表紙 これからの図書館構想 令和4年(2022年)11月 練馬区教育委員会 目次 はじめに 練馬区立図書館のあゆみ 2ページ 第1章 構想策定の趣旨   1 策定の背景 4ページ  2 位置付け 6ページ  3 体系図 6ページ 第2章 これからの練馬区立図書館  1 理念 8ページ  2 目指す将来像 9ページ 第3章 新たな図書館づくりに向けたコンセプト  構想の4つのコンセプト 11ページ  コンセプト1 世界の知と出会い、学びを豊かにする 12ページ  コンセプト2 練馬の文化を継承・発信する 14ページ  コンセプト3 知が交わり、創造を生み出す 16ページ  コンセプト4 情報へのアクセスを支援する 18ページ 第4章 構想の実現に向けて  実現に向けた進めかた 21ページ 1ページ、2ページ  はじめに  「練馬区立図書館の歩み」  図書館は、住民一人ひとりが豊かな人生を送れるよう、暮らしに役立つ情報や、生涯を通じた学びを支える情報な ど様々な情報を発信し、地域における情報拠点としての役割を果たしてきました。  練馬区では、昭和37年の練馬図書館の開館以来、各地域に図書館の設置を進め、平成21年の南田中図書館の開館に より、現在の12館1分室の体制となりました。また、区民の利便性の更なる向上のために受取窓口6か所を設置した ことで、区内19か所で本が受け取れる体制が整いました 練馬区立図書館は、他区に先駆け平成6年から開始した本のリサイクル市をはじめ、季節や時事に合わせたテーマの 資料展示、講座や講演会のテーマと連動した関連資料の展示、子どもへのよみきかせ、障害のある方への点字資料等 の郵送貸出し、子育て支援施設や高齢者施設等への出張おはなし会、学校図書館との連携事業など多彩な事業を通じ、 区民の読書活動の推進とサービスの向上に努めてきました。また、読書活動に関わる様々な区民との協働により、 ブックスタート事業、対面朗読サービス、デイジー図書(デジタル録音図書)や布の絵本の制作などにも取り組んで きました。  平成25年度からは、「練馬区立図書館ビジョン〜これからの図書館サービスのあり方〜」を策定し、一層のサービ スの充実に取り組んでいます 5ページ、6ページ  第1章 構想策定の趣旨  1 策定の背景 《みどりに恵まれた良好な環境の中で誰もが暮らしを楽しむ成熟都市を目指して》 練馬区は、都心に近い利便性と多様なみどりに包まれた住環境が両立しているところが特色です。とりわけ、農と共 存した暮らしを楽しめることは、区の大きな魅力となっています。また、区内には、区立美術館や練馬文化センター、 芸術系大学があり、著名な文化人も多く居住しています。こうした区の特性から、都市農業では「世界都市農業サミット」 や「練馬大根引っこ抜き競技大会」、文化芸術では「真夏の音楽会」「みどりの風 練馬薪能」など、様々な都市文化の 発信とともに、区民による多彩な文化活動も盛んに行われています。  区は、平成30年6月にグランドデザイン構想を策定し、目指す30年後のまちの将来像として「みどりに恵まれた良好な 環境の中で誰もが暮らしを楽しむ成熟都市」を示しました。その実現に向けた区の新たな総合計画(地方版総合戦略)として 「第2次みどりの風吹くまちビジョン」を策定しています。  具体的な実行計画であるアクションプランに掲げる「みどりの中で優れた文化芸術を楽しめるまち」を実現するための取組 の一つとして、地域における情報拠点としての図書館のあり方を検討してきました。検討の過程では、学識経験者等から、こ れまでの取組への一定の評価に加え、学習ニーズの多様化や地域活動への参加意欲の高まりなど、社会情勢の変化を踏まえた 新たな図書館機能を求める意見をいただきました。図書館には、基本的機能である読書活動支援を土台としながらも、関係部署 や地域団体等と連携し多様な情報を提供することにより、区民の学習活動を支え、地域の課題解決や振興を図ることが求めら ています。  これからの図書館は、こうした検討を踏まえ、グランドデザイン構想が描くまちの将来像の実現に向け、区民の暮らしに 役立ち、地域社会の文化や生涯学習を支えていく知の基盤となる情報拠点を目指します。 2 位置付け  本構想は、練馬区の30年後の目指すべき将来像を示した「グランドデザイン構想」、教育・子育て分野の施策の方向性等を示した 「練馬区教育・子育て大綱」をはじめ、区の様々な計画、構想と関連するものです。  これからの図書館の理念やおおむね10年後の将来像、その実現に向けたコンセプトを示します。 3 体系図 ※本構想の体系図を記載 7ページから9ページ 第2章 これからの練馬区立図書館 1 理念 《世界とつながる 彩り豊かな 知の情報拠点》 グランドデザイン構想が描く「みどりに恵まれた良好な環境の中で誰もが暮らしを楽しむ成熟都市」ねりまの実現に向け、地域にある 図書館が、世界につながる情報や練馬の文化の魅力を発信し、区民の知的探究心に応え、人や地域のつながりを生み出すことにより、 地域社会の知の基盤となる情報拠点を目指します。 2 目指す将来像  図書館のおおむね10年後の将来像のイメージをつぎのとおり描きます。 1、世界の情報、知識を届ける  多様な情報、知識を収集し区民に届け、生涯を通じた学びを深める 2、練馬の文化を次世代に繋げ、発信する  「みどり」「都市農業」「映像文化」などの練馬の文化を次世代に継承し、発信する 3、交流が生まれ、新たな知が創造される  幅広い年代の人々が集まり、地域の課題解決や活動につながる 4、デジタルを活用し、誰もが情報を得られる  誰もが情報にアクセルできる環境が整い、信頼性の高い情報を得られる 以上の4つの将来像を実現し、知を集積し、発信することで、地域社会の知の基盤となり、グランドデザイン構想が描く成熟都市ねりまの実現の一翼を担います   10ページから19ページ 第3章 新たな図書館づくりに向けたコンセプト 「構想の4つのコンセプト」 将来像の実現に向け、以下の4つのコンセプトを掲げます。  練馬区立図書館ビジョンに基づく取組を充実させながら、これらのコンセプトに基づく取組を進めることで、「世界につながる 彩り豊かな 知の情報拠点」 として、新たな図書館の将来像の実現を目指します。 《コンセプト1》  世界の知と出会い、学びを豊かにする  方向性1 知的探究を深める情報の充実  方向性2 多様な学びの機会の提供  方向性3 知識と人を繋げるアウトリーチの強化 《コンセプト2》 練馬の文化を継承・発信する  方向性1 「地域ならでは」の継承・発信  方向性2 「練馬の文化」の魅力の発信 《コンセプト3》 知が交わり、創造を生み出す  方向性1 人と人、人と地域のつながりの創出  方向性2 多様なニーズに応えた空間の創出 《コンセプト4》 情報へのアクセスを支援する  方向性1 デジタルを活用したサービスの提供  方向性2 デジタル利活用の支援  方向性3 情報リテラシーの普及 以上のコンセプトを踏まえ、将来像を実現します。 12ページから19ページ コンセプトごとの内容と取組例を記載しています。 12.13ページ  コンセプト1 「世界の知と出会い、学びを豊かにする」  生涯を通じ区民の誰もが主体的に学びを継続し、暮らしの中で直面する課題の解決の糸口を見つけられる環境が必要です。 身近にある各図書館が、地域特性を生かし、各館の魅力を磨くことにより、多様な情報を区民に届け、生涯を通じた学びの機会を提供します。 方向性1 知的探究心を深める情報の充実  区民が知的探究心を深め、新たな発見が得られるよう、各館が特色を強化し、魅力ある情報を発信していきます。また、世界の情報にアクセスできる 環境の整備や専門的な情報を有する機関とのネットワークを構築することにより、多様な情報を集積し、提供します。 取組例 @ 地域特性を生かした各館の魅力あるコレクションの充実 A オンラインデータベースやデジタルアーカイブの利用環境の整備 B 男女共同参画センターや石神井公園ふるさと文化館、美術館など区立施設の所有する図書等の情報共有   以下、用語解説 ※デジタルアーカイブ  有形無形の文化資源などをデジタル情報として保存し、データを公開する  ことで、多くの人がインターネット上で共有・利用できる仕組みのこと 方向性2 多様な学びの機会の創出  国内の専門施設や大学等と連携して学術分野に関する最新の研究等に触れられる機会を創出し、新たな視点、考え方との出会いを提供します。 また、関係部署や地域団体等と連携して多様な講座やイベントを実施し、区民の学びや暮らしの中で直面する課題の解決を支援します。 取組例 @ 専門家を招へいした講演会やワークショップの実施 A 芸術などの教養に関する講座や、子育てなどの生活上の課題に関するイベントの実施 方向性3 知識と人を繋げるアウトリーチの強化  図書と人を結び付け、より多くの区民に知識を届けるため、図書館から区民へのアウトリーチを強化し、まちのいたるところに読書体験の機会を創出します。 また、図書館をより多くの人に利用してもらうため、図書館の取組に関する情報を発信します。 取組例 @ 商店街等と連携したまちライブラリーの実施 A 学校、子育て支援施設、福祉施設や、地域のイベントなどへの出張講座の実施 B 企画展や事業の成果などのSNS等を活用した発信 14ページ、15ページ コンセプト2 「練馬の文化を継承・発信する」  地域の文化を継承し、次世代につなげていくことは図書館の重要な役割の一つです。  その地域にしかない文化や地域資源に関わる情報、練馬の豊かな都市文化の魅力を収集・保存し、インターネットを活用して世界中のどこからでも見られるように 発信していき、地域の魅力の再発見や地域への愛着を育みます。 方向性1 「地域ならでは」の継承・発信  それぞれの地域の歴史や文化を継承し、次世代に伝えていくことが重要です。  地域の歩みをたどれる資料は、その多くが市場には流通しておらず、災害や経年など、様々な要因で滅失、毀損してしまいます。また、当時を知る方も、時代の経過 とともに少なくなってきます。  その地域の歩みをたどれる貴重な記録を区民と協働して収集、整理し、保存を進めるとともに、これらを利活用し、発信することで、地域の歴史や文化を次世代につなげ、 地域の魅力を再発見できるようにしていきます。 取組例 @ 地域の記録の収集と利活用の促進 A 図書館の地域資料等を活用し地域の史跡などを調べるフィールドワークの実施と、成果の発信 B 地域の歴史や文化を伝える展示やイベントの実施 方向性2 「練馬の文化」の魅力の発信  区内には、美術館をはじめ、様々な文化・芸術に関連する施設があり、区民による多彩な文化活動が盛んです。 「みどり」「都市農業」「映像文化」などの練馬の文化に区民が身近に触れ、楽しめるよう、関係部署と連携した取組を実施していきます。また、練馬の文化に関連する活動 の記録を収集、保存し、活用することで、練馬の魅力を発信していきます。 取組例 @ 音楽、伝統芸能、農業振興などのイベントや映像文化事業などに合わせた企画展や事業の実施と、これらの活動の成果等の蓄積と発信 16ページ、17ページ コンセプト3「知が交わり、創造を生み出す」  図書館は、静かに本を読む人、絵本を探す親子、友達と会話を楽しむ学生など、幅広い年代の人々が気軽に立ち寄れる施設です。 個人での読書や調査研究にとどまらず、図書館の多様な情報と場をきっかけに、区民同士の交流を生み出し、地域の課題の解決や新たな活動に繋げます 方向性1 人と人、人と地域のつながりの創出 地域にとって身近な施設である図書館が、地域活動の拠点としての一翼を担います。図書館の情報と場を活用して、地域活動の発表の場や、地域の課題等について話し合い、 考える場を提供することにより、区民同士の交流や学び合いを生み、地域の課題の解決や新たな活動に繋げます。 取組例 @ 関係部署と連携し、地域で活動する団体とその地域の区?や団体がつながれる場の提供 A 共通の関心(子育て、健康、防災等)について意見交換できる交流の場の提供 B 地域資源の再発見や課題解決に繋がるイベントの実施 以下、用語解説 ※練馬つながるフェスタ パネル展やワークショップなどを通して、町会・自治会をはじめ、NPOやボランティア団体など地域で活動している団体の日頃の取組を知り、団体とつながることができる イベントのこと 方向性2 多様なニーズに応える空間の創出  近年、利用者ニーズの多様化により、静かに本を読むための「静」の空間と、会話を楽しんだり、共に学ぶための「動」の空間をすみ分けた図書館が多く誕生しています。 今後、幅広い利用者ニーズに応えられるよう、空間の整備や、空間の使い方の工夫をしていきます。 取組例  @ 改修に伴う、静と動の空間の整備 A ゆとりある空間の創出に向けた、蔵書の見直しや共同書庫の導入 B 会話などを楽しめる時間帯(おしゃべりタイム)やスペースの提供 18ページ、19ページ コンセプト4 「情報へのアクセスを支援する」  インターネットで様々な情報を得られるようになった現在、膨大な情報を体系化し、信頼性の高い情報を提供することがますます重要になっています。  図書館は、デジタルの活用により情報を蓄積し、障害の有無に関わらず、誰もが情報にアクセスできるよう支援するとともに、デジタルデバイドの解消に向けたサービスを提供します。 方向性1 デジタルを活用したサービスの提供  新型コロナウイルス感染症の拡大により、開架図書の貸出など図書館サービスの一部を休止することとなり、従来の図書館サービスの課題が顕在化しました。 非来館型サービスを進めることは、感染症対策のみならず、時間的・空間的な制約等から利用が難しかった区民の利用促進に繋がります。デジタルを活用することで、 より多くの方々が気軽に、簡単に情報を得られる環境を整備します。 取組例 @ 電子書籍や事業のオンライン配信など、非対面サービスの導入 A 音声読み上げや文字サイズ変更など、障害者サービスの拡充 B 貸出、返却などの館内サービスのセルフ化 方向性2 デジタルの利活用を支援 デジタル機器を持たない人、操作が不得意な人を支援し、区民がデジタルの活用に関する基本的な知識を身に付け、情報へアクセスできるようになることを目指します。 スマートフォンの操作方法などを相談できる、デジタルの利活用を支援する拠点の一翼を担います。 取組例 @ タブレットやパソコンなどデジタル機器に気軽に触れられる環境の提供 A 関係部署等と連携したスマホ講習会等の実施 方向性3 情報リテラシーの普及 誰もが容易に情報にアクセスできるようになった一方、大量の情報から必要な情報を取捨選択し、フェイクニュース(※)など事実ではない情報から自身を守ることが重要です。 身近に溢れる様々な情報を多角的な視点から解釈し、活用するための基本的な能力を身に着けられるよう支援します。正しく解釈 取組例 @ 情報リテラシー講座の実施 A オンラインデータベースやレファレンスの活用方法に関する講習会等の実施 以下、用語解説 ※1 情報リテラシー  情報を取捨選択し、活用するための能力 ※2 フェイクニュース  事実ではない、虚偽・デタラメな内容の情報のこと 20ページ、21ページ  第4章 構想の実現に向けて  「実現に向けた進め方」  図書館が知の情報拠点としての役割を果たすには、関係部署との連携と様々な活動を行う区民との協働が不可欠です。  構想の実現に向けて、関係部署や地域団体と協議を進め、検討体制や実施スケジュールをつくっていきます。また、4つのコンセプトに基づく取組を着実に実施し、 毎年の利用者アンケート等により取組の評価を行い、見直しや改善を図ります。  構想を図書館にどのように反映し実現していくのか、再整備を行う貫井図書館を一例として、つぎのページにイメージを示します。 22ページ、23ページ 「図書館構想の実現イメージ 貫井図書館」. 貫井図書館は、併設する美術館と一体的に再整備を行います。練馬区立美術館再整備基本構想で示す美術館との機能的・空間的な融合を図りながら、4つのコンセプトに基づく取組 を進め、構想を実現します。 ● コンセプトごとの実現イメージ コンセプト1 「世界の知と出会い、学びを豊かにする」 取組例 @ 美術館の企画展に合わせたテーマ配架 A 美術館が保有する蔵書を合わせた管理と閲覧 コンセプト2 「練馬の文化を継承・発信する」 取組例 @ 貫井周辺の地域資料収集およびデジタル化 A 練馬の都市農業等の取組と連動した事業や企画展 コンセプト3 「知が交わり、創造を生み出す」 取組例 @ エントランスホール(美術館との共用部)、ブック・アート・キッズスペースの設置 A グループ学習などができるガラスで仕切られた空間 B 明るく開放感のあるゆとりをもった開架スペース コンセプト4 「情報へのアクセスを支援する」 取組例 @ ICタグの導入等による貸出・返却などの館内サービスのセルフ化 A 自由に使えるパソコン等の充実 B 映像モニターによる、デジタルアーカイブを活用したコレクションなどの情報発信 ● 以下、施設イメージ 1、エントランスホール(美術館との共有部) ・開架図書や美術作品がある、カフェを併設した開放的な融合空間 2、ブック・アート・キッズスペース ・自由にお絵描きや工作などができる、アート要素を追加した児童図書スペース ・音が漏れないよう配慮した「おはなしの部屋」 ・プロの絵本作家による体験イベント