車両等の流入が続いています。 B道路と鉄道が平面交差する踏切には、交通渋滞の発生や踏切事故の危険性など、多種多様な問題が発生しています。区内には踏切が33か所(練馬区近接も含む)あります。その中には遮断時間が長い踏切もあり、日常生活の移動の負担になっています。このようなことから、国、都、近隣区市、鉄道事業者などと連携し、鉄道の立体化などに取り組むことが必要です。 計画10 災害に強い安全なまちづくり 5年後の目標 1特定緊急輸送道路等の沿道建築物の耐震改修や不燃化の誘導を推進 2災害危険性の高い木造住宅密集地域(4地区)等の改善 3雨水貯留浸透施設の増設等による都市型水害対策の強化 4区民の防災活動への支援による地域防災力の向上 5か年の取組 1特定緊急輸送道路沿道建築物等の耐震化・不燃化 (1)道路を遮断するおそれのある建築物の耐震化 特定緊急輸送道路(震災時における救助救援活動の大動脈となる緊急輸送道路のうち、特に沿道建築物の耐震化を図る必要がある道路です。平成23年6月、区内では目白通り等の7路線の幹線道路が東京都から特定緊急輸送道路として指定されました)沿道にある対象建築物101棟すべてについて、働きかけを強め、耐震改修への理解と助成制度の活用を促し、耐震化を進めます。 (2)都市計画道路沿道建築物の不燃化による延焼遮断帯の形成 放射7号線等の都市計画道路事業にあわせた沿道まちづくりにおいて、防火地域等の都市計画決定を行い、沿道建築物の不燃化を誘導します。 (3)無電柱化による避難路の確保 都市計画道路や生活幹線道路の整備にあわせて、無電柱化を進めます。歩道幅員が狭い既存道路においてもモデル事業として無電柱化に取り組みます。 2木造住宅密集地域における道路・公園の整備と不燃化の推進 (1)密集住宅市街地整備促進事業の推進 @これまで事業を進めてきた江古田北部地区、北町地区の災害危険性の改善に必要な道路・公園の整備を終え、これにあわせて、新たに1地区を選定します。 A貫井・富士見台地区と新たに選定する1地区では、消防活動困難区域を解消するため、道路・公園の整備等の事業計画の合意形成をめざし、事業化の取組を進めます。 (2)木造住宅密集地の新たな改善制度の創設 木造住宅が連担し、被災が懸念される小規模なエリアについて、十数戸単位で共同して改善を図る制度を創設します。 3雨水貯留浸透施設の増設等水害対策の強化 (1)浸水被害が想定される河川沿い等の場所で、都の河川改修や下水道貯留管の整備に加えて、区における雨水流出抑制対策等を強化します。 @石神井川稲荷橋付近、白子川子安橋付近、旧田柄川沿いの3地区に雨水貯留浸透施設を増設します。 A白子川子安橋上流等に水位観測カメラを増設します。 (2)地下室・半地下室の浸水対策 練馬区浸水ハザードマップに基づき、家の新築・増改築時に浸水対策の届け出を制度化し、地下室・半地下室の浸水対策を促進します。 4区民による防災活動の推進 (1)地域防災力の向上のために、行政が責任をもって役割を果たすことを基本にしつつ、区民防災組織等の自主的な防災への取組を支援します。 (2)ねりま防災カレッジ事業の実施・充実により、地震防災をはじめとする区民の防災に対する意識の向上を図り、地域の防災リーダーとなる人材を育成します。 @区内にある約30万戸の住宅のうち未耐震の住宅の耐震化を促進し、平成24年までの6年間で建替等を含めて約1万5千戸の住宅が耐震化されました。しかし、依然として耐震化されていない住宅が約5万2千戸残っています。特に、災害時に倒壊し、道路を遮断するおそれがある建築物の耐震化が急がれます。 A首都直下地震の発生が危惧される中、区内には、老朽木造住宅が密集し、緊急車両の通行が困難な地域や災害発生時に延焼の可能性が高い危険な地域があります。このような木密地域については、1地区において改善を終え、江古田北部、北町、貫井・富士見台の3地区において密集住宅市街地整備促進事業を実施しています。 B従来の雨水処理能力を超えた集中豪雨が近年頻発し、浸水被害が発生しています。そのため、東京都は豪雨対策の目標を区部では1時間あたり75oの降雨に引き上げ、河川や下水道の整備を推進するとともに、区は雨水流出抑制対策を実施し、浸水被害の軽減を図っています。 C区内には、防災会が297組織、市民消火隊が14組織、避難拠点運営連絡会が99組織、その他の組織が2組織で、合わせて412組織の区民防災組織があります。地域防災力の向上には、区民防災組織への支援強化や新たな組織結成の促進などにより、地域における自主的な防災活動を推進することが必要です。 計画11 地域生活を支える駅周辺のまちづくり 5年後の目標 地域の中心的な役割を果たす駅周辺地区の整備(交通広場や駅へのアクセス道路、生活利便性の高い駅前空間、景観等の整備促進) 5か年の取組 1石神井公園駅周辺地区 (1)南口西地区市街地再開発事業施行への支援や補助232号線(南口駅前広場〜富士街道)の整備を推進します。 (2)駅と石神井公園を結ぶ駅南側補助132号線の緑化を図るとともに、沿道では用途地域の変更や色彩、意匠などの景観計画を含む地区整備計画の決定を行います。 (3)安全で快適な歩行空間を確保するため、都市計画道路などの整備にあわせて、無電柱化やバス経路、歩行者優先路線などの交通動線を見直します。 2上石神井駅周辺地区 (1)西武新宿線と交差する外環の2は、鉄道の立体化を前提に都市計画変更が決定されました。上石神井駅周辺では、これを受けて交通広場の整備計画を策定し、整備に着手します。 (2)外環の2の沿道については、都と連携して道路と沿道の商店街や住宅を一体とした整備の事業手法の検討や合意形成を行い、まちづくりを進めます。 3その他の駅周辺地区 (1)西武新宿線の武蔵関駅では、広場など交通結節機能の整備計画を関係機関と連携し策定します。また、上井草駅周辺地区では杉並区と連携し駅周辺のまちづくりを進めます。 (2)保谷駅周辺地区では、まちづくりの検討組織による協議を進め、地域の課題の把握、重点地区まちづくり計画の策定などを行います。 (3)江古田・東武練馬・富士見台の各駅周辺地区では、密集住宅市街地整備促進事業の施行と連携し、防災対策に加え、地域の特性に応じた交通結節機能の向上を図ります。 駅は、都心などへ向かう多くの通勤者、通学者に利用され、駅周辺は日常生活を支える拠点になっています。拠点には、便利で賑わいのある商業環境など、生活・文化の中心としての機能のほか、交通広場やアクセス道路を備えた、交通拠点機能の向上が必要です。 交通拠点機能を高めるためには、交通広場やアクセス道路をはじめとして、以下の機能を駅の特性に合わせて備える必要があります。 @交通結節機能 交通広場やアクセス道路による、他の交通機関への乗り換えサービス A生活利便機能 生活を支える賑わいのある商業環境、地域住民等の交流の場を備えた駅前空間や憩いの場の提供、各種の情報や公共的なサ−ビスの提供 B都市景観機能 地域の顔にふさわしい美しさとシンボル性を兼ね備えたまち並み 現在、区内および隣接の23駅のうち交通広場が整備されている駅は、練馬駅、光が丘駅、練馬 高野台駅、石神井公園駅、大泉学園駅、保谷駅、成増駅の7駅です。 計画12 住宅都市にふさわしい自立分散型エネルギー社会へ 5年後の目標 (仮称)練馬区エネルギービジョンに基づく、練馬区の地域特性にふさわしい自立 分散型のエネルギー社会へ向けた取組の推進 5か年の取組 1エネルギー政策の基本的考え方 これまで国家的、広域的課題とされてきたエネルギー政策を、基礎的自治体である練馬区が行政計画として取り上げるのは、東日本大震災などを背景とする大きな時代の変化があったことによります。 小型発電機やコジェネレーション(発電の際に排出する熱を給湯や暖房などに利用するシステム。)等の分散型発電技術が飛躍的に発展したこと、従来の大規模集中型電力システムの脆弱性と全体としてのエネルギー利用効率の限界などが明らかになったことです。 そこで、大都市東京の一角にある住宅都市練馬の地域特性を活かしながら、災害時 のエネルギーセキュリティの確保と、平時における自立分散型エネルギー社会の実現という視点にたって、練馬区にふさわしいエネルギー政策を展開します。 2取組の方向性と5か年の取組 以下の視点を基本とし、(仮称)練馬区エネルギービジョン検討会議や区民の意見を踏まえて、平成27年度に(仮称)練馬区エネルギービジョンを策定し、取組を推進します。 (1)災害時のエネルギーセキュリティの確保 災害時に区民の安全・安心を確保するため、避難拠点である小中学校、病院などの医療機関、福祉避難所となる福祉施設などでの自家発電機能の充実、蓄電設備の導入を進めます。 (2)自立分散型エネルギー社会への取組の推進 電力、ガス、再生可能エネルギーなど様々なエネルギーのベストミックスを基本とする自立分散型エネルギー社会の実現に向けて取り組みます。 @コジェネレーション等の導入促進 コジェネレーションや家庭用燃料電池(水素と酸素の電気化学的な反応により発電する装置。)の導入を促進します。 A再生可能エネルギーの利用促進 太陽光発電などの再生可能エネルギーを最大限活用します。 B清掃工場の活用 区内に2か所ある清掃工場でのごみ焼却から発生する熱や発電した電気の利用を拡充する仕組みを検討します。 C防災・環境・まちづくりとの連携 木造住宅密集地域の改善、CO2の排出量の削減施策、再開発などのまちづくりと連携して自立分散型エネルギー社会の実現をめざします。 Dスマートエネルギーネットワークの取組 エネルギーのベストミックスを実現するため、ICT(情報通信技術)を活かした地域単位のスマートエネルギーのネットワーク化に取り組みます。 (3)省エネルギーへの取組 災害時のエネルギーセキュリティの確保や自立分散型エネルギー社会への取組の推進にあわせ、省エネ型住宅、省エネ家電などの普及促進や、環境教育、節電啓発、省エネ型ライフスタイルへの誘導などに取り組みます。 W 練馬区の魅力を楽しめるまちづくり 計画13 地域特性を活かした企業支援と商店街の魅力づくり 5年後の目標 人口が多く交通の利便性が高い練馬区のポテンシャルを活かした、中小企業の事業活動の活性化と商店街の魅力づくり 5か年の取組 1創業への総合的な支援の充実 練馬ビジネスサポートセンターを拠点に、創業への総合的な支援を充実します。 (1)新たに女性向け創業セミナーを開催するなど多様なセミナーや新たな創業支援融資の実施など、創業のきっかけづくりとなるサポートメニューを強化します。 (2)創業セミナーと連動した空き店舗の紹介や対象業種の拡大など、商店街の空き店舗への入居を促進します。 (3)後継者不足に悩む事業者と起業家を結びつけるなど、既存資源の有効活用を促進します。 2販路拡大など企業活動の活性化 (1)需要の開拓や掘り起しを促進するため、商品やサービスの展示会・商談会・即売会を行う「産業見本市」を開催します。 (2)企業連携による新商品開発など、企業間交流の活性化を支援します。 (3)業界最大の集積地であるアニメ産業や、医療・福祉・介護などの生活関連産業など、住宅都市である区の環境・特性を活かす産業を支援します。 (4)区内産業団体・金融機関・東京都中小企業振興公社・大学等と連携し、事業者を支援する地域プラットフォーム(地域の中小企業支援機関の連合体。中小企業・小規模事業者を地域で支えるネットワーク。)の構築をめざします。 3お客が集まる個店づくり 様々なアイデアをもつ個店同士が連携しやすい環境を整え、意欲ある個店のチャレンジを応援し、商店街の核となる魅力ある個店を増やすことで、商店街全体の魅力向上につなげていきます。 (1)個店同士の連携による商品開発やイベント、魅力ある個店づくりにつながる店舗改修等への支援制度を創設します。 (2)商店主等が講師となり、プロならではの知識や情報を伝える「まちゼミ」を支援します。 4特色ある取組を行う商店街への支援 まちづくり事業や地域資源を活用した特色ある取組を行う商店街に対して、新たな魅力づくりに向けた支援を行います。 @平成24年は事業所数が20,194事業所、従業者数は167,060人となっています。平成18年からの推移を見ると、事業所数は平成18年の21,499事業所から1,305事業所、従業者数は170,340人から3,280人減少しています。「医療・福祉」分野は事業所数従業者数ともに微増しています。今後、高齢化が進む社会において、「医療・福祉」といった生活関連産業への重要性が高まっていきます。また、全国で最も多い79社が立地しているアニメ産業は、区の特徴的な産業であり、その特徴を活かした支援策が求められています。 A平成26年度に、区の産業振興の中核的な拠点として練馬ビジネスサポートセンターを開設しました。今後、創業希望者や区内事業者の多様な経営課題(経営改善、販路拡大など)に対するサポート機能をさらに充実させる必要があります。 B区が実施する創業セミナーへの参加者は増加傾向にあり、創業への関心が高まっています。社会経済状況が変化する中、業種・規模など創業の種類も多様になってきています。今後は、女性・若者・シニア向けなど多様な創業に対応した総合的な支援をしていく必要があります。 C区内の多くの企業は、事業を推進する上で「新しい販売先や取引先の開拓」「人材の確保・育成」が課題であると感じています。企業の活性化につなげるため、課題に対応した支援を各関係機関と連携して取り組む必要があります。 D平成20年度に113商店会(会員数5,195人)あった区内商店会数が、平成25年度は107商店会(会員数4,423人)に減少しています。個店の後継者問題、商店街の人材不足、未加入店舗の増加に伴う組織力の低下に対応するため、やる気のある人材の発掘、新たな店舗の誘致等の取組を行う必要があります。 E商店街には200店舗を超える空き店舗が存在します。空き店舗の存在は、商店街自体の魅力や集客力の低下を招きます。このため、新たに出店を希望する創業者に対する空き店舗の紹介機能を高めるなど、空き店舗を活用した商店街活性化への取組をさらに強化していく必要があります。 計画14 農の活きるまち練馬 5年後の目標 1練馬の魅力・都市農業の振興 2多面的機能をもつ都市農地の保全 5か年の取組 身近なところで生産される安全で新鮮な練馬の農産物の魅力をさらに高め、意欲ある農業経営を支援するとともに、多面的機能をもつ都市農地の保全に向けた取組を進めます。 1意欲的な都市型農業経営の支援 (1)ブルーベリー・ブドウ・カキ・クリなど、季節の味覚を楽しめる多様な果樹の直売や摘み取り等を行う「練馬果樹あるファーム」事業を支援します。 (2)「練馬区農の学校」を運営し、小規模農家や高齢化の進む農家等が都市農業の魅力を発揮できるよう、支え手の育成や活用の促進に取り組みます。 2練馬の都市農業の特色を活かした魅力の発信 (1)練馬産農産物のブランド名を決定・周知し、その魅力を発信します。 (2)農業・商業等が連携した即売会「ねりマルシェ」や、駅等での農産物の直売イベントを実施します。 3都市農地の保全に向けた取組の推進 (1)生産緑地(都市における良好な生活環境の保全や災害の防止、将来の公共施設用地の確保等を目的として、市街化区域内の農地を対象に指定される地区。この地区指定により、その農地は営農義務が生じますが、固定資産税・都市計画税が軽減されます。)指定の下限面積(500u)の廃止、相続税納税猶予制度の適用要件の拡大等、都市農地の保全に向けた規制緩和が可能となるよう、特区制度の活用等を含めた取組を進めます。 (2)都市農地保全推進自治体協議会の会長区として、積極的に他の自治体と連携し、引き続き都市農地の保全に向けた制度改正を国に働きかけます。 (3)農の風景育成地区制度(減少しつつある農地を保全し、農のある風景を将来に引き継ぐことを目的として東京都が創設した制度。農地や屋敷林などが比較的まとまって残る地区を指定し、都は区市町と協力して、農地等の保全を図るために都市計画制度などを積極的に活用することとしています。)を活用し、農地や屋敷林のある風景を保全します。 (4)練馬の伝統野菜「練馬大根」の小学生向け資料の作成と食育への活用や、農地の防災上の役割の積極的発信などにより、都市農業・農地に対する理解をさらに広げます。 @区内には230.4haの農地があり、区部では1番目、都内でも4番目の規模です。しかし、面積要件等により生産緑地に指定できない狭小な農地が宅地並みに課税されることや、相続時の高額な税負担等により農地面積の減少が続いており、過去10年で75.7haも減少しました。このため、原因のひとつである法制度等の見直しに向けた取組を強化していく必要があります。 A区内には480戸1,014名の農業者がいます。しかし、61歳以上の農業者が全体の6割弱を占め、後継者がいる農家も全体の5割弱であり、農業者は年々減少しています。都市農業を振興するために、意欲的な農業者が行う規模の拡大や都市農業の魅力を活かした多様な取組を支援する必要があります。あわせて、農業者の「支え手」を育成し、小規模農家や高齢化等により労働力が低下している農家等を支援する必要があります。 B農地・農業は、防災や教育等の多面的機能を有する社会資本です。その機能を有効に発揮するための取組を行う必要があります。 C多くの区民が農とのふれあいに関心を持つ一方で、農業体験をしたことがある区民は4割程度にとどまっています。農とのふれあいを希望する区民に対し、都市農業の魅力を活かした情報発信や農とふれあうことができる機会を充実する必要があります。 計画15 みどりあふれるまちづくり 5年後の目標 1みどりのネットワーク形成の推進 公園、樹林地や街路樹等を結ぶ、みどりのネットワークを充実 2都市インフラの整備におけるみどりの創出 街路樹や緑地を設け、より豊かで質の高いみどりを創出 3みどりの美しい街並みづくり みどりが連続する美しい景観と安全の確保が両立する街並みを形成 4子どもたちが楽しめる体験型事業の拡大 未来を担う子どもたちのみどりを愛する心をはぐくむ体験型事業を実施 5か年の取組 練馬区の魅力は、みどりの豊かさと大都市の利便性が両立していることです。現在に受け継がれた貴重なみどりを守り、さらに増やし、未来へつなぐために、より積極的、効果的なみどり施策を展開し、みどりあふれるまち練馬を実現します。 1みどりのネットワーク形成の推進 (1)みどりの現状を把握し、みどりの総量だけではなく質にも着目した、みどり施策の新たな考え方をまとめ、取組を推進します。 (2)(仮称)練馬総合運動場公園やカタクリ群生地となっている(仮称)清水山公園など、特色ある公園等15か所を整備します。 (3)石神井公園駅から石神井公園まで、補助132号線の整備にあわせて、街路樹などによるみどりの軸を形成します。 (4)民有樹林地の健全度や所有者の意向調査を実施し、3か所程度、都市計画公園として決定します。 2都市インフラの整備におけるみどりの創出 (1)都市計画道路の整備にあわせ、みどりを創出します。また、沿道まちづくりの中で公園・緑地を整備するなど、まちのみどりを増やします。 (2)石神井川、白子川の河川改修にあわせ、サクラ並木の整備を促進します。 3みどりの美しい街並みづくり (1)町会や商店会等にみどりのアドバイザーを派遣し、生け垣やみどりのカーテン、花壇など、街区や沿道単位での緑化の取組を支援します。みどりの街並みマップを作成し、先進的な事例をホームページなどで紹介します。 (2)街路樹や公園の樹木は、目標樹形を設定した維持管理を促進します。 (3)大泉学園通りのサクラ並木などで、計画的な樹木の更新を行います。 4子どもたちが楽しめる体験型事業の拡大 (1)「カブトムシの森」事業や小中学生参加による白子川の生物調査により、直接生きものとふれあう機会を提供します。 (2)こどもの森を開園し、自然を活用した木登り、虫捕り、冒険遊びの場を提供します。 (3)(仮称)中里郷土の森緑地に、体験型環境学習の拠点を整備します。 @練馬区の緑被率は23区で最も高い25.4%を誇ります。平成26年7月現在で、民間所有等の樹林地を区民に開放している憩いの森(面積1,000u以上)は44か所約10.4ha、街かどの森(面積300u以上1,000u未満)は5か所約0.3haとなっています。しかし、区内のみどりの78%を占める民有地のみどりは減少し続けています。 Aみどりは、レクリエーションなど日常生活に潤いをもたらすだけでなく、景観形成、都市環境改善、防災機能も担っており、都市生活において欠かすことのできない存在です。みどりの拠点と軸からなるネットワークを形成し、まとまりのあるみどりの景観をつくることで、みどりがもつ多様な機能が大きく発揮されます。 B都市の安全性と利便性を向上させる都市計画道路や再開発等は、豊かなみどり空間の実現と対立・矛盾するものではありません。積極的にみどりを増やす機会とする必要があります。 計画16 風を感じながら巡るみどりのまち 5年後の目標 練馬区の多彩な魅力を「まち歩き」「ポタリング」(自転車で散策すること。「ぶらぶらする」という意味の英語から来ています。)を通して区内外に発信し、「住んでよし」「訪れてよし」のまちのイメージを拡大 5か年の取組 1「まち歩き」「ポタリング」を通して練馬の魅力を体感できる仕組みづくり (1)自然と文化が織りなす魅力のまち練馬 みどり、文化施設、図書館、史跡、農、アニメ、景観、商店街・食といった区内の地域資源を、掘り起し、磨き、組み合わせるなど、新たな切り口で魅力を発信する取組を区民・事業者とともに進めます。 @区内の文化芸術関連施設、大学が連携した企画実施 Aみどり豊かな公園での芸術イベントの実施(薪能、野外コンサートなど) B練馬産野菜を使った商品開発、和菓子店が共同開発した練馬ブランドの和菓子販売、農業やアニメ制作体験等の産業体験 (2)徒歩・自転車で魅力スポットを巡る散策コースのプランづくり 多彩な地域資源を発見・体験できる「まち歩き」「ポタリング」コース等を設定します。散策を快適に楽しめるよう、コースマップの作成、案内表示板・路面表示、地域資源の統一看板、途中の休憩ベンチ、施設の駐輪施設の設置など環境を整備します。 @「まち歩き」コース…比較的近いエリアを徒歩で巡る A「ポタリング」コース…広いエリアを自転車でのんびり散策できる B「イベント」コース…地域資源の魅力を発信するイベントに合わせて設定 (3)練馬の魅力・観光情報を効果的に発信する広報強化 区や民間が行う練馬の魅力発信について、統一コンセプトのもとにロゴを共通化するなど戦略的に広報を展開し、「住んでよし」「訪れてよし」の練馬のイメージを広げていきます。SNS(ツイッター、フェイスブック等)などを活用し、区民PRサポーターや事業者、区外の練馬ファンからも「お気に入りの魅力」を紹介してもらい、練馬ならではの観光情報として国内外に発信します。 2シェアサイクル導入に向けた取組の実施 ポタリングのツールとなるシェアサイクル(複数のステーション間で、いつでもどこでも貸出や返却のできる自転車。)の導入に向け、先行自治体の調査や具体的な活用方法の検討、車体等の広告(スポンサー)獲得の可能性の研究などを行い、練馬区に適した導入方法の検討を行います。そのうえで、社会実験を行い、本格実施に向けた計画を策定します。 3自転車レーンの整備促進等による散策しやすいまちづくり 都市計画道路の整備に際しては、自転車レーンの設置を推進し、街路樹等による緑化や無電柱化を進め、散策しやすい快適な都市環境を実現するまちづくりに取り組みます。(「計画9 鉄道、道路などインフラの整備」再掲) 4身近でスポーツを楽しめる環境の整備 みどり豊かな公園など身近な場所で、スポーツを楽しみ、まち歩きや散策と合わせて気軽に健康づくりができるよう、屋外・屋内のスポーツ施設を充実します。 @練馬区は、交通の利便性が高く、都心から近いこととみどり豊かな環境が両立する良好な住宅都市として発展してきました。平成26年度の区民意識意向調査では、区民の「区への定住意向」は7割を超え、「区への愛着度」は8割近くになっています。一方、平成24年度に実施された「住んでみたい街アンケート(首都圏版)」での練馬区の印象は、「住んでみたい街」(143位)より、「実際に住んでよかった街」(10位)でした。 A練馬区は、自然、歴史・文化、商業、農業、街並み・景観など、様々な地域資源が存在するとともに、練馬まつり・照姫まつり・商店街イベント・アニメイベントなど、魅力あふれる催しも行われています。住んでいるとわかるこうした練馬の魅力は、区外には十分知られていない状況です。 B練馬の魅力を巡る「ねりまのねり歩き」(観光協会主催)や「西武線ウォーク」(西武鉄道主催)などの「まち歩き」のイベントには、多くの参加者があり、区内散策を楽しんでいます。 C自転車は、ほぼ平坦な地形の練馬区内に散在する地域資源を効率的に巡るうえで、適した交通手段です。区では、区内6駅7施設でレンタサイクル事業を実施し、約2,600人が主に自宅との往復で定期利用していますが、一時的な利用の場合、貸出施設に戻って返却するという手間を伴います。移動先で返却できるシェアサイクルは、短時間・短距離の移動や、来街者にとっての自転車散策に適した公共交通手段です。 計画17 練馬城址公園をにぎわいの拠点に 5年後の目標 東京都が事業化する練馬城址公園の整備に、区が求める機能を反映 5か年の取組 1練馬城址公園に整備されることが望ましい機能の検討 つぎの4点を基本に、区民の意見を踏まえて検討します。 (1)災害時に避難場所や活動拠点等として機能する「防災の拠点」 (2)練馬区の新たなみどりの象徴となる「水とみどりのネットワークの拠点」 (3)多くの人が訪れ、楽しいひとときを過ごすことのできる「にぎわいの拠点」 (4)都市計画道路補助133号線をはじめとする周辺都市基盤の整備 2東京都への要請 東京都の公園整備の考え方やスケジュールと調整を図りながら、区が求める機能が盛り込まれるよう、東京都に要請していきます。 @「としまえん」は都内有数の遊園地として、長年にわたって区内外の方々から親しまれ、その知名度は高く、「練馬区のシンボル」と言える貴重な財産です。成人の日のつどいなど区の行事の会場にもなっており、平成26年度には「練馬まつり」が行われ、多くの来場者でにぎわいました。昭和32年12月に都市計画公園として決定された「練馬城址公園」の区域内にありますが、50年以上にわたり公園事業化の動きはありませんでした。 A区では平成21年度、練馬区の特色を活かす「みどり」「農」「アニメ」など5つの「ねりま未来プロジェクト」を設定し、これらのプロジェクトを総合的、効果的に進める先導的なモデル事業として「新たな練馬ブランドの発信拠点」づくりをめざす「ねりま未来プロジェクト推進構想」の検討を開始しました。「としまえん」は知名度が高く立地条件も良いことから、モデル事業における拠点の一つと位置づけ、区では平成22年度に、「新たな練馬ブランドの発信拠点」づくりに向けて、主たる土地所有者に働きかけ、官民協働による取組の検討を進めてきました。 B平成23年12月に、「都市計画公園・緑地の整備方針(改定)」において東京都は、避難場所として指定されている「としまえん」を含む練馬城址公園を事業化する意向を明らかにしました。東京都は新たな事業化にあたり、東日本大震災を踏まえ「首都東京の防災機能の強化(避難場所等となる公園・緑地の整備促進)」と、「水とみどりのネットワークの形成」をポイントとしています。そして、都市計画公園「練馬城址公園」として都市計画決定されている区域26.7haのうち21.9haを平成32年度までに事業化(都市計画公園としての事業認可取得)を図る「優先整備区域」として設定しました。東京都による練馬城址公園の事業化という状況の変化により、区が主体的に取り組みを進めることが困難になり、東京都の方針を前提とした再検討を行う必要が生じています。 C「としまえん」の周辺は住宅密集地であり、幅員4m以下の道路や袋小路が多くあります。東側に接する豊島園通り(幅員11m程度)以外に幅員8m以上の道路はなく、避難や消防活動、延焼防止等の面で課題を抱えています。また、遊園地「としまえん」のにぎわいが失われた場合、豊島園駅の乗降客数(西武豊島線13,318人/日、地下鉄大江戸線10,954人/日(24年度平均))が減少し、特に西武豊島線に影響を及ぼすことが懸念されます。 X 新たな区政の創造 計画18 新しい成熟都市に向けた区政の創造 区政は、少子高齢化と人口減少、新しい成熟社会への移行など、初めて経験する時代を迎えます。 区は、これまでも区民本位の効率的で質の高い行政運営をめざして改革に取り組んできましたが、時代の大きな転換点にあたり、行政のあり方を改めて見直していく必要があります。 区民に最も身近な基礎的自治体として、社会的弱者への支援、防災対策、まちのインフラ整備といった課題については、行政としてその責任を徹底して果たしていかなければなりません。変化する時代の中で、真に行政が果たすべき役割を明らかにし、そのための仕組みを改革していくことは、区政にとっても永続的に取り組む大きな課題です。既成概念にとらわれず工夫を凝らし、時代の変化に先んじて大胆に変革していくことが強く求められています。 公共分野は、地域団体や民間事業者などの参加・参画により、担い手の多様化が進みました。区は、法令に基づく事務を正確に、かつ公平、効率的に行うことにとどまらず、公共活動全体の「舵取り」の役割を担っていく必要があります。 区政改革の基本方針 このビジョンの中で明らかにした施策を着実に推進するため、区議会との緊密な連携のもと、当面の区政運営の改革に集中的に取り組む必要があります。そのために、以下の3点を基本方針として進めます。 第一リアルな行政需要に応え、区民生活の質のさらなる向上に取り組みます。 第二行政需要に的確かつ迅速に応える組織にします。そのために、組織を支える職員の意識改革を進めます。 第三地域団体、民間事業者等と力を合わせ、良質で効果的な区民サービスを提供します。 区は、以上の取組をベースにして、最少の経費で効率的に区政運営を進めながら、質の高い区民サービスを提供するために全庁一丸となって区政改革を推進します。 区政改革の当面の取組項目 以下の取組項目について、平成27年度に具体的な内容を明らかにします。 1区民サービスの「質」を高めるための取組 (1)ICT(情報通信技術)などの積極的な活用による利便性の向上 @ICTを活用して、区民生活の利便性の向上、区民サービスの質の向上を図ります。 A住民税、国民健康保険料および介護保険料など納付・支払手続きの多様化と簡素化に取り組みます。 (2)社会保障・税番号(マイナンバー)制度の導入に伴う区民サービスの拡充 @番号の活用により申請時の添付書類の削減など区民サービス向上と行政の効率化を図ります。 Aコンビニエンスストアでの証明書の交付を開始します。移行期間を経て、自動交付機を廃止します。 (3)開かれた区政に向けた情報発信の充実と区民要望への迅速な対応 @区民から寄せられた意見・要望に、迅速かつ的確に対応する態勢をつくります。 A広報を通じて区政の課題を分かりやすく伝え、説明責任を果たします。 B「住んでよし」「訪れてよし」のまちのイメージを区内外に定着させるため、区の魅力を戦略的に発信します。 (4)費用対効果の分析と方向性の提示 @区が取り組んできた主要な事務事業について、費用対効果の分析などを行い、今後の事務事業のあり方を考えます。 A行政評価については、より実効性の高い制度となるように見直しに取り組みます。 (5)恒常的な区民サービスの改革・改善や組織連携など取組の工夫 @区民サービスの質の向上に向けた職員の意識啓発を進めます。 A空き家対策、地域包括ケアシステムの構築など分野横断的に推進し、都市農業の維持・拡大と地域医療の充実では、特別区域制度などの活用を図ります。 B区民が身近な場所で区政に関する相談ができるように取組を工夫します。 C発行物の整理・統合など各所管が連携して効率的・効果的に事業を進めます。 2行政需要に機動的に対応するための人材育成・態勢整備 (1)人材育成 @職員が、政策や企画を立案するプランナー、地域団体等とともに事業を展開するプロデューサー、住民と一緒にまちづくりを進めるコーディネーターとしての役割を果たせるように人材育成を行います。 A民間企業、外部機関との人事交流や職員の派遣等を通じて、広い視野を持って区民サービスの向上に向けて取り組む職員を育成するとともに、組織風土を変革します。 (2)業績に基づく人事評価 組織全体の公務能率の向上を図るため、新たな人事評価制度を構築し、業績に基づく評価を徹底します。 (3)組織・定数の見直し 少子超高齢社会の到来に伴う社会構造の変化など様々な行政需要に迅速に対応するために組織を見直し、簡素で効率的な組織にするとともに、適正な職員配置を進めます。 (4)公共施設等の総合的かつ計画的な管理 (仮称)公共施設等総合管理計画を策定し、公共施設の適正配置、複合化、長寿命化や維持管理の効率化などを計画的に進めます。 (5)財政基盤の強化 財政基盤の強化に向けて、経常収支比率の改善、収入未済金の徴収強化等による歳入の確保および歳出の削減など規律ある財政運営に取り組みます。 3 区民・地域団体等との協働と外郭団体の見直し (1)区民・地域団体等との協働 @地域団体や民間事業者等との協働を進めるため、協働を担う団体が活発に活動に取り組めるよう支援し、職員の意識の向上を図ります。 A地域活動を担う人材の育成や、区民の様々な経験、知識・技術、学習の成果を活かすための仕組みづくりを進めます。 B委託・民営化や指定管理のあり方、委託施設と区直営施設のサービス内容などを整理します。 C区内事業者がさらに活躍の場を広げられるよう支援します。 (2)外郭団体の見直し 区と外郭団体との役割分担を明確化し、財政支援のあり方および職員配置などを見直します。 白書編 練馬区の人口動態と将来人口の推計、土地利用、産業構造、生活実態、区民サービスの状況等の各種データを基に、練馬区の特性や課題等を分析し、構想や戦略計画の立案の背景を示します。 注釈)将来人口の推計は、過去5年の住民基本台帳人口の実績に基づくものであり、今後の施策による効果は見込んでいません。ビジョンによる施策効果については、戦略計画の実施状況を踏まえながら、分析を続けます。 <白書> 1練馬を知る 1−1人口特性・土地利用 (1)人口特性 (2)土地利用 1−2子育て・教育 (3)子育て環境 (4)教育 1−3福祉・医療 (5)高齢者の生活と福祉 (6)障害者の生活と福祉 (7)地域医療体制 (8)地域のつながり 1−4まちづくり (9)都市特性・交通環境 (10)地域防災 (11)区内のエネルギー消費 1−5まちの魅力 (12)産業特性 (13)商店街の状況 (14)練馬の農業 (15)豊かなみどり (16)学びや文化活動、スポーツ等 1−6行政運営 (17)行政改革の状況 2区民意識意向調査における施策への要望 1練馬を知る 1−1人口特性・土地利用 (1)人口特性〜都内2位の人口を擁する住宅都市〜 ・数十年に渡って堅調な人口増加が続いており、平成27年1月1日現在350,732世帯、714,656人が暮らしています。東京都内では世田谷区(約86万人)に続き2番目に人口が多くなっています。 ・平成22年1月から平成27年1月の住民基本台帳人口の実績に基づき将来人口推計を行ったところ、平成33年頃までは人口増加が続いていくと推計されており、10年後の平成37年には717,215人、30年後の平成57年には683,370人になると見込まれています。 ・年齢構成をみると(平成26年1月1日現在)、生産年齢人口(15〜64歳)と高齢者人口(65歳以上)の割合は、それぞれ66.7%、20.8%で、都や区部の値と同程度となっていますが、年少人口(0〜14歳)の割合は12.5%と都や区部より高いという特徴があります。 ・18歳未満の子どものいる一般世帯は65,438世帯で、周辺都市と比較して子どものいる世帯の割合が高くなっています。 ・昭和60年からの年齢3区分の推移をみると、高齢者人口が大きく増加しており、今後、さらに高齢化が進展していくことが見込まれます。 ・人口推計における4地区別の人口の推移を見ると、練馬地区ではいずれの年齢区分においても増加傾向を示していますが、石神井、大泉、光が丘地区では高齢者人口が増加する一方で、年少人口、生産年齢人口が減少していきます。また区全体の推移と比較すると、大泉、光が丘地区での減少が大きいことが分かります。なお、人口割合の推移を見ても、練馬地区では生産年齢人口割合が増える一方で、大泉地区では減っていることが分かります。 ・高齢化率は、中村南・中村北・氷川台・平和台・栄町・高松などで低く、光が丘・大泉町・南田中・大泉学園町などで高いなど、地域ごとに違いがあります。 ・住宅都市の特徴として、二世代世帯(夫婦とその子ども)等のいわゆるファミリー層の占める割合が大きくなっていましたが、平成12年から平成22年にかけて増加した52,199世帯の内訳をみると、核家族世帯が16,578世帯増、その他の親族世帯が3,144世帯減、非親族世帯が1,797世帯増、単独世帯が36,968世帯増となっており、単独世帯の増加が著しくなっています。 ・昼夜間人口比率は、平成22年現在82.1%で、23区で最も低く東京都や区部の値118.4%、130.9%を大きく下回っています。23区で90%を下回っているのは、江戸川区84.1%、葛飾区85.0%、杉並区87.4%、足立区89.1%の計5区で、住宅都市としての特徴が表れています。昼夜間比率を年齢別・男女別にみると、区外へ通勤する人は、男性は40代、20歳代前半、50歳代前半、女性は20代が特に多いと考えられます。 人口増加が続き、都内で2番目に多い人口を擁し、ファミリー層の多い住宅都市という地域特性を踏まえた施策を検討・推進していくことが求められます。 (2)土地利用〜宅地の75%が住宅〜 ・区内の土地利用状況は、宅地が6割を超え最も多くなっています。周辺都市と比較すると、宅地の割合は同程度もしくは若干低く、農用地が多いという特徴が見受けられます。宅地の内訳をみると、住宅が75.3%と東京都区部全体よりも極めて高く、住宅都市としての特性が表れています。 1−2子育て・教育 (3)子育て環境〜子育て支援に対するニーズの多様化と量の拡大〜 ・子ども家庭支援センターに寄せられる「子どもと家庭の総合相談」の件数は、増加傾向にあります。 ・就学前児童の保護者に対する調査では、「子育てを楽しいと感じることが多いと思う」保護者は67.8%を占めています。一方で、「楽しいと感じることとつらいと感じることが同じくらい(26.7%)」と「つらいと感じることの方が多い(2.8%)」と答えた保護者にとって、「子育てのつらさを解消するために必要なこと」としては、「保育サービスの充実」、「仕事と家庭生活の両立」、「地域における子育て支援の充実」などが上位となっています。 ・一時預かりの利用者は、この5年間で約9,300人増加しています。 ・平成26年4月1日現在の保育所の待機児童数は487人で、都内では世田谷区、大田区、板橋区に次いで多くなっています。 ・就学前児童の中で認可保育所等の保育サービス利用児童数は増加しています。 ・練馬区子ども・子育て支援事業計画等の策定に係るニーズ調査では、2歳までは認可保育所の希望が多くなっていますが、3歳以降は預かり保育のある幼稚園への希望が最も多くなっています。 ・小学生の放課後対策として、学童クラブおよび学校応援団ひろば事業を実施していますが、学童クラブの利用者数は増加傾向にあります。また、「夏休み居場所づくり事業」の利用者数も、実施年度を重ねるごとに増加する傾向にあります。 育児や虐待に関する相談件数は年々増加しており、子育てに不安や負担を感じる保護者は少なくありません。保護者のニーズの増加や多様化も踏まえ、その解消に向けて保育サービスや地域における子育て支援を充実する必要があります。また,3歳以降は保護者の教育・保育双方の利用希望が高く、認可保育所等に加えて、幼稚園の預かり保育の充実が求められています。 さらに、小学生の放課後の安全・安心な居場所づくりを行う必要があります。 (4)教育〜多様化する教育課題への対応と教育行政の充実〜 ・平成27年度から教育委員会制度が変わり、区長が招集する「総合教育会議」が設置されることになります。 ・区立小学校の児童数は約3万3千人前後、区立中学校の生徒数は約1万4千人前後で、ほぼ横ばいとなっています。 ・全国学力・学習状況調査結果の平均正答率は、区立小学校・中学校とも、東京都・全国の平均を上回っています。 ・練馬区では小中一貫教育の研究や実践を進めています。 ・不登校の小学校児童はやや増加、中学校生徒は微減傾向にあります。 新しく設置される総合教育会議等を通して、練馬区の教育をさらに充実していく必要があります。また、子どもたちを取り巻く様々な問題に対応しながら、学力の向上など、教育の質を高める取組が求められています。 1−3福祉・医療 (5)高齢者の生活と福祉〜要介護認定者が増加し、経費も増加〜 ・区の高齢化率は21.2%(平成26年9月現在)で、全国的な値である約26%(推計値)と比べ低くなっています。 ・要介護認定者数は上昇を続け、平成26年3月現在の要介護認定者数は29,021人(要介護者23,185人、要支援者5,836人)となり、介護保険サービス経費も増加しています。 ・介護が必要になった場合に希望する生活場所としては、自宅を希望する人が半数を超えています。高齢者単身世帯が4万世帯を超えていること(7ページ参照)や、家族と1時間以上離れた場所に暮らす人が4分の1程度いる状況を踏まえると、施設整備や介護サービス、地域での見守り体制の拡充の必要性が高まっていくことが想定されます。特別養護老人ホームなどの介護施設への入居希望者は約15%となっています。平成26年3月現在の特別養護老人ホームの床数は1,814床、65歳以上の高齢者人口に対する整備率は1.22%となっています。 ・一般の高齢者は、買い物や散歩で外出する頻度が多くなっていますが、要介護認定者は、ほぼ毎日外出する人が1割程度に留まっています。また、一般の高齢者の地域活動への参加状況をみると、趣味関係の活動を行っている人は2割弱、スポーツ関連が1割程度で、活動していない人が6割近くにのぼっています。 ・高齢者相談センター等での高齢者サービスに関わる相談は、多様化しています。 要介護認定者数が増加を続けており、今後も高齢化が進行していくことを考慮すると、身体の状態にあわせた適度な運動等を行ったり、地域活動に参加したりする機会を増やすなど、健康寿命の延伸につながる取組や、在宅生活を支える各種のサービスの充実など住み慣れた地域で暮らせる仕組みづくりが求められます。 (6)障害者の生活と福祉〜障害者数の増加に伴い相談など支援のニーズも増加〜 ・区内の平成25年度の障害者手帳所持者は、28,793人です。このうち身体障害者手帳所持者は19,794人、知的障害者対象の愛の手帳所持者は4,228人、精神障害者保健福祉手帳所持者は4,771人です。平成21年度以降、いずれの手帳所持者も増加しています。 ・平成25年4月から、障害者総合支援法に定める障害児者の対象に難病患者が加わりました。難病医療費の助成者数は増加しています。難病患者の中には、既に身体障害者手帳を所持し、障害福祉サービスを利用している方も多くいます。精神疾患を理由として通院している方の医療費助成制度「自立支援医療(精神通院)」受給者数も年々増加しています。 ・平成24年4月の障害者自立支援法(当時)の改正により、障害福祉サービスの利用にあたっては、「サービス等利用計画」を作成することが義務付けられました。しかし、「計画相談支援」事業所が作成した計画は、区に提出される計画の半数程度にとどまっています。 ・障害者数の増加に伴い、一般就労をめざす障害者の増加も見込まれます。特に、精神障害者については、25%が「働きたい」という高い就労意向をもっています。 ・障害者のグループホームの整備は年々進んでいますが、重度障害者対応のグループホームは未整備です。 障害者が住み慣れた地域で暮らし続けることができるよう、個々の障害者の状況に応じた相談支援の体制強化や、就労意向をもつ障害者の支援の充実、地域で暮らし続けるためのグループホームの整備などを進めることが求められています。 (7)地域医療体制〜人口あたりの病床数が少なく、医療提供体制の充実が必要〜 ・区内の一般・療養病床のある病院数はこの10年で2病院減少し、平成26年10月時点で17病院であり、病床数は概ね横ばいの2,006病床となっています。 ・人口10万人あたりの一般・療養病床数は、23区で最も少ない281床であり、23区平均の約3分の1となっています。 ・入院を必要とする区民の約7割は区外の病院に入院し、救急患者の約6割は区外へ搬送されています。区内医療機関での出産割合は約3割です。(平成25年) ・医療機関の受診状況をみると、「高齢者一般」の区民で月1回以上受診する人は8割近くにのぼります。また、「これから高齢期」の区民も、月1回以上受診する人が7割近くになっています。 ・一般・療養病床数は、二次保健医療圏とよばれる複数区のブロック単位で管理する仕組みとなっています。練馬区は豊島区、北区、板橋区とともに区西北部二次保健医療圏を構成しており、医療圏内全体では病床数が概ね充足されているため、新たな病床を確保することが難しい状況です。 人口あたりの病床数が少なく、医療提供体制を充実させる必要があります。将来、高齢化が進むにつれ医療機関を受診する人や回数の増加が見込まれ、それに伴って医療提供体制の充実に対するニーズがさらに高まることが予想されます。区民が住み慣れた地域や自宅で安心して生活できるよう在宅療養を推進し、医療・介護関係者のネットワークを構築、充実させる必要があります。また、地域周産期母子医療センターの整備も含めて周産期医療の充実が求められます。小児救急医療においては、小児救急入院患者を受け入れる病床の確保を始めとした体制の充実が必要です。 (8)地域のつながり〜多様化・複雑化する地域課題にこたえる地域づくり〜 ・平成25年度区民意識意向調査では、「近隣とのかかわりを持てていない」と答えた方のうち、56.9%が「近隣とのかかわりが必要だが、わずらわしいため、あまり深く関わりたくない」と回答しています。また、「地域福祉を推進するための取組」の第1位が「災害時要援護者への支援体制の強化」(約40%)となっています。 ・災害時に自力での避難が困難な高齢者・障害者に対し、災害時要援護者名簿への勧奨を行ってきました。平成26年10月時点で名簿登録者数は25,833名となっています。その名簿を避難拠点(区立小中学校99校)に配備し、災害時には、民生・児童委員や区民防災組織等の協力により要援護者への安否確認を行う仕組みを構築しました。 ・避難拠点における集団生活等が困難な方のための避難所として区内37か所の高齢者・障害者福祉施設等を福祉避難所に指定し、形態食・発電機等の備蓄物品を配備しました。 高齢者や障害者など、だれもが住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう、平常時から地域でゆるやかに見守る輪を広げ、見守り活動のすそ野を広げる必要があります。また、災害時に要援護者に対する安否確認等、助け合える支援体制を強化する必要があります。 1−4まちづくり (9)都市特性・交通環境〜区全体としては都心などへのアクセスも飛躍的に向上したが、地域により課題も〜 ・区内には、西武池袋線・豊島線・新宿線、東武東上線、東京メトロ有楽町線・副都心線、西武有楽町線、都営地下鉄大江戸線が運行し、都心などにアクセスする主要な公共交通機関になっています。区北西部には、最寄りの駅まで1キロメートル以上離れ、都心などへアクセスするには交通の不便な鉄道空白地域があります。 ・区内の都市計画道路の整備率は約49.9%であり、23区平均の約63.8%を下回っています。特に西部地域の整備率は約29.0%と低くなっています。 ・区内には、踏切が33か所あります。その中には遮断時間が長い踏切もあり、日常生活の移動の負担になっています。 近年は、交通網の充実により、区全体としては都心などへのアクセスも飛躍的に向上しました。しかし、地域によっては、鉄道空白地域の存在、道路整備の遅れによる交通渋滞、鉄道と道路が交差する踏切等の課題があります。都営地下鉄大江戸線の延伸や都市計画道路などインフラの整備を着実に進めることが必要です。 ・現在、区内および隣接の23駅のうち交通広場が整備されている駅は、練馬駅、光が丘駅、練馬高野台駅、石神井公園駅、大泉学園駅、保谷駅、成増駅の7駅です。 駅は、都心などへ向かう多くの通勤者、通学者に利用され、駅周辺は日常生活を支える拠点になっています。拠点には、便利で賑わいのある商業環境など、生活・文化の中心としての機能のほか、交通広場やアクセス道路を備えた交通拠点機能の向上が必要です。 (10)地域防災〜首都直下地震や都市型水害等に対し、まちの安全性や区民意識の向上が不可欠〜 ・東京都が想定した首都直下地震の被害想定において、多くの建物が倒壊・焼失し、帰宅困難者、負傷者がそれぞれ約10万人、約5,000人程度発生すると見込まれているなど、災害時には、大きな被害が出ることが懸念されます。 ・ほとんどの区民が大地震に対して不安感を抱いていますが、自主的な防災訓練に参加経験のある人は少なく、訓練が行われているかどうかを知らない人も多くいるなど、自ら大地震に向けた対策を十分にとっている人は少ない状況がうかがえます。 ・近年、1時間あたり50mmを超えるような短時間で集中的に降る豪雨が増加しています。積乱雲の急速な発達によって生じる突発的な雷雨性の豪雨は、平成2〜11年の間が27回だったのに対し、平成12年〜21年の間には52回とほぼ2倍に増加しており、床上浸水等の被害も発生しています。区が作成している「浸水ハザードマップ」について、7割の区民が知らない状況です。区内の河川沿い等で東京都による河川改修が行われています。 ・区立施設は計画的に耐震化していますが、民間建築物の耐震化は7〜8割程度にとどまっています。東京都の耐震改修促進計画において、区内の7路線の幹線道路が、特に沿道建築物の耐震化を図る必要がある「特定緊急輸送道路」に指定されました。特定緊急輸送道路沿道の対象建築物は101棟あり、耐震化を働きかけています。 ・区内の木造住宅密集地域の中で、練馬地区では改善を終え、江古田北部、北町、貫井・富士見台の3地区において密集住宅市街地整備促進事業を実施しています。 近い将来発生が懸念される首都直下地震に対して、多くの区民が不安を抱いています。加えて、集中豪雨などの自然災害が近年頻発し、区民生活に大きな影響を及ぼすことが懸念されています。建築物の耐震化や不燃化、水害対策の強化、木造住宅密集地域の改善といったハードの対策とともに、より一層、区民意識の向上を図るソフト面での取組が必要です。 (11)区内のエネルギー消費〜住宅都市にふさわしい自立分散型エネルギー社会へ〜 ・区内のエネルギー消費量は全体としては漸減傾向にあります。しかし、部門別に見ると、民生部門(家庭部門・業務部門)が約7割を占めており、その割合は増加しています。 ・再生可能エネルギーの設備容量の合計は約18,000kW(すべてが太陽光発電)です。1年間で得られる発電量は約2,000万kWhです。これは区内の年間電力消費量(約25億kWh)の1%にも満たない程度です。 ・日常生活において、電気やガスのムダづかいに気をつけるなどの身近な対策は既に多くの区民が実践しています。 住宅都市としての特性を活かしながら、災害時などのエネルギーセキュリティの確保と 自立分散型エネルギー社会の実現という視点にたって、エネルギー政策を展開することが 求められます。また、再生可能エネルギー機器の設置や省電力機器の優先的選択、マイカー利用の抑制など、環境配慮の取組について啓発や誘導策が必要です。 1−5まちの魅力 (12)産業特性〜区民の暮らしを支える商業やサービス業、医療・福祉業、建設業が発達〜 ・平成24年の経済センサスでは、事業所数は20,194事業所、従業者数は167,060人となっています。平成18年の事業所・企業統計調査からの推移を見ると、事業所数は平成18年の21,499事業所から1,305事業所、従業者数は170,340人から3,280人減少しています。 ・産業別構成では、卸売・小売業(23.6%)、建設業(11.9%)、宿泊業・飲食サービス業(11.1%)、不動産業・物品賃貸業(10.0%)、生活関連サービス業・娯楽業(9.4%)、医療・福祉業(9.3%)を合わせると全体の75.3%となり、区民の日常生活に関連した産業が過半数を占めています。 ・区内事業所が減少する中、医療・福祉については、事業所数、従業員数ともに微増しています。 ・区の従業者数規模別事業所数をみると、従業者数が20人未満の事業所が全体の91.4%を占めており、小規模事業所が多くなっています。 ・日本全国のアニメ制作会社数は419社で、そのうち区内には79社が集積しています。日本で最も多くの企業が立地しており、アニメ産業は区の特徴的な産業となっています。 ・約6割の区民が、区が商業アニメの発祥の地であることを認知しています。また、区にアニメ企業が多く集積していることの認知は26.0%と低くなっていますが、平成21年の調査16.7%から約10ポイント増加しており、区民の認知が高まりつつあることがうかがえます。 ・「平成25年度練馬区ものづくり産業等実態調査」によると、事業推進上の課題について、業種にかかわらず、「取引先や販路の開拓」が主な課題となっています。次いで、「人材の確保・育成」が課題となっています。 区内の事業所は、卸売業・小売業が最も多く、次いで建設業、宿泊業・飲食サービス業、医療・福祉等の生活に関連する産業が多くなっています。また、アニメ産業は全国で最も多くの企業が立地しています。住宅都市であり、小規模事業所が多いという区の特性を踏まえ、生活関連などの販路の拡大や創業支援等の事業活動の支援策が求められています。 (13)商店街の状況〜100を超える商店街が区民の生活を支える〜 ・平成20年度に113商店会(会員数5,195人)あった区内商店会数が、平成25年度は107商店会(会員数4,423人)に減少しています。 ・区内には200店舗を超える空き店舗があります。 ・実態調査によると、個店の後継者問題、商店街の人材不足、未加入店舗の増加など商店街の課題が浮き彫りとなっています。また、消費者の商店街への満足度は4割程度に留まっています。 消費者ニーズの多様化、後継者不足、大型小売店・コンビニの進出など社会状況の変化により、商店街を取り巻く環境は厳しい状況となっています。商店街は、地域経済の中心として、まちの活性化を図るため、顧客を確保する新たな魅力づくりを進める必要があります。空き店舗の存在は、商店街自体の魅力や集客力の低下を招くため、空き店舗を活用したさらなる取組も求められます。 (14)練馬の農業〜23区で最大の農地面積を有するが今後も農家や農地の減少が懸念される〜 ・区は23区で最も広い農地面積を有していますが、農家戸数と農業従事者数は減少傾向にあり、平成20年から平成25年にかけてそれぞれ535戸、1,159人から、480戸、1,014人へと減少しています。農地面積も減少しており、約20年の間で半分程度に減少しています。 ・農地には、農産物の供給だけでなく防災空間の確保、環境保全など多様な役割がありますが、相続時の税負担や、後継者問題などから、今後も農地が減少していくことが懸念されます。 ・出荷先をみると、「自宅販売・無人販売」が4割程度で最も多く、市場や共同直売所等に出荷しているのは合わせて4割程度になっています。また、農業体験農園や観光農園等の都市農業の魅力を活かした経営が展開されています。 ・区民の練馬産農産物の認知度や購入経験をみると、「知っており、購入したこともある」人が6割を超えています。また、区民の農地の保全に対する意識も高く、都市農業の重要性が広く認知されていることがうかがえます。 都心近くにありながら広大な農地を有し農の豊かさを感じられる都市であるというのは、区の大きな特徴です。区民の区内産農産物に対する認知度や購入意向なども高く、農業に求められる役割は今後一層高まっていくと見込まれます。しかし、農家や農地の減少が続いており、農業の衰退が懸念されています。 (15)豊かなみどり〜みどり豊かな住宅都市だが、減少の懸念も〜 ・練馬区の魅力は、みどりの豊かさと大都市の利便性が両立しているところです。区の緑被率は、25.4%で(平成23年度現在)23区で最も高く、「みどりの保全と創造」に関する施策に対する区民の満足度も高くなっています。 ・地域別にみると、練馬や豊玉、春日町など区の東部より、光が丘や大泉、石神井など区の中央部や西部の方が緑被率は高くなっています。今後、東京都により練馬城址公園などの整備が計画されているなど、公園面積は増加していくことが見込まれていますが、区内のみどりの78%を占める農地や樹林地など、民有地に存在するみどりの減少が懸念されます。 23区で最も高い緑被率を誇るみどりの豊かさは区のシンボルでもあり、区民の満足度も高くなっています。しかし、農地や樹林地などのみどりの減少が懸念されています。みどりは防災・環境・景観・レクリエーションなどの機能を担っており、快適な都市生活を送るうえで、欠くことのできない存在であるという認識に立ち、現在に受け継がれた貴重なみどりを守り、さらに増やし、将来へつなぐことが望まれています。 (16)学びや文化活動、スポーツ等〜参加しやすい生涯学習や文化芸術、スポーツ環境に対する高い区民ニーズ〜 ・区では、区立施設を通じて様々な学びや芸術等に触れる機会を提供しています。利用状況をみると、生涯学習センターと光が丘区民センターで利用人数に若干減少傾向がみられますが、その他の施設は同程度となっています。美術館は、観覧人員が平成20年度の93,591人から一時減少しましたが、その後、同程度まで増加しています。また、図書館は、貸出件数が平成20年度と平成24年度を比較すると54万冊強増加しています。 ・スポーツを行っている区民は増加傾向にあり、週に1回以上スポーツを行っている成人区民は55.0%(平成25年度)で、平成18年度時点の46.2%から8ポイント以上増加しています。運動やスポーツへの目的や期待については、「健康や体力の維持増進」が86.3%、「気分転換・気晴らし」が61.2%などとなっています。 ・生涯学習の内容は、「健康・スポーツに関すること」や「趣味的なこと」が多い一方、「何もしていない」も多くなっています。また、身に着けた知識や技能の活用法としては、自身の生活や健康等に活かす人が多く、地域づくりやボランティア活動等に活かしている人は少なくなっています。 多くの区民が生涯学習や文化芸術活動、スポーツに参加しています。区民が自らのライフスタイル等にあわせて参加できる多様な場づくりが求められます。 1−6 行政運営 (17)行政改革の状況〜財政健全化の取組が進む一方、行政需要の拡大が見込まれることから、厳しい環境が今後も続く〜 【これまでの行政改革の取組】 ・区内有識者からなる「行政改革推進懇談会」の提言を踏まえて「行政改革実施計画(平成9年度〜11年度)」を策定し、徹底した経費の削減を主眼とした第1次行政改革に取り組み、約100億円の財政効果がありました。 ・「第2次行政改革実施計画(平成12年度〜14年度)」では、行政の一層の体質改善を図り、約45億円の財政効果がありました。 ・「新行政改革プラン(平成16年度〜18年度)」では、区と区民・地域団体等との連携や行政分野の民間開放を推進することにより、持続可能な公共経営システムの確立をめざして取組を進め、約117億円の財政効果がありました。 ・平成19年10月策定の「行政改革推進プラン(平成19年度〜22年度)」、23年12月策定の「行政改革推進プラン(平成23年度〜26年度)」では、委託・民営化などに積極的に取り組み、それぞれ約61億円、約17億円(平成25年度まで)の財政効果がありました。 区立施設の委託・民営化や職員数の削減等の取組により、人件費や施設運営費等の財政効果を上げていますが、生活保護や保育所関連費といった扶助費の増加など、厳しい財政状況が続いています。今後も、行政需要は増大し、かつ多様化していくことが見込まれるため、一層の努力が求められます。 【職員数と人件費の推移】 ・職員数は平成9年度から26年度(4月1日)までに約1,500人を削減し、人件費は平成12年度から25年度までに約104億円減少しています。 【普通会計決算の構成比の推移】 ・職員数削減により人件費が減少する一方で、生活保護や保育所関連費などの扶助費が増加しています。 ・ここでは、普通会計決算における平成20年度と平成25年度の構成比を比較します。人件費は23.2%から18.7%に4.5ポイント減少している一方、扶助費は23.0%から33.1%に10.1ポイント増加しています。また、委託・民営化の推進により、物件費は13.7%から15.0%に1.3ポイント増加しています。 ・区立施設の老朽化対策や増加を続ける扶助費など、財政を逼迫させる要因もあり、財政状況の改善に向けた努力が必要です。 注釈)普通会計は地方公共団体相互間の比較が可能となるように、総務省の定める基準により、一般会計と特別会計を合算して重複額等を控除したものです。 【平成25年度 一般会計決算の状況】 ・平成25年度の一般会計は、歳入決算額が2,318億819万円、歳出決算額が2,270億567万円で、差し引きの収支は48億252万円でした。ここから26年度に繰り越すべき財源4億9,207万円を差し引くと、実質的な収支は43億1,045万円で、前年度比5億5,901万円の減となりました。 歳入 ・歳入決算額は、前年度比1.1%、25億3,616万円の増でした。 ・主な増減は、特別区財政調整交付金が37億5,418万円の増、特別区税が11億6,702万円の増、国庫支出金が9億9,227万円の増、繰入金(グラフでは「その他」に計上)が41億9,409万円の減などです。 歳出 ・歳出決算額は、前年度比1.4%、32億1,659万円の増でした。 ・目的別では、前年度に比べて産業経済費、公債費、総務費などが増となり、諸支出金(グラフでは「その他」に計上)、都市整備費などが減となりました。 【財政指標の推移】 ・経常収支比率は、経常的な一般財源(特別区財政調整交付金や特別区税)が、人件費や扶助費などにどの程度充てられているかを測定する指標です。財政の弾力性を示すもので、70〜80%が適正とされます。練馬区は、平成21年度から5年間連続して適正水準を上回っています。 【特別区債残高および基金現在高の推移】 ・特別区債残高:区の借金に相当するもので、ここ数年は減少しています。 ・基金現在高:区の貯金に相当するもので、ここ数年は600億円前後で推移しています。 【収納率の推移】 ・保育料や住民税などは、数年来の取組により高い値で推移しています。 ・軽自動車税や国民健康保険料も取組の結果、概ね順調に成果を上げていますが、引き続き取組が必要です。 【区の外郭団体】 ・区の出資割合が1/2以上の法人または区から運営補助を受け、その事業内容が区の代行補完関係にあり、区と極めて密接な関係を有する団体です。平成26年11月現在で、11団体あります。 2区民意識意向調査における施策への要望 平成25年度練馬区区民意識意向調査結果を基準にして、4年ごとの区民の施策要望の変化を見ると、「高齢者福祉」、「防犯・防火・防災」、「交通安全対策」などが高く、平成25年度調査では、22年度調査から新たな項目として追加した「医療体制の確立」が最も施策要望が高く、8年前に最も要望が強かった「防犯・防火・防災」や4年前の「高齢者福祉」を上回っていました。 地区ごとの施策要望を見ると、練馬地区は「高齢者福祉」への要望が最も高く、「災害に強く生活しやすいまちづくり」への要望が高いという特徴があります。石神井地区は「交通安全対策」が他地区より高くなっています。大泉地区は「子育て支援」が他地区より高くなっています。光が丘地区は他地区より特に「医療体制の確立」が高く、次いで「高齢者福祉」が高くなっています。 同様に性別・年代別で見ると「高齢者福祉」は年代が高い世代、「子育て支援」は30代、40代の女性など、特に要望の強い層があります。 (裏表紙) みどりの風吹くまちビジョン〜 新しい成熟都市・練馬をめざして 〜  平成27(2015)年3月 発行 練馬区 企画部 企画課 住所 〒176-8501 練馬区豊玉北6-12-1 練馬区役所 本庁舎6階 電話 (03)3993-1111(代表) FAX (03)3993-1195 練馬区ホームページ http://www.city.nerima.tokyo.jp