練馬区感染症予防計画 令和6年(2024年)3月 練馬区 はじめに  令和元年12月初旬に中国の武漢市で新型コロナウイルス感染症の1例目の感染者が報告されてから、瞬く間に世界各地に広がりました。  その後、ウイルスは変異を繰り返しながら、感染拡大の波を繰り返し、区民の健康と生活を脅かしました。  区では、「感染拡大の防止と医療提供体制の充実」、「区民・事業者等への支援」、「社会インフラの確保」など緊急に取り組むべき対策を実行し、区民一人ひとりに寄り添ったきめ細やかな支援という、基礎的自治体の本来の任務に全力で取り組んできました。  なかでも、練馬区医師会の協力を得て、国と連携して構築した、新型コロナウイルスワクチン接種体制「練馬区モデル」は、厚生労働省により、先進事例として全国自治体に紹介されたことによって、多くの自治体で採用され、全国標準の接種体制となりました。  この他にも、自宅療養者への医療提供体制を強化するため、練馬区医師会や練馬区薬剤師会、都等と連携して「かかりつけ医等による自宅療養者への健康観察」、「症状が悪化した際の在宅療養支援」、「練馬区酸素・医療提供ステーションの開設」の「三つの柱」の取組を実施しました。  令和4年12月、新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえ、今後の感染症の発生およびまん延に備えるため、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」が改正されました。  法改正により、保健所設置区市、都道府県、医療機関等との連携を強化するため、これまでは都道府県において策定が義務付けられていた感染症予防計画について、保健所設置区市においても新たに策定することになりました。  区は、新型コロナウイルス感染症対応の課題を踏まえ、今後の感染症の発生およびまん延に備えることを目的に、練馬区感染症予防計画を策定しました。  本計画に基づき、今後とも、感染症から区民の健康と生活を守るため、都や国等と連携して感染症対策に着実に取り組んでいきます。  結びに、策定にあたり、ご協力いただいた「練馬区新型インフルエンザ等感染症対策ネットワーク会議」の皆様ならびに練馬区医師会、練馬区歯科医師会、練馬区薬剤師会をはじめとする関係団体、関係者の皆様に心から御礼申し上げます。 令和6年3月 目 次 第1章 基本的な考え方 第1 計画の位置付け 第2 基本方針  1 総合的な感染症対策の実施  2 感染症危機管理体制の強化  3 関係行政機関等との連携体制の強化  4 人権の尊重  5 感染症に関する知識の普及啓発と情報提供 第3 関係機関の役割および区民や医師等の責務  1 区および保健所の役割  2 区民の責務  3 医師等の責務  4 獣医師等の責務  5 医療関係団体の役割 第2章 感染症の発生予防およびまん延防止のための施策 第1 感染症の発生予防のための施策  1 感染症発生動向調査  2 感染症早期発見システムを活用した取組  3 動物衛生・食品衛生・環境衛生部門との連携体制  4 国内外における情報の収集および提供等  5 院内および施設内感染防止の徹底  6 予防接種施策の推進 第2 感染症発生時のまん延防止のための施策  1 検査体制  2 積極的疫学調査の実施等  3 防疫措置  4 関係部門と連携した対応 第3 医療提供体制の整備  1 医療機関ごとの役割  2 患者移送 第4 国・都および関係機関との連携協力の推進  1 国との連携協力  2 都等との連携協力  3 関係機関との連携協力 第5 調査研究の推進  1 調査研究  2 原因不明疾患などの調査等の実施 第6 感染症に関する知識の普及啓発と情報提供  1 正しい知識の普及啓発  2 感染症の発生動向等の情報提供 第7 保健所体制の強化  1 人員体制の確保等  2 デジタル技術の活用促進  3 保健所職員等の人材育成  4 実践型訓練の実施  5 地域の関係機関等との連携強化 第3章 新興感染症発生時の対応 第1 基本的な考え方  1 体制の確保 第2 保健所の対応  1 情報の収集・提供  2 積極的疫学調査の実施 第3 関係機関と連携した検査体制の構築 第4 医療提供体制の確保  1 入院医療  2 外来医療(発熱外来)  3 医療機関における個人防護具の備蓄  4 患者移送体制の確保 第5 自宅療養者等の療養環境の整備  1 自宅療養者等の健康観察および医療支援  2 自宅療養者等の療養環境の整備・生活支援 第6 高齢者施設をはじめとする福祉施設等への支援  1 感染症対策の取組支援  2 集中的検査の実施等  3 医療支援 第7 臨時の予防接種 第8 保健所の業務執行体制の確保  1 有事における対応体制の整備  2 人員体制の確保等  3 外部委託等 第4章 その他感染症の予防の推進に関する施策 第1 特に総合的に施策を推進すべき感染症対策等  1 結核対策 33  2 HIV/エイズ、性感染症対策  3 一類感染症等対策  4 蚊媒介感染症対策  5 麻しん・風しん対策 第2 その他の施策  1 感染症の後遺症対策  2 薬剤耐性(AMR)対策  3 災害時の対応  4 外国人への対応 ※ 本計画に記載の各種制度等は令和6年3月時点のものです。 第1章 基本的な考え方 第1 計画の位置付け  練馬区感染症予防計画(以下、「本計画」という。)は、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下、「感染症法」という。)に基づき、感染症の発生予防およびまん延防止等のための施策の方向性を示すものである(計画期間:令和6年度〜令和11年度)。  本計画は、グランドデザイン構想の実現に向けた、練馬区(以下、「区」という。)の総合計画「第3次みどりの風吹くまちビジョン」の健康・医療分野の個別計画である。また、他の関連計画とも整合を図るものとする。 第2 基本方針 1 総合的な感染症対策の実施  区は、本計画において、新たな感染症の出現や既知の感染症の発生およびまん延に備え、以下の方針に基づき、必要な対策を定めるものとする。  なお、本計画における新興感染症とは、感染症法で規定する新型インフルエンザ等感染症、指定感染症および新感染症(以下、「新興感染症」という。)を指すが、新興感染症の性状、感染性などを事前に想定することは困難であるため、まずは現に発生し、これまでの教訓を生かせる新型コロナウイルス感染症(令和5年5月8日から五類感染症に位置付けが変更になったものをいう。以下、「新型コロナ」という。)への対応を念頭に置くこととする。この想定を超える事態の場合は、国の判断の下、当該感染症の特性に合わせて東京都(以下、「都」という。)および関係機関と連携し、機動的な対応を行う。  (1) 事前対応型取組の推進  練馬区は、みどりの豊かさと大都市の利便性が両立する、人口74万人を擁する住宅都市である。世界有数の国際都市である東京は、海外から感染症が持ち込まれ、感染が拡大するリスクが高いが、区民は区の領域を超えて行動し、生活しており、都内における感染拡大は、時を置かずに区内における感染拡大につながることが予測される。区内には、多くの高齢者施設、学校や保育園などがあり、施設における感染拡大に一層の注意が必要である。  そうしたリスクに的確に対処していくため、必要に応じて「練馬区健康危機管理対策本部」を設置し、区民の生命、健康の安全を脅かす感染症等による健康被害の予防・拡大防止対応の検討等を行う。また、国内において患者の発生が認められた場合は、「練馬区危機管理対策本部」へ移行し、国が緊急事態宣言を発出した場合は、新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下、「特措法」という。)に基づく対策本部に移行して全庁的な対応を行い、危機管理体制を強化する。  加えて、新興感染症等の発生を見据えながら、区民一人ひとりの知識や意識を高めるための普及啓発、予防対策の徹底のほか、都と連携して、サーベイランス体制や防疫体制の強化、医療提供体制の整備、必要な医療資器材の備蓄など、感染症の発生や拡大に備えた事前対応型の取組を引き続き推進していく。    さらに、感染症が発生した場合であっても、患者の早期発見、感染源の調査等、迅速かつ的確な検査、防疫活動により、感染拡大およびまん延を防止するとともに、都や医療機関等と連携し、患者に適切な保健・医療サービスを提供する体制を確保する。  (2) 新型コロナ対応を踏まえた感染症対策の実施     ア 区における主な対応    (ア) ワクチン接種  新型コロナのワクチン接種に当たり、当初国からは、集団接種を主とした体制を確保するよう要請されたが、全区民への速やかな接種を完了させるためには、診療所での個別接種を中心とすることが望ましいと区は判断した。そこで、国と連携し、区医師会の協力を得て、診療所における個別接種と集団接種を組み合わせたベストミックスによるワクチン接種体制「練馬区モデル」を構築した。この取組は、厚生労働省からワクチン接種計画の先進事例として全国に紹介され、瞬く間に全国標準の接種体制となり、我が国の接種促進に大きく寄与した。      (イ) 検査体制の充実  新型コロナ対応において、感染者を早期に発見し、適切な医療に繋げ、感染拡大を防止するため、区医師会と連携し、区独自のPCR検査検体採取センターの開設や区内診療所における検査実施体制を整備するなど、身近な場所で検査を受けられる体制の強化に取り組んだ。    (ウ) 自宅療養者への支援  感染拡大による自宅療養者の急増に対して、区医師会や区薬剤師会、区内訪問看護事業所、都等と連携し、自宅療養者への医療的支援事業「三つの柱」(柱1:かかりつけ医等による自宅療養者への健康観察、柱2:症状が悪化した際の在宅療養支援、柱3:練馬区酸素・医療提供ステーションの開設)の取組を実施し、自宅療養者の症状が悪化した際など、早期に医療へ繋げることができるよう、医療提供体制を強化した。  また、区独自の配食サービスやパルスオキシメーターの貸与等の生活支援を行った。    (エ) 関係機関との情報共有  感染状況に応じて随時、区と区医師会、区内病院等で「新型コロナウイルス感染症に係る連絡会」を開催し、感染対策や医療提供体制について情報共有を図りながら対策に取り組んだ。  また、新型コロナ対応を踏まえて、医療機関だけではなく、高齢者施設等とも情報共有を図るため、従来の「新型インフルエンザ等医療対策連絡会」に区訪問看護ステーション連絡会、高齢者施設、学校や保育園等を加えて「練馬区新型インフルエンザ等感染症対策ネットワーク会議」(以下、「感染症ネットワーク会議」という。)に改組し、区と関係機関との連携をより一層強化した。   イ 顕在化した課題    (ア) 都区の役割分担  特別区の保健所は、大都市のパンデミックを想定した制度設計になっていない。医療政策は都が担い、公衆衛生は区保健所が担うという役割分担は、平時は機能しているが、新型コロナのようなパンデミック時には、医療と公衆衛生に関する広域的調整が不可欠である。  新型コロナ対応においては、入院調整やPCR検査体制等について区によっては混乱が見られたことから、感染拡大時には都による強制力を持った調整が必要である。    (イ) 入院調整  新型コロナ対応においては、都は入院調整本部を設置し、重症度や基礎疾患の有無等に応じた入院調整を広域的に実施した。しかし、想定を超える感染拡大により対応が追い付かなくなったことから、保健所が調整を行う必要が生じた。これにより、保健所が対応すべき積極的疫学調査や施設調査等の業務が逼迫した。  各区によって感染症病床数などに差があることや重症度等の病状を考慮した調整が必要であるため、都が早期から一貫して広域的に入院調整を行い、保健所が行う積極的疫学調査等の業務が逼迫することのないよう、役割を明確化しておく必要がある。    (ウ) PCR検査体制  PCR検査体制については、臨時的な施設ではなく、医療機関等で速やかに検査体制を確保できるよう国や都が広域的に整備する必要がある。      (エ) 自宅療養者への支援  新型コロナ対応においては、自宅療養者への配食サービスやパルスオキシメーターの貸与等の生活支援を実施して都の事業を補完した。配食サービスについては、各区によって支援内容に差がある状況であった。  自宅療養者を支援するための各事業については、住民が受けるサービスに大きな差が出ないよう、都が統一方針を定めるなど、総合調整しながら取り組む必要がある。  (3) 都による総合調整・指示  新型コロナ対応において、保健所設置区市と都道府県の間で、入院調整等に係る連携や情報共有が十分でないなどの課題が顕在化した。そのため、感染症法が改正され、都道府県知事の総合調整権が強化された。  区は、都から報告または資料の提供を求められた場合や、感染症の発生およびまん延時において緊急性を要する入院勧告・措置を実施するために必要な指示が行われた場合は、適切に対応する。また、入院調整や検査体制など、都による広域的な調整が必要となる場合には、都に対して総合調整を要請する。  (4) 東京都感染症対策連携協議会    感染症法に基づき、都、保健所設置区市、都医師会等で構成する東京都感染症対策連携協議会(以下、「連携協議会」という。)が設置されている。  連携協議会では、入院調整の方法、迅速な情報共有のあり方など、平時から都区が連携して感染症対策を行っていくうえで生じる課題等について協議を行う。また、各区の感染症予防計画に基づく取組状況を毎年報告し、進捗確認を行うことでPDCAサイクルに基づく改善を図りながら、感染症の発生およびまん延を防止し、感染症対策に取り組んでいく。 2 感染症危機管理体制の強化  区は、原因不明であるが感染症が疑われる症例や緊急に対応が必要な感染症が発生した場合などに、原因となる病原体の確定、感染拡大防止、医療提供、情報共有、広報等の対応を迅速かつ的確に講じることができるよう、常に国内外の感染症発生状況に関する情報収集に努める。  また、必要に応じて初動体制の確保、緊密な連絡体制等について健康危機管理マニュアル等を見直し、感染症危機管理体制を強化する。  さらに、発生時に迅速かつ的確に対応できる検査、防疫体制を確立できるよう、東京都健康安全研究センター(以下、「健康安全研究センター」という。)と連携し、検査対応、感染症の病原体サーベイランス、調査研究、情報の収集・公表などの体制を確保する。 3 関係行政機関等との連携体制の強化  感染症対策部門は、海外におけるエボラ出血熱をはじめとする、区民の健康に重大な影響を及ぼす感染症の発生・拡大や都内におけるデング熱、エムポックス等の動物由来感染症等の発生、新型コロナ、インフルエンザ、ノロウイルス感染症などの流行が繰り返し発生していること等を踏まえ、感染症危機管理の観点から、食品、環境、動物衛生部門等と引き続き緊密に連携するとともに、国、都等の関係機関との連携を強化する。また、感染症ネットワーク会議を活用し、区医師会、区薬剤師会等の関係機関との連携体制を強化していく。 4 人権の尊重  保健所は、感染症法に基づき、感染症患者からの検体の採取、健康診断や感染症指定医療機関への入院勧告・措置などの対応、感染した可能性がある者の健康状態についての報告の要請等に当たっては、患者等の人権に配慮して、感染症の予防やまん延防止のために必要な最小限のものとし、審査請求に関する教示や意見を述べる機会の付与等の手続を適切に行う。また、医療機関と連携しながら、患者(感染症にり患したことが疑われる患者(以下、「疑い患者」という。)を含む。)やその家族等関係者に対し、実施の目的や必要性について十分に事前の説明を行う。  さらに、感染症が流行するおそれがあるなど、発生状況や対策の情報を広く一般に周知する必要があるときには、個人情報保護の観点を十分に踏まえ、患者および第三者の権利利益を不当に侵害したり、差別や偏見を生じさせたりすることのないよう慎重に注意を払いながら、科学的知見に基づき、まん延防止に必要な内容を公表する。  あわせて、患者や医療従事者およびその家族等関係者への偏見をなくすため、報道機関等に対しては偏見や誤解を生まない適切な情報発信を促し、区も適切な情報伝達、丁寧な説明を行う。     5 感染症に関する知識の普及啓発と情報提供  保健所は、区民一人ひとりが感染症の予防と流行への備えを行うよう促すとともに、患者や医療従事者およびその家族等関係者への差別や偏見を生じさせることのないよう、都や区医師会等と連携しながら、感染症についての正しい知識の普及に努める。  また、海外で感染し国内で発症して感染拡大が生じる事例もあることから、海外渡航者や帰国者等に対する感染症予防に関する情報提供を行う。  さらに、これまで国内では発生がない、あるいはまれな感染症が発生した場合には、国や都等から収集した正確な情報(病原体情報を含む。)を区民に対して分かりやすく提供し、相談に適切に対応するとともに、感染症ネットワーク会議等を通じて関係機関と情報共有を図る。 第3 関係機関の役割および区民や医師等の責務 1 区および保健所の役割  区は、本計画に基づいて、主体的に感染症への対応を行うとともに、予防接種法に基づく定期接種を実施する。  また、一類感染症、新興感染症、広域的な対応が必要なクラスターなど、通常の対応ではまん延防止を図ることが困難な事態が発生した際などには、区および都は、連携協議会等を通じ、統一方針の下で相互に連携して対応する。  とりわけ、保健所は、地域における感染症対策の中核的機関として、感染症情報の収集、関係機関等による感染症対策の支援、医療機関や区医師会等関係団体との連絡調整等、感染症の発生予防等のための事前対応型の取組を推進する。  さらに、感染症発生時には、積極的疫学調査による原因究明や防疫措置の実施等によって感染拡大防止を図り、状況に応じた区民への情報提供、保健指導を行い、区民からの相談に幅広く応じるとともに、消毒およびねずみ族・昆虫等の駆除等を実施し、地域における感染症危機管理の拠点として総合的に対応する。 2 区民の責務  区民は、平時から区をはじめとする関係機関から提供された情報等の理解に努め、感染症への関心を持ち、その予防のために必要な注意を払い行動するように努める。  また、感染症発生時には、感染拡大防止に協力するとともに、患者や医療従事者およびその家族等関係者に対し偏見を抱いたり差別したりすることのないよう、感染症についての正しい理解のもとに行動するよう努める。 3 医師等の責務  医師等の医療従事者は、区や都など関係機関が実施する感染症対策に協力し、良質かつ適切な医療を提供するとともに、患者に適切な説明を行い、治療や感染拡大防止に必要な対応への理解を得るよう努める。  医師は、感染症法に定める感染症を診断した時は、速やかに同法に基づく届出を行うとともに、その届出に当たっては、感染症指定医療機関の医師は、感染症サーベイランスシステムを用いる。それ以外の医療機関の医師についても、同システムを用いて行うよう努める。  病院、診療所、高齢者施設等の開設者および管理者は、施設における感染症の発生予防や拡大防止のために必要な措置を講じる。 4 獣医師等の責務  獣医師等の獣医療関係者は、良質かつ適切な獣医療を提供するとともに、動物の管理方法や感染症の知識、動物への接触方法等について飼い主に説明を行う。  獣医師は、結核等の感染症法に定める感染症や狂犬病が動物に発生した場合には、迅速に届出を行う。 5 医療関係団体の役割  医師会、歯科医師会、薬剤師会等の医療関係団体は、病原体の情報収集や感染症の集団発生または原因不明の感染症が発生した場合の適切な対応のため、都、区等の関係機関との連携体制を構築する。   第2章 感染症の発生予防およびまん延防止のための施策 第1 感染症の発生予防のための施策 1 感染症発生動向調査  (1) 情報の収集および情報提供    保健所は、都と連携して感染症の発生状況を収集し、区民や医療機関等に対し、区内における発生状況や感染力の強さ、り患した場合の疾患の特徴、感染経路、基本的な予防対策等の情報提供を行うとともに、流行状況に応じて注意報・警報の発出や感染拡大防止のための呼びかけ等を行う。  (2) 保健所への届出の周知徹底    保健所は、都や区医師会等と連携・協力し、医療機関に感染症法に基づく保健所への感染症の届出の重要性および感染症の診断を行った医師による速やかな届出について周知徹底を図る。  また、エボラ出血熱、ペスト、重症急性呼吸器症候群(SARS)、結核など政令で規定された感染症が届出対象となる動物において発生した場合に、獣医師が確実に保健所に届け出るよう、獣医師会等を通じて周知徹底を図る。  さらに、電磁的方法による発生届の提出について、感染症指定医療機関の医師については義務化されており、その他の医師については努力義務化されていることを踏まえ、医療機関への働きかけを行っていく。 2 感染症早期発見システムを活用した取組  保健所は、東京感染症アラート(鳥インフルエンザ(H5N1、H7N9)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)の感染の発生地域からの帰国者などで当該症例が疑われる患者を医療機関が確認して保健所へ届け出た際に、積極的疫学調査および病原体検査を速やかに実施する仕組み)を活用し、都と協力して患者発生の早期把握を図る。  また、こうした仕組みを円滑に運用するため、平時から医療機関への制度の周知や感染症に関する情報提供を行う。 3 動物衛生・食品衛生・環境衛生部門との連携体制  (1) 動物由来感染症(家畜、野生動物、ペット動物の各衛生担当部門)    家畜、野生動物、ペット動物の各衛生担当部門は、「狂犬病予防法」および「東京都動物の愛護及び管理に関する条例」により、畜犬登録、狂犬病予防注射、ペットの正しい飼い方の啓発を行う。  動物衛生部門は、感染症の病原体を保有する動物を発見した場合には、都や感染症対策部門と連携し、速やかに動物の管理者に対して、動物の衛生管理の指導や健康指導等を行うとともに、必要に応じて関係者の健康調査を実施する。    (2) 食品媒介感染症(食品衛生部門・環境衛生部門)  食品衛生部門は、食品媒介感染症の発生予防を効果的に行うため、食品等事業者に対して、製造、加工および調理の各段階でのHACCPに沿った衛生管理および一般衛生管理の徹底、実施状況の確認および指導を行う。また、二次感染による感染症の拡大防止のために行う情報の公表や施設に対する監視指導については、感染症対策部門と食品衛生部門とが連携して行う。  飲食に由来する感染症で、水道水等飲料水が原因あるいは原因と疑われる感染症に関しては、環境衛生部門が、関係機関等との連絡体制を確保する。  このほか、環境衛生部門は、貯水槽水道設置者および飲用に供する井戸等の設置者に対して、飲料水の衛生管理等について普及啓発を行う。    (3) 環境水およびねずみ族・昆虫が介する感染症(環境衛生部門)  環境衛生部門および感染症対策部門は相互に連携し、環境水(公衆浴場、旅 館業およびプ ール等における浴槽水等)およびねずみ族・昆虫等を介する感染症の発生予防のため、区民に対する情報提供や関係業者への指導を行う。  また、環境衛生部門は、デング熱等の原因ウイルスを保有する蚊の生息サーベイランス調査を実施するとともに、区民に対して、ボウフラの発生抑制や家屋内のねずみ対策に関する普及啓発を行う。  さらに、感染症発生時におけるねずみ族、昆虫等の駆除については、地域の実情に応じ、保健所が適切に実施する。 4 国内外における情報の収集および提供等  (1) 情報の収集および提供    保健所は、新型コロナ対応においては、区民や区内事業者等が感染動向を意識した対策をとることができるよう、区ホームページで陽性者数や検査実施状況の公表を行ったほか、相談窓口、発熱時の対応、ワクチン接種などについて掲載した。  新興感染症発生時においては、国内外の感染症発生状況に関する情報を国や都等から速やかに収集し、区民へ幅広く、迅速かつ的確に情報提供を行う。あわせて、感染症ネットワーク会議を通じ、区医師会や区薬剤師会等の関係機関と速やかに情報共有を図る。  なお、発生状況等の公表に当たっては、患者の人権に配慮しながら都と協議し、情報の発信を行う。  (2) 普及啓発    保健所は、平時から広報担当部署と連携し、区ホームページやSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)、広報紙等の様々な媒体を活用しながら、区民に対して、感染症に関する正確な情報を幅広く提供する。また、感染症とその予防に関する正しい知識を広めて予防意識を醸成するとともに、感染症による差別や偏見を生じさせないための普及啓発を行う。  さらに、各感染症について定期的に周知を図る予防月間等の機会も活用し、効果的な普及啓発に取り組んでいく。  (3) 相談体制の確保    区は、新型コロナ対応において、区民の不安等を軽減させるため、発生初期からコールセンターを立ち上げるなど、相談体制を整えた。また、発生状況に応じて体制の増強を図り、相談件数の増加に対応した。  こうした経験を踏まえ、新興感染症発生時には、対応の長期化も見据えた効率的な体制を構築し、都と連携して速やかに相談に応じていく。  保健所では、平時から感染症に関する情報提供に努め、区民からの相談に幅広く応じるとともに、相談内容が感染症対策部門以外の部署や関係機関の所掌に関する場合には、必要な情報提供や取次ぎを行う。 5 院内および施設内感染防止の徹底  保健所は、都と連携して病院、診療所、高齢者施設等において、感染症が発生・拡大しないよう、該当の施設管理者に対して、最新の医学的知見に基づく感染防止に関する情報の提供、感染症の発生状況に応じた注意喚起を行う。  また、福祉等関係部署と協力し、施設職員への研修、感染症予防策、施設および設備の改善策、感染防止マニュアル作成の助言等を行う。  施設管理者は、情報に基づいて必要な措置を講じるとともに、平時から施設利用者および職員の健康管理を適切に行うことにより、感染症の発生を早期に把握するよう努める。  さらに、「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」等の改正を受け、高齢者施設等の施設管理者は、新興感染症発生時に施設内の感染者への診療等の対応が迅速に行える体制を構築するため、平時から医療機関等と連携して発生時の対応を検討する。  医療機関は、院内感染対策委員会や感染制御担当者等を中心に院内感染の防止を図るとともに、実際に行った防止策に関する情報について区や他の医療機関、施設等との共有に努める。 6 予防接種施策の推進  (1) 定期接種の着実な実施    予防接種は、感染症の発生およびまん延を防止するとともに、区民一人ひとりの健康を守るための極めて重要な要素である。  区は、予防接種法に基づく定期接種の実施主体であるため、区医師会、医療機関等と十分に協力し、定期接種の適切な実施、接種体制の確保および接種率の向上に努める。  また、高齢者の肺炎球菌感染症の予防接種にかかる経過措置の終了、ヒトパピローマウイルス感染症の予防接種(HPVワクチン接種)の積極的勧奨再開とキャッチアップ接種の開始、多価ワクチンや混合ワクチンの導入など、定期接種の制度運用が複雑化する中、区においても、定期接種の適切な実施や接種率向上に向けて、都、区医師会等の関係機関と連携するとともに、区民への普及啓発を積極的に実施する。  加えて、予防接種に必要なワクチンについて、供給の偏在等が生じた場合には、都と連携して調整に努める。  一方、予防接種は、体内にワクチンを投与し免疫反応を誘導するものであるため、その効果とともに何らかの副反応が生じる可能性がある。このため、予防接種法に基づき、接種後に生じた副反応に関する情報収集・評価を行うための副反応疑い報告制度や、接種を受けたことによる健康被害が生じた場合の救済制度が設けられている。区においても、制度についての情報を区民に分かりやすく提供するなど、都と連携して周知を図る。  (2) 感染症危機管理の観点からの予防接種    区は、麻しん・風しんなど、ワクチン接種の有効性が明らかな疾患について、平時から都や区医師会等と連携し、その重要性についての啓発に努めるとともに、集団感染や地域的な流行が発生した場合などには、必要に応じて広く区民に予防接種を推奨する広報を行う。  また、感染症のまん延防止のために緊急に必要があるとして、予防接種法に基づく臨時接種が実施される事態や特定感染症予防指針に基づいて接種等を実施する場合においては、都や区医師会等と連携して実施体制を構築する。       第2 感染症発生時のまん延防止のための施策 1 検査体制    区は、疑い患者から採取した検体を、健康安全研究センターに搬入している。  新型コロナ発生時のように検査需要が爆発的に増大する事態においては、公的検査機関に加えて医療機関等と連携して検査能力を強化する必要があることから、区は、連携協議会等を通じて都と連携し、発生早期、流行初期、流行初期以降の各段階での関係機関との役割分担を明確にする。 2 積極的疫学調査の実施等  (1) 調査・保健指導等    保健所は、患者が発生した場合や集団感染の発生が認められるなど、通常の発生動向とは異なる傾向が認められた場合で、当該感染症の発生を予防し、または感染症の発生状況や原因等を明らかにするため必要がある場合には、当該患者(疑似症患者や無症状病原体保有者を含む。)およびその関係者に対して、積極的疫学調査を実施する。  また、新興感染症および一類感染症の患者が発生した場合や広域的に患者が発生した場合など、通常の対応ではまん延防止を図ることが困難な事態が発生した場合には、都と連携して調査を実施するなどの対策を講じる。  さらに、海外の感染症流行情報についても、医療機関や区医師会等の関係団体との情報共有に努めるとともに、発生情報の早期把握と迅速な対策を実施する。  感染症に感染した動物が区内のペットショップで販売されていることが判明した場合には、東京都動物愛護相談センター(以下、「動物愛護相談センター」という。)と協力して、動物取扱業者の施設等の調査を実施する。  積極的疫学調査等により明らかになった感染拡大防止に必要な情報は、各種法令に基づく個人情報の取扱いに配慮しつつ、医療機関や区医師会等の関係団体に提供するとともに、都等とも情報を共有し、感染症対策に活用する。  (2) 専門的支援チームの活用     保健所は、感染症発生時に迅速な調査を実施するに当たり、保健所が行う積極的疫学調査の企画立案・実施・評価等を支援する、東京都実地疫学調査チーム(TEIT:Tokyo Epidemic Investigation Team)の派遣を必要に応じて依頼し、感染拡大防止を図る。  また、重症化リスクの高い高齢者が利用する施設等でのクラスターの発生を防止するため、感染管理等の専門知識を有する医師や看護師が現地に赴き感染対策を支援する感染対策支援チームを活用し、都と連携して施設等における感染症対策を行う。 3 防疫措置  保健所は、感染症法に基づく防疫措置を行うに当たり、適正な手続の遵守はもとより、人権に十分配慮し、その内容は感染症の予防やまん延防止に必要な最小限度のものとする。また、患者等に実施の目的や必要性を十分説明して理解を得るように努める。  (1) 検体の採取等  検体の採取等の勧告・措置を、一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症または新感染症へのり患を疑うに足る正当な理由のある者を対象に、まん延防止のため必要があると認められる場合に実施する。  (2) 健康診断  健康診断の勧告・措置を、病原体の感染経路やその他の事情を十分に考慮したうえで、一類感染症、二類感染症、三類感染症、新型インフルエンザ等感染症または新感染症(以下、「新感染症等」という。)へのり患を疑うに足る正当な理由のある者を対象に実施する。  また、保健所が必要と認めた場合は、感染した可能性がある者に対して、十分に説明を行ったうえで、積極的疫学調査の一環として、検査を受けるよう要請する。  (3) 行動制限  就業制限については、対象者の自覚に基づく自発的な休暇や就業制限の対象以外の業務に一時的に従事させるなどの対応が基本となるため、保健所は対策の必要性について対象者やその関係者の理解を得られるように十分に説明を行う。  さらに、新感染症等へのり患を疑うに足る正当な理由のある者に対して、感染拡大防止の観点から必要があると認められる場合には、潜伏期間を考慮して定めた期間内における自宅またはこれに相当する施設からの外出自粛等を要請する。  (4) 入院勧告等    入院勧告を実施する際は、患者に対して、入院が必要な理由などの説明を行い、その理解を得るよう努める。また、応急入院から本入院に移行する際の意見を述べる機会の付与や退院請求、審査請求に関することなど、入院勧告の通知に記載された事項を含め十分に説明を行う。  さらに、入院勧告等を行った場合には、患者の人権に十分に配慮しつつ、医療機関との協力の下、患者の病状や治療経過等の情報を整理し、まん延防止対策等を実施する。  加えて、新感染症等へのり患を疑うに足る正当な理由がある者に対して、良質かつ適切な医療を提供する観点および感染拡大防止の観点から必要と判断した場合には、感染症指定医療機関の受診や入院を要請する。  感染症指定医療機関は、入院後も患者に対し必要に応じて十分な説明を行い、患者、家族および関係者の精神的不安の軽減を図る。  (5) 退院請求への対応  入院勧告・措置を受けた患者が感染症法に基づく退院請求を行った場合、医療機関と連携して当該患者が退院基準に適合しているかどうかの確認を速やかに行う。  (6) 感染症の診査に関する協議会    練馬区感染症診査協議会(以下、「協議会」という。)は、保健所長の諮問に応じて、入院勧告に基づく入院期間の延長等を審議する機関であり、条例に基づき設置されている。  協議会における委員の任命および診査に当たっては、感染症の拡大防止の観点から、感染症に関する専門的な判断、患者への適切な医療の提供や人権尊重を踏まえた判断を求められていることから、この趣旨を十分に考慮する。  (7) 消毒等の措置    感染症法に基づく消毒およびねずみ族・昆虫等の駆除が必要な場合、関係者の理解を得て、必要最小限の範囲で当該施設・場所の管理者等にその実施を命ずることとされているが、管理者等による実施が困難な場合には、保健所が措置を実施することができる。消毒・駆除を命ずる場合には、関係者の理解を得て、必要最小限の範囲で実施する。  また、感染症法に基づく、検体の収去等の実施、飲食物、衣類、寝具等の移動制限、消毒、廃棄等の物件に係る措置、死体の移動制限、生活用水の使用制限、建物に係る立入制限、交通の制限または遮断等を実施するに当たっては、関係者に十分な説明を行い、必要最小限の内容で対応を行う。  消毒等の実施に当たっては、患者等の人権について十分に配慮する。 4 関係部門と連携した対応  (1) 動物衛生部門との連携    動物由来感染症が疑われる事例が発生した場合、動物衛生部門および感染症対策部門は、動物愛護相談センターと連携して動物に関する調査、検体採取、飼育指導等を行い、動物由来感染症のまん延防止に努める。  また、鳥インフルエンザの発生など、動物衛生部門と感染症対策部門とが一体で対応する必要がある場合、速やかに連絡調整会議を開催するなど、部門間での情報共有を図り対処する。    (2) 食品衛生部門との連携    感染症、食中毒の双方が疑われる事例が発生した場合、保健所においては、保健所長の指揮の下、食品衛生部門、感染症対策部門やその他関係部門は相互に連携し、迅速に原因究明および被害拡大防止を行う。  調査の結果、食中毒であることが判明した場合には、食品衛生部門は、原因物質に汚染された食品の販売禁止、原因施設の営業停止等の不利益処分を行うとともに、衛生教育等で再発防止策を指導する。また、必要に応じて、当該施設等の関係者に対して消毒等の指示を行う。  さらに、不利益処分などの措置を実施した際は、被害拡大防止と食品衛生上の危害の状況を明らかにするため、法違反者の営業者氏名や違反の内容等を公表する。感染症対策部門は、当該食中毒の原因物質が感染症法上の疾患の病原体である場合、患者や当該施設の従業員への保健指導等、必要な対策を行うとともに、必要に応じて当該感染症に関する情報を公表する。  食中毒の発生時の対応については、 本計画のほか 、「食中毒処理要領」、保健衛生事務事業に係る都区協定「中毒事件等調査処理要綱」および「食中毒調査マニュアル」等に基づき、調査、措置、公表等の個別の対策を推進していく。    (3) 環境衛生部門との連携    水道水等飲料水を原因とする感染症が疑われた場合、環境衛生部門が感染症対策部門および食品衛生部門と協力し、原因究明の調査等を行うとともに、感染拡大防止を図る。  公衆浴場、旅館業およびプールにおいて、環境水に由来するレジオネラ症が発生した場合には、環境衛生部門と感染症対策部門が連携して対応し、施設に対する改善指導等を迅速かつ適正に行い、被害拡大防止を図る。  その他環境水およびねずみ族・昆虫等を介した感染症が疑われる疾患が発生した場合は、上記に準じて必要な措置を講じる。  飲用以外の水による感染症が発生した場合には、保健所においては、保健所長の指揮の下に、環境衛生部門が、原因究明に必要な調査、感染経路等の情報収集および原因施設への立入制限等を行う。 第3 医療提供体制の整備 1 医療機関ごとの役割  (1) 感染症指定医療機関   ア 機能および感染症病床の充実  都内の感染症指定医療機関および病床数については、国が示す感染症指定医療機関の配置基準をもとに、大都市の特性や新興感染症等の感染拡大も考慮して都が確保する。      イ 特定感染症指定医療機関  新感染症の所見がある者または一類感染症、二類感染症および新型インフルエンザ等感染症の患者の入院を担当する特定感染症指定医療機関については、国が指定することとされており、都内においては1医療機関(国立国際医療研究センター病院)が指定されている。     ウ 第一種感染症指定医療機関  一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症の患者の入院医療を担当する第一種感染症指定医療機関については、都が確保する。   エ 第二種感染症指定医療機関  二類感染症および新型インフルエンザ等感染症の患者の入院医療を担当する第二種感染症指定医療機関については、区部では区部全域を一圏域とし、多摩・島しょ地域では原則として二次保健医療圏を単位とし、必要な受入規模の病床を都が確保する。   オ 結核指定医療機関  結核指定医療機関については、病院、診療所および薬局のうち、結核患者に対する適正な医療を担当するのに適当と認められるものについて都が確保する。  (2) 協定指定医療機関   ア 第一種協定指定医療機関  第一種協定指定医療機関については、都が平時に医療措置協定を締結し、指定することとされており、新興感染症発生等公表期間には、新興感染症の患者の入院を担当し、都の要請に基づき病床を確保する。 イ 第二種協定指定医療機関(発熱外来)  第二種協定指定医療機関については、都が平時に医療措置協定を締結し、指定することとされており、新興感染症の発熱外来を担当する。   ウ 第二種協定指定医療機関(外出自粛対象者対応)  第二種協定指定医療機関(病院、診療所、薬局および訪問看護事業所)については、都が平時に医療措置協定を締結し、指定することとされており、新興感染症発生等公表期間に新興感染症の自宅療養者等への往診や健康観察を行う。  加えて、医師会等の関係者と連携・協力し、また、必要に応じて薬局や訪問看護事業所とも連携して施設入所者に対する往診や電話・オンライン診療等、医薬品対応、訪問看護等を行う。  (3) 後方支援を行う医療機関    新興感染症発生等公表期間に第一種協定指定医療機関または第二種協定指定医療機関の後方支援として、感染症からの回復後、引き続き入院が必要な患者の転院受入や感染症患者以外の患者の受入れを行う医療機関については、都が平時に協定を締結する。    (4) 一般医療機関  感染症指定医療機関以外の一般医療機関については、感染症法に基づく勧告・措置入院を除く感染症の診療を行っており、区および都から提供される情報を積極的に活用し、感染症の診断、届出、治療ならびに感染拡大防止のための措置や患者等への指導など必要な対応を、患者の人権を尊重しながら実施する。  区は、区医師会等の医療関係団体と連携し、一般医療機関に対して感染症に関する適切な情報を提供するなど必要な支援を実施する。 2 患者移送  (1) 一類感染症患者等の移送    感染症法に基づく入院勧告等の対象となる患者の移送は、保健所および都が実施することとなっている。一類感染症、指定感染症および新感染症(以下、「一類感染症等」という。)の患者の移送については、都が所有する感染症患者移送専用車両を使用して実施する。  (2) 二類感染症患者等の移送    二類感染症患者の移送について、保健所は、患者等搬送事業者(民間救急事業者)等の活用を図るなど、疾患状況に応じた迅速かつ適切な移送手段を講じる。  新型インフルエンザ等感染症患者の移送は、発生した感染症の重篤性、感染力および感染経路等を勘案して適切な移送方法によることとし、関係機関とも協議のうえ、患者等搬送事業者(民間救急事業者)等を活用した移送や都および消防機関と連携した実施体制を保健所が構築する。  また、患者の移送を迅速かつ適切に実施できるよう、平時から関係機関等との連絡体制や感染防止資器材の確保、訓練などを実施する。 第4 国・都および関係機関との連携協力の推進 1 国との連携協力  (1) 国への報告  保健所は、医師または獣医師から感染症患者の発生等の届出があった場合、感染症サーベイランスシステムにより、国への報告を確実に行う。  (2) 検疫所との連携  保健所は、海外において注意を要する感染症が発生・流行している場合には、検疫感染症(検疫法において規定されている、感染症法上の一類感染症、新型インフルエンザ等感染症および政令で定める中東呼吸器症候群(MERS)、マラリア、デング熱等の感染症)の国内侵入を防止するため、港湾・空港において入国者等に対する検査や診察を実施している検疫所との連携を図る。  また、検疫法に基づき、一定の期間を定めて健康状態について報告を求める措置(健康監視)の対象者について、健康状態に異状が生じた旨の通知を検疫所から受けた場合は、接触者の確認や感染拡大防止のための指導などを都と連携して行う。     2 都等との連携協力  (1) 休日・夜間の連絡体制の確保  保健所は、休日・夜間の緊急時は、都が設置する東京都保健医療情報センター「ひまわり」を通じて、都への連絡を行う。  (2) 区市町村等との連絡調整  区は、複数の区市町村にわたる感染症が発生した場合に備えて、平時から近隣自治体との連絡体制を確保する。  また、都内自治体で統一的な対応を要する場合には、連携協議会保健所連絡調整部会等を通じ、都に総合調整や区市町村間の連絡調整を要請する。  さらに、必要に応じて技術的助言や職員の派遣などの支援を依頼する。  (3) 消防機関への情報提供  消防機関に対しては保健所および都が、感染症の発生状況等の必要な情報を提供する。 3 関係機関との連携協力  (1) 関係機関との連絡体制の確保  新型コロナ対応において、院内感染の際に医療機関同士が支援する体制や高齢者施設をはじめとする福祉施設、学校・保育園等における患者発生時の情報共有が十分ではなく、感染が拡大するなど様々な課題が明らかになった。  これらを踏まえて、医療機関だけではなく、高齢者施設等とも情報共有を図るため、従来の「新型インフルエンザ等医療対策連絡会」に区訪問看護ステーション連絡会、高齢者施設、学校や保育園等を加えて「練馬区新型インフルエンザ等感染症対策ネットワーク会議」に改組した。  平時から感染症ネットワーク会議を活用した関係機関との連絡体制を整備することで、新興感染症発生時において、関係機関との連携協力体制を迅速に確保する。  (2) 発生時対応訓練  保健所は、一類感染症等の発生時に迅速かつ的確に対応できるよう、都が実施する情報伝達等の発生時対応訓練に参加し、対応力の向上を図る。 第5 調査研究の推進 1 調査研究  保健所は、地域における感染症対策の中核的機関として、感染症対策に必要な積極的疫学調査や研究について、都や健康安全研究センター、東京感染症対策センター(以下、「東京iCDC」という。)等の専門機関などと連携して取り組み、地域における総合的な感染症の情報発信拠点としての役割を果たす。 2 原因不明疾患などの調査等の実施  保健所は、都および健康安全研究センターと連携し、原因不明疾患の発生時に感染原因や感染経路を究明するための積極的疫学調査および感染症の流行を予測し防疫対策を効果的に進めるための感染症流行予測調査等の調査事業を引き続き実施する。 第6 感染症に関する知識の普及啓発と情報提供 1 正しい知識の普及啓発  保健所は、感染症や予防接種に関する啓発や知識の普及を図るため、平時から広報担当部署や都と連携して、区ホームページやSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)、広報紙等、様々な媒体を活用して情報提供を行うとともに、パンフレットの配布などにより、感染症予防についての正しい知識の普及啓発に努める。  また、感染症に関する誤った理解や感染症の患者への差別や偏見により、人権を損なうことがないよう取り組んでいく。 2 感染症の発生動向等の情報提供  (1) 的確な情報提供  保健所は都と連携し、感染症発生動向調査等により感染症の発生状況を収集し、区民や医療機関等に対し、流行地域や患者数、疾患の特徴、感染経路、基本的な予防対策等の情報提供を行うとともに、流行状況に応じて注意報・警報の発出や感染拡大防止のための呼びかけ等を行う。  また、これまで国内では発生がない、あるいはまれな感染症の発生など、感染拡大防止のために広く注意喚起する必要がある場合には、国や都、関係機関等と連携し、迅速かつ効果的に情報提供を行う。    (2) 個人情報の保護等  保健所は、感染症に関する情報の公表その他の感染症対策を行う場合、関係法令等に則して個人情報の取扱いに十分な注意を払い、適切に対応するとともに、プライバシーの保護や感染症を理由とした差別・風評被害の防止等にも配慮して対応を行う。 第7 保健所体制の強化  保健所は、感染症発生時に、積極的疫学調査による原因究明や防疫措置の実施等によって感染拡大防止を図るとともに、状況に応じた区民への情報提供や保健指導、住民からの相談に幅広く応じる。  また、地域の関係機関と連携して感染症危機管理の拠点として総合的に対応する。 1 人員体制の確保等  (1) 計画的な体制整備  保健所では、新型コロナ対応において、発熱相談や検査、積極的疫学調査、入院・宿泊療養調整、患者移送、健康観察などの多岐にわたる業務が増大した。  そのため、感染者数に応じて人員体制を調整する仕組みを構築し、庁内他部署からの応援職員や会計年度任用職員、派遣労働者などを活用することで、発生届の入力業務や相談対応など、膨大な作業量に対応した。  また、業務については、分割・細分化し、事務職等で対応可能なものは積極的に振り分けることで、医師や保健師が本来担うべき積極的疫学調査や自宅療養者の健康観察等に注力することができた。  今後の新興感染症の発生に備え、応援職員に加え、会計年度任用職員や派遣労働者などを計画的に活用し、体制整備を図っていく。  また、新型コロナ対応を踏まえて、応援職員等が担当する業務マニュアルを改訂するとともに、必要な執務スペース・機器等の環境整備に取り組んでいく。  (2) 総合的なマネジメントを担う保健師の配置    新興感染症発生時等の有事においては、関係部署や外部機関等との連絡調整のほか、医療・公衆衛生に関する専門的知識を要する相談対応が必要となる。このため、関係機関との連絡調整その他の全体統括および専門的知識を要する業務を担う職員の配置や体制の充実に取り組んでいく。 2 デジタル技術の活用促進  区は、新型コロナ対応において、感染者等情報把握・管理支援システム(以下、「HER−SYS」という。)の利用に関し、区医師会を通じた勧奨や発生届出数の多い医療機関への電話や訪問による個別勧奨を行った。この結果、HER−SYSを利用した電磁的方法による届出が増加したことで、保健所による入力業務が減少し、区民からの相談対応等に注力することができた。  また、HER−SYSとは別に患者情報を一元管理する業務システムを作成することで、各種証明書の発行作業等の効率化を図った。  さらに、SMS(ショートメッセージサービス)一括送信ツールの導入により、業務の省力化を図るとともに、感染者に対して迅速に初回連絡を行う事ができた。  保健所においては、新型コロナ対応を踏まえ、新興感染症の発生等を見据えて、さらなるデジタル技術の活用など、業務効率化に平時から取り組んでいく。 3 保健所職員等の人材育成  保健所では、平時から専門研修やOJT等を通じて、感染症業務を担当する保健師の育成を図ってきた。  今後の新興感染症の発生等に備え、感染症による健康危機発生時に迅速かつ適切に対応できるよう、感染症に関する専門研修の内容の見直しや受講者の拡大、ジョブローテーションの工夫により、できるだけ多くの職員が感染症業務を経験する機会を設けるなど、保健師の育成に取り組むこととする。また、保健師以外の保健所職員についても、新型コロナ対応を踏まえて研修内容を見直し、感染拡大時等における対応力を強化する。  さらに、必要に応じて、IHEAT(健康危機発生時に地域における保健師等の専門職が保健所等の業務を支援する仕組み)に登録されている専門職の人材についても研修・訓練を行う。 4 実践型訓練の実施  (1) 関係機関と連携した訓練  保健所は、一類感染症等の感染症発生時における即応体制確保のため、都が実施する都内における患者発生を想定した情報伝達、患者移送・受入および積極的疫学調査等の訓練に参加し、対応力の向上を図る。  (2) 保健所の訓練  保健所では、これまでも積極的疫学調査訓練や防護服着脱訓練など感染症発生に備えた訓練を実施してきた。  新型コロナ対応においては、保健師や看護師、応援職員等により体制を確保し、多岐にわたる業務に全庁を挙げて対応した。その際、応援に入った保健師については感染症対応の経験が乏しく、患者対応の仕組みや方法等を把握・習得するまでに手間と時間を要した。  今後は、平時に感染症業務に従事する職員だけでなく、有事に従事する予定の応援職員も対象に加え、患者への連絡や移送等の対応に関する実践的な訓練を実施する。 【保健所職員等の研修・訓練に係る数値目標】 対象 平時から感染症対策部門に従事する職員等(保健師等) 内容 積極的疫学調査、 防護服着脱訓練等 研修や訓練の実施回数 年1回以上 対象 有事に従事する予定の応援職員(保健師・衛生監視等) 内容 患者への連絡対応、患者移送訓練等 年1回以上 5 地域の関係機関等との連携強化  感染症発生時においては、関係機関と連携し的確に対応を行うための体制を確保する必要がある。このため、保健所は、平時から区医師会、区歯科医師会、区薬剤師会、区訪問看護ステーション連絡会、医療機関、消防機関等と構築している感染症ネットワーク会議を活用し、発生時における役割分担や情報共有の方法等について相互理解を図る。  また、感染症についての正しい知識や区が実施する研修・訓練の内容等を適宜共有し、患者対応の方法等の確認を行う。 第3章 新興感染症発生時の対応 第1 基本的な考え方 1 体制の確保  (1) 新興感染症発生早期    発生早期とは、新興感染症発生から厚生労働大臣による発生の公表前までの期間である。  この段階においては、特定感染症指定医療機関、第一種感染症指定医療機関および第二種感染症指定医療機関が感染症病床を中心に対応し、都が、その対応により得られた知見を含む国内外の最新の知見等について、随時収集および医療機関等へ周知しながら、対応を行う。  (2) 新興感染症発生の公表後の流行初期    流行初期とは、厚生労働大臣による新興感染症発生の公表後の流行初期の一定期間(3か月を基本として必要最小限の期間を想定)である。  この段階においては、発生の公表前から対応実績のある感染症指定医療機関が引き続き対応する。また、国等からの最新の知見について情報提供を受けた流行初期対応を行う医療機関も、都の要請に基づいて順次対応する。  (3) 新興感染症発生の公表後の流行初期以降       流行初期以降とは、厚生労働大臣による新興感染症発生の公表後の流行初期の一定期間経過後の期間である。  この段階においては、流行初期から対応を行う医療機関に加え、公的医療機関や地域医療支援病院および特定機能病院等を中心として、順次速やかに、医療措置協定を締結した全ての医療機関が対応する体制に移行する。 第2 保健所の対応 1 情報の収集・提供  (1) 海外での発生時における情報収集等    保健所は、海外で新興感染症等が発生した場合、国や都から収集した正確な情報を広く区民に提供するとともに、区民からの相談に対応し、感染症への不安の軽減・解消に努める。  また、医療機関等に対して最新の疾病情報、り患状況等について、 東京iCDC等の知見も踏まえ情報提供を行い、感染症への対応力向上を支援する。    (2) 医療機関からの届出等に関する周知および情報共有    保健所は、区内の医療機関等に対し新興感染症の発生に係る届出基準等の周知を行い、迅速・確実な情報把握に努める。  また、区内の発生状況について、都や関係機関と共有するとともに、関係法令に則して個人情報を適切に扱い、プライバシーの保護や風評被害等を十分に考慮する。 2 積極的疫学調査の実施  新型コロナの感染拡大時においては、感染経路が追跡できない陽性者が増加するなど、患者全てに対し詳細な積極的疫学調査が実施できない事態が生じた。そのため、都から、感染拡大期には患者の重症化リスクを把握することに重点化し、適切な医療提供を行うことに注力する考え方が示され、都内保健所が統一方針の下で対応を行った。  こうした経験を踏まえ、新興感染症発生時に疾患の特徴や感染状況等に応じた調査方針に沿って対応できるよう、保健所および都、関係機関は、方針変更時の意見調整や周知方法等について、平時から連携協議会等を通じて、調整を図っていく。 第3 関係機関と連携した検査体制の構築  新型コロナの感染拡大時においては、感染者を早期に発見して感染拡大を防止するため、検査体制の整備が重要であった。  区は、区医師会と連携し、区独自のPCR検査検体採取センターの開設や区内診療所における検査実施体制を整備することで、身近な場所で検査を受けられる体制を強化した。  新興感染症発生時においては、発生早期、流行初期、流行初期以降の各段階で都や関係機関と連携し、それぞれの機能や役割に応じて速やかに診療・検査体制を確保する。  発生早期には、健康安全研究センターが検査を実施し、流行初期には、これに加え、感染症指定医療機関、流行初期医療確保措置の対象となる協定を都と締結した医療機関が順次対応する。  また、必要に応じ、医療提供体制を補完するため、区医師会と協議のうえ、区独自のPCR検査検体採取センターを設置する。流行初期以降は、これらに加え、公的医療機関や地域医療支援病院および特定機能病院等が中心となり、段階的に、検査能力を有する全ての協定締結医療機関で対応する。  なお、都と協定を締結した民間検査機関は、医療機関等からの検査依頼に対応する。   【検査体制に係る数値目標】 @流行初期 (発生の公表後1〜3か月) 都と連携し 都全体1,000件の中で対応 A流行初期以降 (発生の公表後6か月以内) 都と連携し 都全体1,000件の中で対応 第4 医療提供体制の確保 1 入院医療  (1) 都と連携した入院調整  新型コロナ対応においては、感染者の情報を共有するため、国がHER−SYSを導入し、都が「東京都新型コロナウイルス感染者情報システム(MIST)」を導入した。これらを活用し、患者情報や受入可能病床等の情報が一元的に管理され、都による入院調整が実施された。  一方、想定を超える感染拡大により各区で調整を行う必要が生じたため、保健所が対応すべき積極的疫学調査や施設調査等の業務が逼迫した。そのため、入院調整においては、各区によって感染症病床数などに差があることや重症度等の病状を考慮した調整が必要であるため、都が早期から一貫して広域的に入院調整を行い、保健所が行う積極的疫学調査等の業務が逼迫することのないよう、役割を明確化しておく必要がある。  新興感染症発生時において、区は、都の入院調整本部と連携し、円滑な入院調整を行う。  また、新興感染症の重症度のほか、基礎疾患や重症化リスク、合併症のリスク、障害の有無、要介護度など、患者の容態を考慮した入院調整が行われるよう都に要請する。  あわせて、新型コロナ対応を踏まえ、感染拡大時における入院調整に係る都区の役割分担について、連携協議会等を通じて検討を進める。    (2) 臨時の医療施設の設置  区は、新型コロナ対応において、都と連携し、確保病床等による入院医療体制を補完するため、特措法に基づく臨時の医療施設として、練馬区酸素・医療提供ステーションの整備・運営を行った。  同施設では、区医師会、区薬剤師会、区内病院や区訪問看護ステーション連絡会の協力を得て、軽症等の患者に対して酸素投与のほか、中和抗体療法を提供した。  新興感染症発生時においても、発生した感染症の性状や医療提供体制の状況等を踏まえ、必要に応じて都と連携し、機動的に臨時の医療施設の設置について検討する。 2 外来医療(発熱外来)  (1) 発生早期における外来医療体制   発生早期においては、特定感染症指定医療機関、第一種感染症指定医療機関および第二種感染症指定医療機関を中心に対応する。  (2) 流行初期における外来医療体制  流行初期においては、特定、第一種および第二種感染症指定医療機関が対応を行う。その後、感染症の性状や感染状況、通常医療の状況等を踏まえ、第二種協定指定医療機関のうち、流行初期対応を行う医療機関に対し、都が診療体制の整備を要請する。  (3) 流行初期以降における外来医療体制  流行初期以降においては、流行初期対応を行う医療機関に加え、公的医療機関や地域医療支援病院および特定機能病院等が中心となり、段階的に全ての協定締結医療機関で対応できるよう、都が発熱外来の設置を要請し、発熱患者等を受け入れる体制が整備される。  (4) 地域における診療体制の確保  区は、新興感染症発生時においても、身近な地域で診療を受けられる機会を可能な限り確保するため、区医師会等の医療関係団体と協力し、地域における感染症医療と通常医療の役割を確認するとともに、地域の実情に応じた連携を促しながら、診療体制の確保に努める。  (5) 診療・検査医療機関の検査目的の受診集中回避  感染拡大時においては、医療機関への検査目的の受診の集中を緩和し、本来医療が必要な重症化リスクがある方等の受診機会を確保することが重要である。  区は、新興感染症発生時において、都および関係機関と連携・協力し、行政による検査キットの配布等について、柔軟に対応していく。 3 医療機関における個人防護具の備蓄  新興感染症の発生に備え、医療機関等は都との医療措置協定締結により、個人防護具を確保する。 4 患者移送体制の確保  医療機関への患者移送については、保健所が実施することとなっており、新型コロナの発生当初は保健所職員が庁有車により移送を行った。感染拡大後は、患者等搬送事業者(民間救急事業者)を活用し、患者の移送体制を確保した。  今後、新型コロナ対応の経験を踏まえ、新興感染症発生時の円滑な患者移送が可能となるよう、患者等搬送事業者(民間救急事業者)と体制の確保に向けた検討を進める。        (1) 消防機関の役割    連携協議会などにおける事前の協議に基づく、移送患者の対象等に応じた消防機関や患者等搬送事業者(民間救急事業者)の役割分担に応じて、迅速に移送を実施する。  一類感染症等の患者について、都と消防機関で締結している協定に基づき、消防機関は都が所有する感染症患者移送専用車両により患者を移送する。    (2) 患者等搬送事業者(民間救急事業者)の役割     ア 二類感染症患者の移送     結核等の二類感染症については、区の委託等に基づき、患者を移送する。        イ 新型インフルエンザ等患者の移送  新型インフルエンザ等については、都、公益財団法人東京防災救急協会(以下、「協会」という。)および東京民間救急コールセンター登録事業者連絡協議会の3者において締結された「新型インフルエンザ患者移送体制構築に関する協定」(以下、「協定」という。)に基づき、円滑な患者移送を実施する。     ウ 東京民間救急コールセンターにおける患者等搬送事業者(民間救急事業者)の紹介  協会は、協定に基づく都の要請を受け、東京民間救急コールセンターを開設・運営するとともに、移送が必要な場合には事業者の紹介等を行う。 第5 自宅療養者等の療養環境の整備 1 自宅療養者等の健康観察および医療支援  新型コロナの感染拡大時においては、入院調整が滞り、自宅療養者が急増した。体調の急変によって自宅で重症化するケースが相次ぎ、健康観察や往診等の医療提供体制の強化が求められた。  区は、自宅療養者に対し、電話連絡するほか、自宅療養者フォローアップセンターやMy HER−SYSも活用しながら健康観察を実施した。また、症状が悪化した際、早期に医療につなげるため、区医師会や区薬剤師会、区内訪問看護事業所、都等と連携して、自宅療養者への医療的支援事業「三つの柱」(柱1:かかりつけ医等による自宅療養者への健康観察、柱2:症状が悪化した際の在宅療養支援、柱3:練馬区酸素・医療提供ステーションの開設)の取組を実施し、医療提供体制を更に強化した。  新興感染症発生時においても、新型コロナ対応を踏まえ、区医師会等や都と連携し、適切に自宅療養者等の健康観察および医療支援を行う体制を整備するとともに、療養中の相談先について区民に分かりやすく周知する。 2 自宅療養者等の療養環境の整備・生活支援  区は、新型コロナ対応において、自宅療養者の生活支援として、配食サービスやパルスオキシメーターの貸与を行い、療養期間中に外出しなくても生活できるよう環境の整備に取り組んだ。  これらの取組については、後に都でも同様の事業を実施することとなったため、区民が受けるサービスに大きな差が出ないよう、平時から都区の役割分担を整理しておく必要がある。  また、新興感染症発生時においても、必要に応じて、民間事業者への委託を迅速に行い、効率的かつ効果的に生活支援等を行う体制を確保する。  さらに、高齢者等の支援が必要な方の自宅療養支援について、庁内の関係部署や感染症ネットワーク会議の関係機関等と連携して対応する。 第6 高齢者施設をはじめとする福祉施設等への支援 1 感染症対策の取組支援  新型コロナの感染拡大による医療の逼迫に伴い、陽性となった施設入所者が施設内で療養せざるを得ない状況が多く発生し、施設における感染拡大防止対策が課題となった。このため、保健所は感染経路等を調査するほか、必要に応じた検査を行い、感染拡大防止を図った。  また、都の感染対策を実地で助言・指導する即応支援チームと連携した施設の調査も実施し、必要に応じた助言を行った。  今後も、施設からの相談等に対する助言・指導を平時から行い、感染症対策についての施設への支援を都と連携して実施していく。  新興感染症発生時においては、感染症ネットワーク会議を通じて高齢者施設等との情報共有を図る。 2 集中的検査の実施等   重症化リスクの高い高齢者や障害者が多く利用する高齢者・障害者施設等における感染拡大を防止する観点から、施設利用者および職員を対象とした集中的なPCR検査、検査キット配布等を実施した。同様の事業は、都等でも行っていたため、区はそれらの対象外施設に対する支援を行った。  新興感染症発生時においても、都等と連携しながら早期に対策を講じていく。 3 医療支援   第二種協定指定医療機関の病院および診療所は、医師会等の関係者と連携・協力し、また必要に応じ、第二種協定指定医療機関の薬局や訪問看護事業所とも連携して、施設入所者に対する往診や電話・オンライン診療等、医薬品対応、訪問看護等を行う。 第7 臨時の予防接種    区は、予防接種法に基づく臨時接種が行われる事態において、国や都、区医師会等の関係機関と連携して、速やかに実施体制を構築する必要がある。  新型コロナ対応においては、国と連携し、区医師会の協力を得て、診療所における個別接種と集団接種の組み合わせによるワクチン接種体制「練馬区モデル」を構築した。  新興感染症発生時等において、臨時接種が実施される場合には、ワクチンの特質や供給状況、対象者等を踏まえつつ、国や都、医療関係団体等と連携し、接種体制の構築を進める。 第8 保健所の業務執行体制の確保 1 有事における対応体制の整備  新興感染症発生時等の有事において、区は、地域の感染症対策の中核的機関である保健所がその機能を的確に果たせるよう、速やかに発生状況に応じた業務執行体制を整備する。 2 人員体制の確保等  (1) 保健所体制の構築等  区は、新興感染症の流行開始(発生の公表)から多くの感染症対応業務が発生することを想定し、流行開始と同時に迅速に人員体制の構築に取り組む。  体制の構築に当たっては、応援職員や保健師の兼務発令など、新型コロナ対応の経験を踏まえ、人事担当部署と連携しながら、業務量に応じた人員体制を構築するとともに、会計年度任用職員や派遣労働者などを積極的に活用する。  また、有事においては膨大な業務が発生することを想定し、応援職員等が担当する業務マニュアルを整備するとともに、必要な執務スペース・機器等の環境整備に取り組む。    (2) 職員の健康管理    新型コロナ対応においては、土日夜間も含めて長時間および長期にわたり膨大な業務を担うこととなった。  新型コロナ対応の経験を踏まえ、可能な限り負担の軽減を図りつつ、適切な業務管理を行い、心理的な負担を軽減するため、産業医との面接指導等を活用したメンタルヘルス対策を行う。 【保健所の感染症対応業務を行う人員確保に係る数値目標】 <数値目標の考え方>  新型コロナ対応においては、1日あたりの感染者400人に対して、保健所人員を100人とする体制を基準とし、1日あたりの感染者が100人増えるごとに保健所人員10人を増員し対応した。  本計画の数値目標の設定に当たっては、新型コロナ対応における体制確保の考え方を基準とし、流行初期から1日あたりの感染者400人にも対応できるよう体制を構築する。  なお、人員確保数には派遣労働者なども含む。 感染規模(区) 人員確保数 @流行初期 (発生の公表後1か月目途) 30人/日 (R2.11月頃想定) 100人 A流行初期 (発生の公表後1〜3か月)  150人/日 (R2.12月以降想定) 100人 B流行初期以降 (発生の公表後6か月以内) 1,200人/日 (R4.2月頃想定) 180人 ※ 必要に応じて、IHEATに登録されている専門職の人材を活用する。 3 外部委託等  新型コロナの感染拡大時においては、積極的疫学調査、健康観察、発生届の入力等の業務が増大し、逼迫するなど課題があった。  そのため、区は、以下の外部委託等の取組を実施し、業務の効率化を行うとともに、会計年度任用職員、派遣労働者、民間事業者などの活用を行い、保健所体制の整備を図った。      [参考] 新型コロナ対応において区が実施した保健所の体制整備と業務効率化の取組例 ・ コールセンターにおける派遣労働者活用 ・ 人員体制の強化(応援職員、保健師の兼務発令、派遣労働者の活用、都応援職員の活用、住民接種担当課および自宅療養環境整備担当課等の専管組織の設置) ・ PCR検査検体採取センターの運営業務委託 ・ 感染者発生施設におけるPCR検査等業務委託 ・ 入院患者等の移送業務委託 ・ SMS(ショートメッセージサービス)一括送信ツールの導入 ・ 自宅療養者への支援物資配送の業務委託 ・ 新型コロナワクチン集団接種会場の運営補助業務委託  新興感染症の発生等に備え、新型コロナ対応において実施された取組を踏まえ、区は都と連携し、状況に応じて一元的な実施体制や外部委託の活用等を行っていく。  また、区と都、医療機関等の関係機関との役割分担等について、連携協議会を通じて整理し対応する。 第4章 その他感染症の予防の推進に関する施策 第1 特に総合的に施策を推進すべき感染症対策等 1 結核対策  区における結核の新規登録患者は、令和元年は103人(人口10万人当たりのり患率14.0)であったが、令和2年には70人(り患率9.4)となり、低まん延の水準に転じた。  一方、高齢者や社会的弱者への患者の偏在、若者や外国人患者の増加、多剤耐性結核菌の出現、施設等での高齢者の集団発生の増加といった問題もあり、近年では新規登録患者の減少速度が鈍化している。  そのため、保健所は「結核に関する特定感染症予防指針」や「東京都結核予防推進プラン」を踏まえて、令和元年6月に策定した「練馬区結核予防推進プラン」に基づき、結核対策の強化を進めていく。  また、都と連携して感染拡大のリスクが高い集団への健康診断や普及啓発、外国出生患者への多言語対応、結核菌株確保による病原体サーベイランス、患者の生活環境に合わせたDOTS(直接服薬確認法)ならびに特別な医療に対応できる医療機関および地域における入院・外来医療機関の連携体制の確保等の結核対策をより一層推進する。 2 HIV/エイズ、性感染症対策  都における新規のHIV感染者・エイズ患者の報告数は、近年、横ばいで推移している。また、年代別では、20歳代、30歳代の若い世代が過半数を占めている。  一方、医療の進歩に伴い、早期発見・早期治療により、感染者は健常者と同等の生活を送ることができるようになり、HIV感染症の疾病概念は、「不治の特別な病」から「コントロール可能な慢性疾患」に変化し、今後、長期にわたり医療や地域サービスを必要とするHIV感染者(HIVに感染している人。エイズ発症の有無を問わない。)が増加すると考えられる。  そのため、保健所は、主に若い世代を中心とした普及啓発や都と連携して区民の利便性に配慮した検査相談体制を確保する一方、感染の拡大防止に取り組んでいく。  また、近年、梅毒の患者報告数が急増しており、特に男性は20歳代から50歳代、女性は20歳代の割合が増加している。梅毒等の性感染症は、性的接触が主な感染経路であることや性感染症にり患するとHIV感染リスクも高くなることから、都と連携して、感染状況に応じた普及啓発を着実に実施するとともに、検査を実施するなど、HIV/エイズ対策と一体となった性感染症対策を推進していく。 3 一類感染症等対策  平成26年に、エボラ出血熱が西アフリカにおいてこれまでにない規模で流行し、平成27年には、中東呼吸器症候群(MERS)が韓国において医療機関を中心に感染拡大する事例が発生した。国際化の進展などにより、国内未発生の一類感染症等が海外から持ち込まれ都内で発生するリスクは以前にも増して高まっている。  区は、感染症発生時に、円滑かつ安全に医療提供等が行えるよう、都や感染症指定医療機関等との連携体制を平時から整備していく。 4 蚊媒介感染症対策  平成26年に約70年ぶりとなるデング熱の国内感染事例が発生した。また、近年、気候変動に伴う世界的な蚊の生息域拡大による蚊媒介感染症の増加が懸念されている。区内でも輸入例を発端に蚊媒介感染症の発生や感染拡大が生じることは十分考えられる。  区は、都と連携して媒介蚊対策、患者の早期把握、国内感染症例発生時における感染地の推定や蚊の駆除等を的確に実施する体制を確保する。 5 麻しん・風しん対策  麻しんについては、平成27年3月に世界保健機関西太平洋地域事務局から我が国が排除状態にあることが認定された。しかし、令和元年には輸入症例を端として都内で100件を超える発生が報告されるなど、引き続き警戒が必要である。  風しんについては、平成24年から25年にかけて成人を中心とした流行が発生し、先天性風しん症候群の発生も報告された。その後、平成30年から令和元年にかけても再び流行が発生した。  こうした状況を踏まえ、区においては、対象の区民に対し、抗体検査および予防接種の費用助成等により、麻しん・風しん対策を行っている。  麻しんの排除状態の維持、先天性風しん症候群発生の防止および風しん排除を目標とし、引き続き関係者が一体となって麻しん・風しん対策を推進する。   [備考] 新型インフルエンザ等対策  本計画と整合性を図ることとされている「練馬区新型インフルエンザ等対策行動計画」に基づき、サーベイランス・情報収集、情報提供・共有、区民相談、感染拡大防止、予防接種、医療提供など、必要な対策を実施する。  なお、同計画は、新たな知見や情報の更新に応じ、適宜見直すものとする。 第2 その他の施策 1 感染症の後遺症対策  新型コロナでは、り患後、感染性が消失してからも様々な症状(り患後症状いわゆる後遺症)に悩む方が数多く存在している。そのため、区は早期から相談窓口を設置して、り患後の心身の症状の相談に応じ、必要に応じて後遺症対応医療機関を案内する等の対応を行っている。また、国内外の後遺症に関する情報を都等から速やかに収集し、区民に幅広く、迅速かつ的確に情報提供している。   新興感染症等の発生時においても、こうした後遺症の発生も視野に入れ、必要に応じて関係機関等と連携して対応していく。 2 薬剤耐性(AMR)対策   保健所は、感染症法に規定される薬剤耐性の感染症について発生届が提出された場合、必要に応じて医療機関への積極的疫学調査、感染拡大防止のための助言等を実施していく。 3 災害時の対応  災害が発生すると、ライフラインが使えなくなる、避難所での生活を余儀なくされるなど生活環境が大きく変化し、ストレスの増加や体力・抵抗力の低下により感染症が発生しやすい状況となる。東日本大震災や熊本地震、能登半島地震等の経験を踏まえ、区は、水が不足している時でも衛生面を保つことができるよう、携帯トイレや口腔ケア用品等の衛生用品を備蓄するなど、災害時への備えに取り組む。  また、災害が発生した際には、標準予防策などの周知、感染症情報の収集、保健師等による避難拠点等の巡回などにより、感染症の予防対策を実施するとともに、感染症が発生した際には、迅速な防疫措置等により、まん延の防止を図る。 4 外国人への対応  海外から訪れる人は年々増加しており、来訪目的も、観光、ビジネスなど多岐にわたっている。これらの外国人向けに都内の感染症の発生状況や感染防止のための情報、感染症が疑われる症状を発症した際の受診方法などについて、保健所は、都と連携して多言語で分かりやすい情報提供を推進していく。 【巻末資料】 練馬区新型インフルエンザ等感染症対策ネットワーク会議 委員 会長 練馬区保健所長 副会長 練馬区保健所保健予防課長 委員 関係機関 練馬区医師会 練馬区歯科医師会 練馬区薬剤師会 練馬区訪問看護ステーション連絡会 新型インフルエンザ等感染症診療に協力する医療機関 東京都保健医療公社豊島病院 順天堂大学医学部附属練馬病院 東京都医療保健協会練馬総合病院 地域医療振興協会練馬光が丘病院 東京保健生活協同組合大泉生協病院 医療法人社団浩生会浩生会スズキ病院 消防署 練馬消防署 光が丘消防署 石神井消防署 練馬区 健康部長 地域医療担当部長 健康部健康推進課長 練馬区保健所生活衛生課長 地域医療担当部地域医療課長 危機管理室危機管理課長 福祉部障害者施策推進課長 高齢施策担当部介護保険課長 教育振興部学務課長 教育振興部保健給食課長 こども家庭部子育て支援課長 こども家庭部保育課長 ※ この他、必要に応じて高齢者施設、こども関連施設、障害者施設の代表者等を委員に加える。 語句説明(50音順) 語句 説明 1 DOTS  Directly Observed Treatment Short-course の略。  結核の治療完遂のために患者の服薬を医療従事者等による直接確認などの方法で支援する治療法。 2 HACCP  Hazard Analysis and Critical Control Pointの略。  食品の製造過程を管理し、食品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法。 3 HER−SYS  新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム。発生届の入力・報告を電子的に行う事ができる。 4 IHEAT  Infectious disease Health Emergency Assistance Teamの略。  健康危機発生時に地域における保健師等の専門職が保健所等の業務を支援する仕組み。 5 My HER−SYS  陽性者本人等がスマートフォンやパソコン等で自身や家族の健康状態を入力できる健康管理機能。 6 PCR  「ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction)」といい、生物の遺伝情報をもつDNAを複製して増幅させる方法のこと。 7 医療措置協定  感染症の発生およびまん延時に備え、迅速かつ的確に医療提供体制を確保するため、都道府県と医療機関がその機能・役割に応じて締結する協定(令和4年12月感染症法改正により法定化)。 8 応急入院  感染症法第19条第1項の規定により勧告する72時間以内の入院のこと。 9 外出自粛対象者  新興感染症のまん延を防止するため、宿泊施設もしくは当該者の居宅等から外出しないこと等が求められた者。 10 感染症サーベイランスシステム  国、都道府県および保健所設置区市が連携して、昭和56年7月から感染症発生動向調査が始まった。その後、昭和62年1月のコンピュータネットワークシステムを導入、平成11年4月の感染症法施行による感染症発生動向調査の法定化を経て、感染症の発生情報の正確な把握と分析、その結果の国民や医療関係者への的確な提供・公開に役立てるため、NESID(National Epidemiological Surveillance of Infectious Diseasesの略)として、平成18年度より運用されてきた。  今後の新興・再興感染症の発生に備えた機能を有し、迅速な機能拡張を可能とするため、発生届等の情報を医療機関、保健所、都道府県等の関係者間においてオンラインで共有するシステムとして、令和4年10月31日から感染症サーベイランスシステムの運用が開始された。感染症サーベイランスシステムでは、感染症法第12条から14条に基づく発生届等について、医療機関等は本システムへの入力によって保健所へ報告することが可能となった。  また、令和5年4月1日より、医師が届出を行う場合には、本システムによる報告が努力義務化(厚生労働省令で定める感染症指定医療機関は義務化)された。 11 感染症の診査に関する協議会  感染症法に基づく入院勧告や入院期間の延長等について、必要な事項を審議するため、感染症法第24条に基づき、各保健所に設置される機関。 12 感染症発生動向調査  感染症法第三章(感染症に関する情報の収集及び公表)各条に基づく施策として実施している、感染症の発生状況を把握するための調査のこと。医師等からの感染症の発生届の状況等を分析し、その結果を区民や医療関係者に提供、公開することにより、感染症の発生およびまん延を防止する目的で行っている。 13 疑似症患者  臨床的特徴等から医師が感染症を疑うが、感染症の確定診断が得られていない者。 14 キャッチアップ接種  通常のヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの定期接種の対象年齢(小学校6年から高校1年相当)の間に接種を逃した方(平成9年度〜平成18 年度生まれの女性)に、HPVワクチンの公費での接種の機会を提供すること。 15 クラスター  共通の感染源(人、場所、時間等)を持つ一定数以上の感染者の集団。 16 サーベイランス  疾病を予防し有効な対策を確立する目的で、疾病の発生状況などを継続的に監視することをいい、具体的には、患者の発生状況、病原体の分離状況、免疫の保有状況などの情報収集、解析を継続的に行うこと。 17 就業制限  感染症法第18条に基づき、感染症を公衆にまん延させるおそれがなくなるまでの期間、就業を制限すること。 18 新興感染症発生等公表期間  厚生労働大臣による新興感染症に係る発生等の公表が行われた時から、当該感染症が新興感染症と認められなくなった旨の公表が行われるまでの期間。 19 積極的疫学調査  感染症法第15条に基づき、感染症の発生を予防しまたは感染症の発生の状況、動向および原因を明らかにするために、必要がある場合に行う調査。保健所等の職員が、患者等の行動歴、喫食歴、濃厚接触者等について、患者等の協力を得て調査を行う。 20 定期接種  予防接種法第5条第1項において、区市町村長は、A類疾病およびB類疾病のうち政令で定めるものについて、予防接種を行わなければならないとされている。 21 東京iCDC (東京感染症対策センター)  Tokyo Center for Infectious Diseases Prevention and Controlの略。  感染症に関わる様々な領域において、調査・分析、情報収集・発信などを行う専門家のネットワーク。 22 東京都健康安全研究センター  都民の生命と健康を守る科学的・技術的拠点として、食品や医薬品、飲料水、生活環境などの日々の安全・安心確保と感染症などの健康危機への備えの両面から、試験検査、調査研究、研修、公衆衛生情報の解析・提供および監視指導を行う。 23 東京都保健医療情報センター「ひまわり」  東京都が提供する医療機関案内サービス。休日・夜間の保健所閉庁時間帯に、医療機関等から保健所への連絡の窓口となる組織。 24 特定感染症予防指針  感染症法第11条第1項に規定される、特に総合的に予防のための施策を推進する必要がある感染症に係る予防の総合的な推進を図るための指針。 25 入院勧告  一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症の患者に対し、感染症指定医療機関での良質かつ適切な医療を提供することにより早期に社会復帰させ、もって感染症のまん延の防止を図るため、感染症法第19条および26条に基づき、保健所が患者に対して感染症指定医療機関への入院を勧告するもの。 26 パンデミック  世界的な大流行。非常に多くの感染者や患者が発生する流行を意味する。 27 無症状病原体保有者  症状を呈していないが、検査により感染症の病原体を保有すると診断された者。 28 流行初期医療確保措置  感染症法第36条の9に定める、診療報酬の上乗せや補助金等が充実するまでの一定期間に限り、財政的な支援を行う措置。流行前の同月の診療報酬収入を下回った場合、その差額を支払う。 29 臨時接種  予防接種法第6条において、区市町村長は、A類疾病およびB類疾病のうち厚生労働大臣が定めるものについて、臨時の予防接種を行うこととされている。